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その机上の空論、東京「以外」でも実現しますか?
こんばんは、塩谷です。
日本に帰国中はもっぱら、執筆業と並行して経営者やアーティストの方々のコンサルタントをやらせてもらってます。
「近い将来、これが流行るであろうから旗を振るべし」
「御社はこの軸を大切にすべし」
「この方向性でいけば良いに違いない」
……という、まぁ机上の空論で飯を食っている訳です。占い師みたいだな…。
私は拠点を半分NY、半分は地元・大阪の千里ニュータウンに置いていますが、NYは本当に流行り廃りのスピードがえげつない大都市です。トレンドを作りたい人、それを消費したい人が世界各国から集まり、生産者も拡散者も消費者も同じ街にいる。
挑戦する人の母数が多いだけ、成功する人も失敗する人も多い。そんなNYは、次の時代の実験都市のような場所だと思っています。
「SNS時代のトレンドは、その中心地であるシリコンバレーから生まれるのでは?」とも思っていました。もちろん新しいITビジネスはどんどん、シリコンバレーから生まれています。
ですが実際のところ、サンフランシスコなどのIT都市は、IT企業で働く人たちの収入増に比例して家賃の高騰が止まりません。そのため、小売業やホテル従業員、大学の教師など、いわゆる従来のまっとうな職業の方々が家賃を払えなくなってしまい、キャンピングカーなどで暮らしているという現実……。
ニューヨークももちろん家賃は高いです。エリアによりけりですが、窮屈なシェアハウスで15万、一人暮らしのワンルームなら20万円、二人暮らしの1LDKなら40万〜……みたいな感じが周囲の相場でしょうか。
しかし昔からの金融街であり、ファッションやカルチャー、メディアなど、レガシーな産業の中心地でもあるため、サンフランシスコのように家賃が突如爆発することもありません。それゆえに、サンフランシスコのような情報・テクノロジー戦だけではなく、物理的にモノを売って商売をするスタートアップも多く生まれています。
たとえば、USB充電がついているスーツケースブランドのAWAYや、安価で高品質なマットレスを打ち出してマットレス業界の常識を覆したCasperなどが代表的な存在でしょうか。(どちらもSohoに実店舗があります)
ほかにも、NYのトレンドはこんな感じ。
・下戸でも楽しめるノンアルコールBAR
・言われなきゃ肉だと勘違いする、ビーガン向けの大豆バーガーショップ
・包装ゼロ、環境に優しい商品だけを扱うセレクトショップ
・無人決済でレジいらずのキャッシュレス店舗
・オシャレな生理用品通販
・展示だけに特価して、購入はオンラインのみのインテリアショップ
・見た目は◎◎なのに、隠し扉を入るとBAR
・複数のレストランを17時頃までシェアオフィス化
・消耗品はとにかくサブスクリプション。お洒落なインスタが命
PanasonicのNYオフィスに務めるたくみさんのnote、オススメです!
そして上記でつらつらと書いたようなものは、既に東京でも流行りつつあるものもありますが、これから流行るであろうものも多いでしょう。
こうすると「東京でこれから流行るであろうこと」はなんとなく見えてくる気もしてきます。
が、これだけだと本当に、本当に本当にマジで見落とすことが多いです。
私の2つ目の拠点は、大阪の千里ニュータウンです。
阪急千里線、というなんとものどかな、鈍行のみの電車が走るのどかな町です。
都会だとUberで移動し、Uber eatsで食事をデリバリー、家事はタスカジさんなどにお任せ……しているものの、地元ではそうはいきません。
・Uber eatsは圏外
・家事代行サービスも圏外
・Wi-Fiが繋がるカフェなどはほぼ皆無
・買い物はイオンかコーナンかダイソー
・タクシーや飲食店はカード決済不可の場合が多い
…という感じ。タピオカを持って歩いている女子大生も、最寄り駅では見かけません。だって売ってないんだもん。
大阪の中心地ではDidiなどの配車アプリが普及していますが、大阪郊外に行くとタクシーの運転手さんも、かなりご高齢。アプリを活用しているかどうか聞いてみると、「会社からアプリを入れられたんやけど、使い方がようわからへんし、(アプリ経由での注文を)取らへんようにしてるんですわ」とおっしゃっていました。
でも! 本当にお話が面白い運転手さんが多くて、個人的には地元の運転手さんたちが大好きです。私がNYで暮らしているというと、「ひぇぇ、銃社会やないか〜!」とビックリしつついろんなことを聞いてくれるのですが、私も普段70代くらいの男性と話す機会というのはめったにないので、こちらも聞きたいことだらけ。
何一つ楽しくない通院だって、道中タクシーの中で話が盛り上がったりすると、それだけで「儲けた!」と思ってしまうものです。
ですが、そんな調子ですから、様々なアプリが地方都市まで行き渡り、キャッシュレスで暮らす……という未来までは、もう少し時間がかかるでしょう。
さて。
私は広告業界に片足を突っ込んでいるので、最先端な広告、特に最近の社会的なメッセージを伝えるような広告を見ると「これは最高だ!時代の産物だ!」と惚れ惚れとしてしまいます。
こういう広告。素晴らしい……。
男性に比べて正当に評価されて来なかった偉大な女性たちを讃える、蛍光ペンの広告。
— 橋口幸生@広告コピー、海外広告、映画などクリエイティブ情報 (@yukio8494) June 24, 2019
映画「ドリーム」で注目されたキャサリン・ジョンソンも登場している。
考えた人、天才。鳥肌が立ったよ。 pic.twitter.com/IJNVoToekh
「Fearless Girl」 が僕がもっとも尊敬する広告の座にい続けている
— 牧野圭太@カラス/エードット (@MAKINO1121) June 30, 2019
◆銅像を置いただけ
◆社会文脈を鮮やかに捉えている
◆真似したくなるポージング
◆12週でTwitter46億回/Instagram7億回表示
◆2年で300人の女性役員が新たに就任
最小で最大の効果産んでてかっこよすぎる#ブランドジャーナリズム pic.twitter.com/05Os2oGEue
そしてまさに、これからの時代は、企業が商品と広告を通じて社会的なメッセージを伝える「ブランド・ジャーナリズム」が主流となっていくのだと思います。
企業も広告をつくる人たちも、考え方を大きくアップデートしなければいけない時代です。高い視座を持ち、強い意思を抱き、よりよい未来をつくるための美意識を有する企業が増えていけば、社会が少しずつよくなっていくことは間違いありません。
"「ブランド・ジャーナリズム」の時代" より
今の時代を切り開くような広告こそ、消費者の心を動かし、素晴らしい社会を作るはず……と日々信じて疑わない私なのですが、食後に母とテレビを見ているとき、母が突然CMに熱中したのです。
そのCMは、これです。
新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。