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駐輪場の女神

その人は颯爽と現れた

きっと女神だと思う



それは朝、幼稚園に子どもたちを送ったあとの出来事だった

マンションの駐輪場に自転車を停めて部屋に入る

はずだった



一番奥、下段のラックが空いている

すぐ端の空間に、カバーがかかった自転車が置いてあるから気をつけながら..と


ん?動かな…い

自転車の後輪が、カバーのかかった自転車のペダルにガッチリとはまっていた

全然気をつけられてないじゃないかあああ!

すぐ抜けるだろうと安易に動かしてみたが、抜けるどころか余計複雑にハマっていく



荒手の知恵の輪でしょうか?

電動自転車なのに後輪がありえない角度で浮いている

よそ様の自転車の負担が心配だが、一種の造形..(逃避)いやそんなことは言っていられない
この状況を作り出してしまった自分が恥ずかしい、申し訳ない
コンクリートの地面を掘って入りたい

どうにかしなければいけないのだけれど、よそ様のペダルが折れてしまわないか不安で動かせない、負担を最低限にするために持ち上げ続けることしかできない..

自転車版のJAFとか..きっとない…
自転車を持ち上げる手が限界に達しそうだ


途方に暮れて朝の風に吹かれていると


「大丈夫ですか?」

女神がやってきた



マンションの駐輪場に降臨した女神



それは、いつも挨拶を返してくれないと私が勝手に思っていた人だった(急に悪口言うな)


女神は自転車の絡まり方に驚きつつも「これどうなってるんだろう」「こうかな」「そちらどうですか?」「あ、これできるかも」と一緒に試行錯誤してくれ、ついには自転車の知恵の輪を解いてくれた

よそ様の自転車も無事だ

本当に良かった


わたしは女神に「貴重なお時間を割いていただき申し訳ありませんでした!!!」と生まれて始めてくらいの腹式呼吸で謝っていた

本当はハイタッチしたいくらいの感激だったけれど、それ以上に申し訳なかった




人生というのは、いつ誰が助けてくれるかわからない


ある日突然、女神になってくれる人がいる




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