現在、『漁港口の映画館 シネマポスト』では4月20日から26日迄、韓国映画『ビニールハウス』を公開しています。
主演を務めた韓国のスター女優のキム・ソヒョンはインディペンデント作品ながら出演を決めた理由として、脚本の素晴らしさを挙げていました。
脚本が良かったというのは演者側にとっては演じてみたいキャラクターと作品世界観の構築が魅力的だったと推察されます。
2次元から3次元への展開の期待です。
これは一般企業の商品開発における企画書と設計図が優れていることと同意です。結果、先行投資なり制作費執行を可能とします。
通常、企業は予算配分をして仕入と回収のバランスを図っていきます。つまり予算化に該当する企画の良し悪しは、やはり現実的かつ魅力的なものが選ばれるのは至極当然な流れです。
その際、企画というのは柳の下のどじょうの例えにある二番煎じや過去の成功例に類似したものを探す事が全てではないと、私は考えます。
硬直した組織は兎角その路線を推し進める傾向があります。前例の無い事を容認するリスクの方に比重を置きたがるのです。
クリエイティブな世界であっても同様で、才能の評価を何で図るかは、マスに通用するものか否か…一般的になりうる表現性を持ち得ているかが、基準のように映ります。
インディペンデントであっても全く収益性を無視する訳にもいかず、そうした感覚は重要視されているのでしょう。
では、なぜ嘗てはメジャーであっても実験的と思えしパッケージなものがいくつも存在したのかと考えます。様々な推測は上がります。
私は敢えて一つ抽出するならば…企画決裁者の懐が広かった、余裕があった。と読みます。これは若い人の芽を摘むことをせず、失敗も含めてやらせる度量が企業や組織にあったということです。
そして1971年頃まで3度のベビーブームを経ている最中に、文化の潮流は幾度も訪れていました。国の経済力が内需拡大時期にあり、前進的な空気感が人を育てる余裕を生み出していたのだと感じます。
メディアや多種媒体、他業種でも、ある種の規制優遇、中央集権的な側面が権威として幅を効かせて、プラスにはたらいた時代だったのです。
これを懐かしむべきものと捉えるか、現在状況との乖離に有り得ないと見るか十人十色です。
日本の年間の平均所得が円換算で東アジア、東南アジアの数ヶ国より下回っているのは40年前には有り得なかった事実を鑑みます。私は現在状況におけるパッケージ物を総称してコンテンツと呼ばせていただきますが、前述の現在企画の考え方に行き着いた結果になったとみます。
クオリティの高さを一体何で測るべきか、敢えて失われた30年と呼ばれる時間から私はやや乱暴な言い方ですが、学ぶ必要は無いと考えます。
ならばどうすべきか、古典に帰す機会、原点回帰に新しさを見つける姿勢が必要な時期に来たと思っています。
いわば企画する、考え方の要諦と言って良いと思うのです。
韓国映画『ビニールハウス』。
その製作環境から窺い知るありかた、行間を感じました。
【漁港口の映画館 シネマポスト 現在上映作品(4.20〜4.26迄)のご紹介】
『ビニールハウス』
(2022年/韓国/韓国語/100分/カラー/2.39:1/5.1ch)
監督・脚本・編集:イ・ソルヒ
出演:キム・ソヒョン、ヤン・ジェソン、シン・ヨンスク、ウォン・ミウォン、アン・ソヨ
配給:ミモザフィルムズ
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