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営業目線のWeb小説売り込み研究 第2回「書きたいものを書くのは営業的にも正解」

 Web小説のアカウントの中に一定数、創作論をツイートするのが好きな方がいる。彼らのツイートを見ていると、意見が二つに別れている話があった。

 「書きたいものを書くべきだ」

 「人気ジャンルを書くべきだ」

 どちらが正しいか、創作者としての筆者にはわからないが、これを営業目線で読み解いていこう。今回の話は、そもそも何を書くか。つまり、売り込むテクニックである営業戦術のさらに上流である、営業戦略に置き換える事ができるだろう。

 私は、営業戦略を立てる際に忘れてはならないものとして「マネジメント」著者のドラッカーが説いた「ミッション・ビジョン・バリュー」を挙げる。

 ミッションとは企業の使命(存在意義)

 ビジョンとは企業の理想像(目標)

 バリューとは企業の価値観(行動指針)

 ドラッカーはこの三点さえ確立していれば、あとの仕事は外付けでも良いとまで言っている。

 だが確かにこれらミッション・ビジョン・バリュー(以降MVV)を元にするだけで、営業戦略は決してブレないものとなる。大企業にはこうしたMVV、確固たる経営理念がある。経営理念に従わない営業は、どこかで必ずズレが生じ、あらぬ方向へ向かった挙句、失敗するのだ。経営理念はトップの意思そのものなのである。

 これを、Web小説作りへ当てはめていく。

・Web小説作品のミッション

 Web小説作品の使命を考える。読者の心を震わせたい、自分が成しえなかった夢を叶えたい、憧れられる様な愛を描きたい、モテモテになりたい……要するに「テーマ」であり「書きたいもの」だ。テーマなき創作は創作にあらず、などという言葉もあるほどである。「面白そうな話を思いついた!」となったら一度ひと呼吸置いて、その面白そうな話の持つ使命を考えると、自ずとどんな話を書けば良いかがわかってくるだろう。

・Web小説作品のビジョン

 次に、作品の理想像を考えていく。この作品はどんな人に、どうやって触れられるのが理想なのか? 若い人に読まれたい? 老若男女に楽しまれたい? 書籍化? コミカライズ? アニメ化? 実写映画化? それとも、書ききる喜びを得られる程度? これを考えると、商品のコンセプトや訴求方法が決まる。読者の脳内に展開される情景を考える事ができるのだ。つまり、どんな描写をすべきかが、はっきりと定まるはずだ。

・Web小説作品のバリュー

 最後は価値観だ。ビジョンを実現し、ミッションを果たすために、どんな価値観で作品を作り上げていくべきなのか。たとえば、心震わす感動作によって読者の心を癒やしたいというミッションを掲げておきながら、カタルシスもないモヤモヤとした内容で読者を疲れさせる事はしてはいけない。モテモテ気分を味わいたいというミッションと、可愛い女の子が裸で入り乱れるアニメにしたいというビジョンを持ちながら、主人公が全然女の子たちに好いてもらえない作品を書くべきではない。価値観はミッション・ビジョンを実現させるためのものにしなくてはならない。

・人気ジャンル狙いはどうなのか?

 ここまで書けば、人気ジャンルを狙うのはMVVの更に下流、理念の下の戦術であることがわかる。つまり「読まれるための手段」でしかない事がおわかりいただけただろう。要するに「書きたいものを書くべき」と「人気ジャンルを書くべき」はそもそも並列で語る話では無いのだ。

 当然、人気ジャンルを狙うのは悪ではない。しかしそこだけを考えてはならない。そこにミッションは無い。

 ただし、あなたのミッションが「作家として金持ちになりたい」であれば、ビジョンは常に「カネになる作品を作る」となり、バリューは「書籍化する内容を作る」になり、戦術は常に「人気ジャンルを追い続ける」になるのかもしれない。しかしそんな理念を掲げて人気ジャンル、ビジネス用語で言うところの「レッドオーシャン」に飛び込み続けてしまえば、いつまでたっても目標は達成できず、赤字事業となるだろう。詳しくはまた別途取り上げていく。

 「書きたいもの」を我慢して人気ジャンルを書く、というのは営業目線で言えばまさに「理念無き営業」であり、失敗の典型だ。

 まず、Web小説作家がすべきことは「書きたいものは何か」を再認識し、「どこを目指すか」を考え、「そこに向かうための書き方」を模索することではないだろうか。

 だから私は、作家仲間にはこう言う。「書きたいものを楽しんで書くべきだ」と。

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