休館前に元町映画館で『慶州(キョンジュ) ヒョンとユニ』〜緊急事態宣言Day7
緊急事態宣言が兵庫県に発令された時点で、休館を決めた映画館が多い中、神戸の元町映画館とパルシネマしんこうえん、そして日曜で休館したCinemaこうべの3館は営業時間を短縮して、上映を続けるという道を選んでいた。まだ様子見ということで、協力金などももちろん出ない中、休館する選択、しない選択、どちらも非常に苦渋の決断であることには変わりない。でも、映画ファンの勝手な思いとしては、やはり映画館の灯が消えずに残っている場所があるというだけで、ホッとしていた。週末に感染病専門病院でクラスターが発生し、兵庫県の医療崩壊が叫ばれる中、ついに営業休止の要請が出されることになり、元町映画館、パルシネマしんこうえん共に今日が休館前の最終営業日になったのだ。
昨日の夜は、兵庫県知事の会見を受けて休館を決めたばかりの元町映画館、パルシネマしんこうえんの支配人によるインスタライブが行われ、休館に至る道のりや、休業期間の資金面、従業員の待遇面、再開後の上映作品などが切々と語られた。「一度休館してしまったら、もう開けられないかもしれないと思うと怖いから、やり続けたい」と言っていた林支配人。スタッフも共に本当によく頑張られたと思う。そして、休館前の最終上映日に観たのは、チャン・リュル監督の韓国映画『慶州(キョンジュ) ヒョンとユニ』。私と同じように休館前にここで映画を観たいというファンの方が訪れ、ほどよい入り具合。予告編はいずれも大阪アジアン映画祭で上映した韓国映画『マルモイ ことばあつめ』と『はちどり』。再開した暁には、ぜひここで観たいと思う珠玉の二作だ。古墳のある街、慶州を舞台にした幻想的な部分もあるヒューマンドラマ。ゆったりとした動きや余白を感じられる作品は、時折心地よい椅子で気を失いながら、案外笑うシーンもあって、それも映画館の醍醐味だなと改めて感じ、チャン・リュル監督のポエジーワールドに酔いしれた。
朝日新聞の朝刊で、昨日決定した休館の知らせを受けて地域欄のトップに写真入りで元町映画館の記事が出ていたので、受付のリョウちゃんとそんな話(実は昨日、今日と取材が次々入っているらしい)やインスタライブのことなどを話したり。先日終了したSave our local Cinemaプロジェクトや、昨日から始まったミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金が大きな反響を呼んで、実際にかなりの額が集まり、各ミニシアターにもそれなりに配分できそうな兆しが見えているので、もちろんスタッフの皆さんも無念さはあれど、少しは安心して、休業後を見据えてという気持ちになっていらっしゃるのではないか。そして、こちらも「まずはゆっくり休んで。また来るからね」と言えたのだ。扉には寄付を募るアナウンスが貼られ、いつまで続くか分からないコロナ禍との闘いにまだまだ支援が必要であることを表明している。営業時間や延期になった作品の穴埋めなど、様々な対応をしながら、ギリギリまで上映を続けてくれたことに改めて感謝しながら、再開を楽しみに待っていたい。
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