灰が降る町 #12



そう、星を見ることが好きだった

人工太陽が天に輝く
無機質に白く明るいこの町で
本物の星を見ることが好きだった

その昔 この天上には
空を埋め尽くすほどの星があったという
星たちは、太陽の光を受けて、空に幾つも煌めいていたという

人工太陽は、空の星まで照らせはしない
その小さな灯りが照らせるのは、せいぜいこの町だけだった

太陽がなくなって この夜空は
どれだけ静寂に満たされたことだろう

そうだ
毎日、空を見上げていた
そうして星を見る時に、いつもこうして持っていた
大切な——双眼鏡を

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