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ミュージカル・モーツァルト! 感想

帝国劇場で観たモーツァルト!感想です。 ※ヴォルフガング役:古川雄大

・6歳で父レオポルトに連れられ、人前でピアノ演奏をし、賞賛されるヴォルフガング(アマデウス)。

この時の子供のアマデウスが、ヴォルフガングが青年に成長しても無言でずっと舞台上にいる。
初めて見たとき、舞台がバグったかな???という趣があって、めちゃめちゃ怖かった。この演出考えた人、すごい。

・青年に育ったヴォルフガング、ジーンズを履いていたり格好が現代的でお洒落だった。でもザルツブルクでは浮いてるって表現込みでこういう衣装なのかな。(他の人はもっとクラシックな衣装だった気がする)

・奔放な青年ヴォルフガングに色々小言を言うレオポルト。
レオポルトはヴォルフガングの才能抜きに彼を案じてるんだから、ヴォルフガングはもっと話を聞いてやったほうがいいで~と思っていた。このときは。

・レオポルトがヴォルフガングに対して言う小言ラインナップに
・生活を慎ましやかにしろ
・コロレド大司教に従え
といったものに追加して
・お前の曲は複雑だ
ってものがあるのがじわる。曲が複雑なのはそんなに駄目なんでしょうか。

・ヴォルフガングの産まれた街はザルツブルクだけど、舞台中事あるごとに「ザルツブルク嫌い。ウィーンはいい街」のようなことを言ってて笑う

ザルツブルクというか、ヴォルフガングは自分にめちゃめちゃ口出しするコロレド大司教や父親が嫌という気持ちをザルツブルクに投影しているのではないですか?

・ヴォルフガングに事あるごとに「作曲しろ」と迫るコロレド大司教、なんか面白かった。
BLの攻めに近しいものを感じた。
でも他ならぬヴォルフガングに自分について作曲してもらえるチャンスがあるって考えると、正気でいられないのもわかる。

・音楽で成功したり、コンスタンツェと結婚したりしつつも、放蕩&放蕩を尽くすヴォルフガング。その間もアマデは舞台上に居て、ヴォルフガングが遊ぶのをよそにずっと作曲している。

この構図、なんかとても悲しい。
時折ヴォルフガングが机やピアノに向かって作曲をしていて、アマデも一緒に作業をしているときは穏やかに見られた。

・コンスタンツェ、ダンスが止められない子ではあるんだけど根が真面目というか、実家にいた頃は姉妹の中で大人しい方だったし、ヴォルフガングと結婚してからは彼にインスピレーションを与えないと……って追い詰められてるのが辛い。
ヴォルフガング的にはインスピレーションとかどうでもよくて、ただコンスタンツェに一緒にいて貰えれば幸せだったんだろうと思う。コンスタンツェにとってはそれが尚更嫌だったんだろうけど……

・ヴォルフガングの姉(ナンネール)に子供が産まれる。
ヴォルフガングを連れてこいというコロレド大司教に対して、レオポルトはその子供(孫)を挙げて、「ヴォルフガングを天才に育てたように、孫も天才に育てる」と言う。

前半見てるとき、「レオポルトはヴォルフガングのこと才能抜きで愛してるから…」とか思ってたのに、父親でもヴォルフガングの才能しか見ないようになったのかなと思うとめちゃめちゃ怖かった。ヴォルフガングの作中感じてた虚無感とか恐怖ってこういうことなのかなと思った。ここ、個人的にモーツァルト!中の最怖シーン。

・ヴォルフガングがレオポルトを招いた公演、拍手喝采で成功させたのに、レオポルトが褒めてくれなくて、辛かった。
「お前の曲は複雑だ」ってここでも言ってて……曲が複雑であっても別によくない!!????

・シカネーダー、ほどほどに遊びつつも社会的な成功を収めている。
ヴォルフガングの友達は大体ろくな人間がいない感じだったけど、この人の生き方は参考にした方がヴォルフガングのためになったんじゃないかと思う。

・最初に男爵婦人がヴォルフガングを援助してくれたときは優しい人だな〜と思ったけど、父を亡くしてショック受けてるヴォルフガングに対しても音楽を作りなさい…^^って態度だったのは怖かった。
冷静に考えれば、男爵婦人はヴォルフガング個人を愛してる訳でもないし、パトロンなんてそんなもんかな…と思ったけど。

・モーツァルト!の筋としては、「ヴォルフガングは才能に殺された」って思うのが正しいんだろうけど、観ている自分としては特に悲しい運命には思えなかった。

ヴォルフガングはアマデのことを憎んでるし、諸々うまくいかないのはお前のせいだみたいなことを言っていた。
が、(舞台中総じてヴォルフガングが放蕩にふけっていたこともあって)家族との関係が悪化したりヴォルフガング個人を愛してもらえなかったりしたのは、才能というよりヴォルフガングの生活習慣とか性格の方が原因のように思えた。

アマデ(才能)のおかげで大金を得られたり人と触れられたりって面もあっただろうに、アマデがヴォルフガングに邪険にされてるのが可哀想に見えた。そんなに才能が嫌ならヴォルフガングは音楽以外の仕事についたらいいんじゃないのと思った。

・第一幕では才能の陰の部分について描かれたので、第二幕では最終的にヴォルフガングとアマデは和解して、なんか才能の光部分にも焦点を当てるのではないかと思って観ていたが、レクイエムを書くヴォルフガングがアマデに羽根ペンを渡した後、アマデに刺され、二人してピアノに倒れて終わった。救い、なかった。

個人的にはヴォルフガングがアマデに羽根ペンを差し出したところはすごく希望に見えたんだけど、でもその後がその後なので……ううん……

・【モーツァルト!】は人気の舞台らしいけど、実際観たらこの救いのない舞台がそうなのか…………と不思議に思った。
主演の様々な表情を見ることが出来る舞台だという点では良さそうだけど、グッドエンドではない話は人を選ぶような気がしたので。

・カーテンコール、ヴォルフガングが客席にファンサする。
舞台の中では終生愛に飢えてたヴォルフガングに、観客が直接拍手を届けることが出来るのは、救いといえば救いなのかなと思いました。

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