説明書"以外"のTUNIC語を和訳してみた
※ 本記事には「TUNIC」のネタバレが含まれます。未クリアの方は絶対に読まないでください ※
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……未クリアの方は引き返しましたか? 引き返しましたね? 本題に入りますよ??
導入:動機
何も説明をしてくれない不親切さが面白いゲーム「TUNIC」。その最も大きな特徴と言えば、解読不能の謎言語でしょう。しかし不可解なこの言語の読み解き方は、なんとゲーム内に記されています。そして偉大な先人たちによって「英語の発音記号と対応している」ということが明らかになりました。
この謎言語、説明書については解読済みの英文がとてもよく見つかるのですが、それ以外の部分の英訳はなかなか見当たりません。でも、何が書かれているのかとっても気になる!! 特に夜の世界にいるキツネたちがなんて言っているのかもう気になって気になって夜も眠れない! じゃあもう自分で訳してしまえばいいじゃない。ということで、自分で翻訳してみることにしました。
方法
TUNICはカナダで製作されたインディーズゲームです。謎言語(以下、「TUNIC語」と呼びます)を読み解くと、英文が出てきます。そのため、TUNIC語から日本語へ訳すにあたって英語を経由しています。TUNIC語→英語→日本語という流れです。
英語のネイティブではないので不正確な部分が多々あるでしょうが、なんとなく雰囲気だけでもつかめたらいいなという心持です。
TUNIC語の解読にあたって、以下のサイトを参考にさせていただきました。
結果:彼らはなにを話していたのか
表記
TUNIC語が確認できる場所:
英訳
和訳
という表記になっています。特にキツネについてはどこのキツネを指しているのかわかりにくくなっていますが、ご容赦ください。
記号の見方
***:わからない単語
():意味を補強するために勝手に付け足した訳
※:注釈
タイトルなど
タイトル:
seccret legend
秘密の伝説
ポーズ画面:
nap-time
お昼寝の時間
アイテムゲット:
Found an item!
アイテムを見つけた!
東西の鐘:
To “鳴らす” a bell, you “鳴らす” a bell.
鐘を鳴らすために、鐘を鳴らす。
※鐘を鳴らすために、鐘を鳴らすアクションを起こせってことでしょうか
鍵を入手する:
Take (鍵のマーク)?
鍵を取る?
ワープゾーン:
The Far Shore The space that is not here nor there
彼岸 「そこ」でも「ここ」でもない場所
天上の世界
ポスト:
empty…
空っぽだ……
ポスト側のキツネ:
Hi… Are you new? Where is your home?
こんにちは……新入りさん? あなたのお家はどこかしら?
ポストから右、茂みにいるキツネ:
Oh, Hi. I’m just taking a breaking. Are you going to the ”沼地”? You’re brave….
あら、こんにちは。ちょっと休んでいたの。あなた、沼地へ向かっているの? 勇敢なのね……。
沼地前、光る橋側のキツネ:
Do you seek the “大聖堂”? Remember that you are nothing but a “幽霊”.
大聖堂を探しているの? 自分は幽霊ってことを思い出して。
※nothing but a “幽霊”=「幽霊以外の何物でもない」、つまり「あなたは今『幽霊』である」ことを強調した言い方です。「幽霊だから沼地の奥へ行けることを思い出せ」というヒントなのかなと思いました
神殿前のキツネ:
Things are tense in there…I think “悪いこと” happened.
(神殿の?)中は緊迫状態よ。悪いことが起こったのかも。
古い家近くの井戸を覗くキツネ:
Well, well, well…. ・・・ ・・・ ・・・sigh.
う~~~ん……。・・・ ・・・ ・・・はぁ(ため息?)。
※悩む声と「井戸(well)」をかけてるのでしょうか
↑の下側、首の折れた像を見上げるキツネ:
So big! Are they this big in ***
なんて大きいの!
ワープポイント左の坂を下った近くのキツネ:
I ran a store, once. People usually still staff though.
お店を経営していたわ、昔にね。でもまだみんなスタッフなの。
寝そべるキツネ:
I’m so tired…. Zzzzzzzz.
とっても疲れた。ぐー。
扉横のキツネ:
Have you found the “聖なる十字架”?
聖なる十字は見つけた?
↑の右側でしゃがんでいるキツネ:
Trying out a new luck?
新しいひらめきを試してみた?
※”luck”を「幸運」ではなく「成果」=「説明書を見て考えたこと、得られた答え」と解釈し、「思い付いたことを片っ端から試してみろ」というヒントを出していると考え、こういう訳にしました。
像の首が落ちた滝の左側にいるキツネ:
The “大聖堂” scars me, but I’ve had theirs a “ 素晴らしい財宝”. It’s called the “英雄の栄冠”.
大聖堂ではしくじったけど、そこであいつらの素晴らしい財宝を手にしたの。英雄の栄冠と呼ばれる宝よ。
二つの壊れたオートボルトの間にいるキツネ:
I used to visit “庭園”, but it’s scary now….
以前、庭園へ行ったことがあるのだけれど、今は恐ろしいわ……。
南、環礁側のキツネ:
What happened…. I feel when I look at it….
何が起きているの……。見てたらこんなことになっちゃった。
崖下、西の庭園側飛び地のキツネ:
Things are more beautiful when they are ruins. Do you agree?
全部崩壊したらもっと美しいでしょうね。そう思わない?
採石場につながる道を塞ぐ門、横の看板:
危険 No passage.
危険 行き止まり
神殿の中
石碑?:
With 3 keys we sealed the Heir. A key is no mere toy. Seekers as ruin, leads here.
3つの鍵を使って継承者を封印した。この鍵はおもちゃなどではない。遺跡の探索者がここへやってくる。
うなだれているキツネ:
Alas, alas, alas! Should we have done a ”四つ目の鍵”. No… they would have found that to….
ああ、ああ、なんてこと! 四つ目の鍵を使わなければならなかったのでしょうか。いいえ……(そんなものがあるならば)それはもう見つかってたでしょうに……。
赤の鍵のキツネ:
Someone tack out the “攻城兵器”? Impossible!
誰かが攻城兵器を止めないといけないの? 無理だよ!
緑の鍵のキツネ:
Who would do such thing? Either a “英雄” or a“愚者”….
こんなことをしでかしそうなのは誰かしら。英雄か、愚者か……。
看板:
← This way to ”街”. (Ruins as old village)
← この先、街(かつて村だった廃墟)
西の庭園
動かない庭園の騎士の側にいるキツネ:
This one is “反応が無い”. They used to be palace guards, but now they are for flowers.
この個体は反応が無いわ。これらはかつて宮殿の警備員だったのだけれど、今や花守ね。
釣りをしているキツネ:
Fish fish fish! I’m fishing for fish!
おさかな、おさかな、おさかな! おさかな求めて魚釣り中!
東の森
踊るキツネ:
I’m dancing the dance as the “聖なる十字架”.
聖なる十字架のダンスを踊ってるわ。
東の金庫室
攻城兵器前、赤字の警告:
DANGER. DO NOT OPEN.
危険。開けるな。
※「攻城兵器が危ない」という警告ではなく、鍵を取ることに対する警告でした
赤の鍵を納めていた部分でうなだれているキツネ:
Wow… The “攻城兵器” was not enough. Wow wow wow.
ああ……。攻城兵器では力不足だった。ああ、ああ、ああ。
英雄の墓への道にいるキツネ:
Why. This way goes to “英雄の墓”. …but they are some weird critters.
どうして? この先にあるのは英雄の墓よ。(英雄と言っても)……あいつら、変な動物だけどね。
大図書館
えらそうな大きいキツネ(司書??):
Here to gloat? …Idiot. You did it. You released “継承者”, and now this. Now you must “討伐” it and take its place, or find the “聖なる十字架” and share its wisdom. …Good luck with that.
ほくそえんでいる? …愚か者が。お前がやったのだ。お前が継承者を解放したのだ、そしてこのザマだ。今お前がすべきは、継承者を討伐してその立場を引き継ぐか、聖なる十字架を見つけて知識を共有することだ。せいぜいうまくやれよ。
沼地
入り口側のキツネ:
I don’t think you can got into the “大聖堂” without “月光”. But than again, here are surprising.
あなたが月光無しに大聖堂に行けるなんて思えないわ。もしできたら驚きね。
座ってもたれているキツネ:
A “大きな戦い” was here, a long time ago. …Or last week? It’s all…***.
ずっと昔、ここで大きな戦いがあったの。……いや、先週だったかしら?
考察:というか感想
閉じ込められて可哀そうなママギツネを助ける正義のヒーローだと思ったら、世界に破滅をもたらす悪人でした。何を言っているか、知らない方が幸せだったかもしれない。
特に、神殿や東の金庫室でうなだれているキツネの悲愴感から、自分がしでかした事の重大さがうかがえます。継承者を解放したらとんでもないことが起こってしまう、だから絶対に解放させてはならない。そのために鍵を3つも使って封印して、ひとつには攻城兵器とかいうとんでもなく強い兵器をつけてまで守っていたのに、全て突破されたなんて……。と嘆いている人たちに、なんか申し訳ない気持ちになりました。
継承者が解放されて起こる「悪いこと」が具体的に何を指すのかは明言されてなさそうですが、マップの変化から推測するに、体力の上限値を削る紫黒いドロドロした瘴気が溢れて世界を覆ってしまうのでしょうか。ジッグラト、東の森、環礁はほぼ全て瘴気に覆われてとても探索どころではありませんでした。時間が経てばあれが天上の世界まで来てしまうのかもしれないと思うと、とんでもないですね。
説明書曰く、墓を開いて恐ろしい力を解放したのは「英雄」と呼ばれる人だったようです。そして、継承者たちは「英雄」らしい。英雄当人ではなさそうですが、それに連なる者というか、自分自身が英雄であることを忘れた英雄なのかな?
ともかく、かつて恐ろしい力を解放してしまった英雄を封印することで、一緒に恐ろしい力を封印しているようです。それを解放して世界を崩壊においやらんとした子狐は、確かに英雄かもしれない。伝承と同じことをしでかしている。
子狐たちに対して、私たちが理解できる言語で「英雄」と呼んでいるのってミスリードじゃないですか? こんなの英雄って呼んではいけないでしょう。諸悪の根元って言うんだぜ。
司書は、流石に知恵を求める司書だけあってなんでも知ってそうですね。いやにセリフが長いと思っていましたが、説明書で何度も書かれていた「継承者を倒し引き継げ。あるいは知識を共有しろ」と話していました。あと、継承者を解放したのが子狐で、「よくもやりやがったなお前」と怒ってそうでもあります。「Good luck」に「with that」がついて「Good luck with that」になると、皮肉った言い方になるらしい。「お前がやったんだからお前がどうにかしろ」って言ってそうです。
まとめ
何を言っているかわかるだけで、世界感の解像度がぐぐっと上がるのを実感しました。特に、攻城兵器前の赤字は勝手に「この先に強敵がいる」と警告してくれていると都合よく解釈していましたが、実際は鍵の封印を解くことに対する警告で、むしろ攻城兵器を倒して欲しくない人が書き残したものでした。
何も説明してくれないけど、読み解くヒントはちゃんと渡してくれる。だから、プレイヤーががんばれば攻略方法から世界感に至るまで理解することができる。こんなにプレイヤーの歩み寄る努力を信じてくれるゲームはそうないなと思いました。頭の使い甲斐があって大変楽しかったです。全て忘れてもう一度遊び直したいゲームNo.1になりました。
余談:まだまだ秘密が隠されているっぽいぞ
TUNICの音楽制作を担当された方が、音に関する秘話をTwitterで公開されています(TUNIC語の読み解き方も書いてくださってます)。
なんでも、TUNIC語を音階で表現できるようにして、ゲーム中のSEに暗号を仕込んでいるとかなんとか。一連のツイートに、どのSEにどんな文章が隠れているのか解読されている動画が上がっています。特に誰もが感動しただろう「山の扉」を開けた時のSEには震撼しました。とんでもねーゲームだ。こわい。すごい!
全文英語ですが、Twitterの翻訳機能で大体内容はわかります。ぜひ! みて!!! そしてふるえて。