「それ」を続けた心であなたが選んだんだ、と
ハッシュタグでこれをたまたま見かけて、ちょっとだけ自分語りをしようと思う。
書いていて途中で後ろ暗いことになるが、それでもよかったらこれを読んでほしい。
物心ついてからは家のおもちゃ──特に町内会のお祭りの景品でもらったマーカーや固形絵の具が揃った画材セット、祖父からもらった小麦粘土、はたやチラシの白い空白をとにかく埋めていた子供時代で。
母は子供らしく外で遊んだり運動したりしてほしいと思っていたそうなのだが、知り合いの美容師(わたしにとって歳の離れた兄貴分みたいなひと)から『こいつは必ず美術系に進学させろ』と口酸っぱく言われたらしい。
この頃は彼はよくうちに遊びにきて、描いたものを見て、何か感じるものがあったとの事。
唯一わたしが美術系に進学することを応援してくれていた1人だ。
で、いざ部活やら進路やらを決める時、中学高校の先輩同級生から
『お前は絵が上手いのが気に入らないから美術部に入るな』
『コンクールとかに出るやる気がないなら退部してくれ』
と言われ聞かされ蔑まれの散々な学生時代の突入。
中学の先輩はおまえには入ってほしくないと入部拒否され、見学すらできず。
同級生の言い分は、主にわたしが母の入院のために部をしばらく休まなければならなくなった事と、進路のためのコンペ実績をいともあっさり軽々と積んだ事が気に食わなかったそうで(なしてそこで怒るんだ?と結局わからず仕舞いだった)。
もちろんそこにも皮肉は特盛の白米の如く器に盛るに盛られ、わたしが言いたかったことの半分すら言わせない怒りが彼女にあった。
とにかく、お前の何もかもが全て気に食わないんだ、と。
謝罪も何もなく卒業した今、彼女たちが何をどこでどうしているかは知る由もない。
その一件があった以上、地元の美大やデザイン系の専門学校は彼女たちの進路先であり、行けないし通えないと悟り、とにかく県外の学校に行って離れたい一心で取り寄せられるだけの学校資料を取り、学生コンペのある専門を絞り、コンペに片っ端から応募した。
夏休みはほとんどどこにも行かず、8p原稿×2とたまに宿題課題に明け暮れ、インクとトーンに塗れた。
その間の記憶はもう朧げで断片的にしか覚えていない。
覚えているのは、亡くなった祖父が隣で描くところをじっと見つめ、見守ってくれていたことと行き詰まった時に外へ連れ出してご馳走してくれたラーメンの味だけだ。
そしてその原稿は過去にない二作同時受賞という形で賞を取り、学校へ行くための奨学金一部免除形式というおまけもついた(ずっと県内美大に行けと反対していた母もこれで納得させた)。
こうして県外へ2年だけ猶予がつき、その間は地元の同期にほとんど鉢合わせることなく楽しく学生生活を過ごせた。
その後、偶然再会した幼馴染(元彼)と成り行きで付き合うことになったのだが……。
元彼が何気なくわたしの描いた制作物を見て、
『お前、もうちょっと絵の勉強したほうがいいよ』と地雷をいとも容易くぶち抜いたのだ。
その瞬間、わたしからそいつに対する愛情というものは一欠片もなくなり、大喧嘩に発展し二度と会うこともなくなった(別れたあとも未練タラタラなロミオメールが送られてきたけど、それはまたどこかで話そう)。
今思えばあいつに鼻フック+ロメロスペシャルの飛び蹴りでもかましてやればよかったか?
まあ、わたしの名誉が傷つくからそこは封印しといてよかったか。
思い出す度にイライラと腹の底の怒りの火は轟々と燃え盛り、もし過去に戻れるなら言い返したくなる。
たまに彼女らと元彼のなじる言葉や幻影が脳裏に焼き付くとき、脳内で言い返した。
「あなたたちの不満は悪口として見做して返すけれど、果たして返したそれを受け取ってくれるのかな?」と。
これはブッダへ向けた悪口その他妬み嫉みの言葉(毒)でたぷたぷに満たした器を受け取り拒否し、言った本人に返すというエピソードより。
もちろん言った本人は返品もできず、その毒を飲み干せるわけでもなく。
寺の宗派関係で勉強したことがここで補えるとは。
言われても描くことは絶対やめなかった。
下手くそでも、何がなんでも描くことだけは。
人の一生を賭けてやっていることを、何もやってこなかった奴の言葉ひとつでやめる訳がなかろうと。
もしそれをしていたら、絵を描くという唯一の武器を磨き育て、レース糸のように細い糸で紡いだ縁を作ってきた意味を否定することになるからだ。
タイトルはBUMP OF CHICKENの(please)forgiveより抜粋。
これはわたしが彼らのリスナーになった時──意思の国ウィルポリスへ入国した時に聞いた歌だ。
日陰者だった自分を認めてくれた、そんな気がした歌。
全て選んだことが正しかったかなんて神様でもないとわからないけど、この選択はわたしがわたしとして生きるために選び取った道かもしれない。
わたしを異端だという奴はそう思って貶してればいいだけだ。
その言葉は冷たくその場に置き去りにされるだけだから。
わたしはわたしの信じる方へ向かうだけだ。