少しずつ高くなる太陽に
冬が終わりを告げた頃
みんな偉くなっていくなと思った
従兄弟が国公立大学に合格したり
知り合いが大企業への就職が決まったり
そんなことが重なって尚思った
白痴だから美大とか言う
Fラン以下のどうしよもない所に進学した挙句
半年余りで中退して
今では1日4時間のパート勤務で
最低賃金をむさぼっている様な僕を置いて
仕事帰りに何時もは俯いている顔を少し上げてみれば
もう桜が咲き始めたことに気がついた
一体これが何度目だろう
もう随分歳を重ねたな
ふと吹いた風に花が揺れる
きっと彼や彼女等にはこれから
更なる出会い別れそして再会が待っている
それはきっとそれぞれの人生を
豊かに彩ってくれるんだろうな
この花の様に
それは僕には一生無いことだ
また花が揺れる
其の度に問い返される様だ
「あなたは今日は何方まで?」
其の沈黙の度に思い出す
あの日君が言っていたことを
本当はもう分かってるんだ
「風さん、今日は何方まで?」
「そうね、少し遠くまで
あの町へ春を届けに行くの
では、あなたは?」
僕は其処で閉口してしまった
其の沈黙の度に思い出す
あの日君は
「私たちが今ここで約束をしたからには
あなたがいつも話していたのとは違って
この人生はただ死へ向かう直線ではなく
複雑に絡んだ曲線だったことの証明になるね
そしたら何度でもまた会うことができるね
この問題は私の勝ちだよ」
と言って笑っていた
其れは半分間違いだよ
こうして一人孤独なままの今が其の反例だ
もし僕等がまた出会う事があるとしたら
其れは君の結婚式の日だよ
其れにすら呼ばれないだろうけどね
何の出会いもない
たださよならだけが増えていく
この死へ向かう真っ直ぐな道を前に
この暗い直線を前に
春を届けけるはずの風は
僕に吹いたものだけとても冷たく感じた
本当はもう分かってるんだ
あの問い返しの答えも
其れが何もない最期だということも
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