ハーメルンの笛吹き男
グリム童話の『ハーメルンの笛吹き男』を小学生の頃、本やアニメーションで知るにつけ、私にはやはり不気味な感覚が優先して違和感が拭えずに感じたものでした。
物語概要は以下です。
何処から現れたか不明な男により、その町を悩ませていた蔓延るネズミについて、駆除できたあかつきには金貨の褒賞を受け取る契約を町と結ぶます。不思議な笛の音色に導かれた大量のネズミは男によって無事駆除されますが、町との約束は履行されませんでした。失望した男は笛の音色を奏でながら町を練り歩き、音色に引き寄せられた町中の子供たちをさらっていきます。その後、男と子供たちは現れることはなかったのです。
というグリム童話ではありますが、この話から感じる様々な見解があります。
子供の頃に感じたのは約束を不履行された笛吹き男の復讐の怖さがまず第一に感じたのですが、今の私はこのように思うのです。
物事には代償が伴うものであるが、中でも安易に答えを求めるもの、またはそこに便乗するもの、総じて無責任な楽観思考は必ず不条理が生み出されていくという考え方です。
社会はまさに1人1人の生き方が交錯して、時にはわだかまりや摩擦を生じながら、譲りあいやある種の自己犠牲を伴いながら醸成されていくものだと思うのですが、インターネットの普及は監視型の正義がまさに蔓延し、リテラシズム(客観主義)の確実な欠如はネットに長けたトリックスターの登場を容易に可能にしています。
このnoteもブログ型SNSサイトであり、インターネットから離れようと呼びかけるにはまた矛盾が生じます。
その上で、本を読む時間を必ず作るのはそんなに難しいことではない筈です。
まずトリックスターの登場を容易にしたのが、SNSというプラットフォームが完全に現代社会の生活サイクルにめり込んだ事により、ブロガーからインフルエンサーという個人発信放送局へのシンパシーを持つ人が大量に増産されます。
インフルエンサーのフィールドカテゴリーがエンタメレベル止まりであれば良かったのですが、政治や社会啓蒙となると話は異なります。
元来、映像リテラシー教育に乏しい日本人は風に流される傾向が非常に強いのです。新聞やテレビでCMを流す際、厳正な広告審査があります。審査基準はそれなりに厳しく、お金を出せば何でも有りというものではありません。
テレビやラジオのニュース報道は報道しない自由という局の判断が存在するのですが、一つの根拠として視聴者を倫理上困惑させるニュース報道はしないという前提があります。あくまで法的な有無に基づき事実認定に結びつけやすいニュースが基準になります。
そこから逸脱したアイテムを専門に扱うのが週刊誌であり、週刊誌レベルという時に揶揄される媒体です。
SNSの政治や社会啓蒙系のインフルエンサーは取材もしない、ほぼ自身の憶測に基づいて発信されているものだと私は断言して良いと思います。それは広告収入を得る手段に他ならないからです。それが目的だからです。
なので読書と良質な映画の鑑賞で客観性や感性を養う習慣を身につけていく、少しずつSNSサイトと接する時間を減らしながら、リアルに知的訴求への機会を作り、トリックスターに振り回されないように予防する必要があると実感します。
ハーメルンの笛吹き男はいつもどこからともなく現れるものだということです。
【漁港口の映画館 シネマポスト 現在公開作品のご案内】
ノルウェーの山岳地帯で大自然の中に生きる老夫婦の姿を、その娘であるドキュメンタリー作家マルグレート・オリンがとらえたドキュメンタリー。
季節ごとに異なる表情を見せる自然の風景をドローンや最新の撮影機材を駆使しながら圧倒的な映像美で映し出し、シンプルで豊かに生きる両親の姿を通して、人生の意味や生と死について探究していく。「ベルリン・天使の詩」などの巨匠ヴィム・ヴェンダースとノルウェーを代表する名優リブ・ウルマンが製作総指揮に名を連ねる。
【『幽霊はわがままな夢を見る』上映情報】
周南「絆」映画祭 – 山口県周南市で開催する周南「絆」映画祭。この町から「人」の力、「まち」の力を、映画を通して全世界に発信したい。
11月30日〜12月1日開催の周南映画祭に出品となります!
山口県東部に初登場です!
シネマポストでもチケット取扱っております。
2024年11月30日(土)より1週間限定上映!名館、名古屋シネマスコーレにて公開!