新型コロナ禍の今、沁みる映画『タゴール・ソングス』@仮設の映画館を観る〜緊急事態宣言Day35
5月15日から緊急事態宣言から外される地域のTOHOシネマズ10館が再開するというニュースが飛び込み、喜ばしいことではある一方、首都圏の映画館が再開しなくては、新作がかかることはなく、本当に出口戦略の最初の一歩という感じだ。
そんな中、今日、佐々木美佳監督のドキュメンタリー映画『タゴール・ソングス』がオンライン上の「仮設の映画館」で公開された。アジアで初めてノーベル賞を受賞したインドの作家、詩人、シンガーソングライター他にも多様な肩書きを持ち、今でも詩聖とあがめられているラビンドラナート・タゴールや彼が遺した歌が、現代のインド、バングラデシュに生きる人たちがどのような影響を与えているのか。インドのコルカタやバングラデシュのダッカ、旧タゴール邸があるシライドホ他多数の場所でロケをし、道ゆく人からタゴールソングを歌い教えている先生、タゴールの歌を現代風にアレンジして演奏している若手ミュージシャンや、タゴールを心の支えにラップで闘うミュージシャンたちにもインタビューを敢行。まだまだ貧しく、女性の人権が守られていないインド、パキスタンで過酷な環境の中、タゴールの歌、「ひとりで進め」を心の糧に、なんとか前に進もうとする若者たちの力強い姿も目に焼きつく。
ベンガルに生まれたら、家では常にタゴールソングが流れて入るというぐらい、心の支えになっている歌。それぞれのお気に入りの曲があり、映画全体でも10曲以上が歌われる。哲学的なものもあれば、愛を歌うもの、尊厳を歌うもの、村の美しさを歌うものと、実に多彩で、どれをとっても今を生きる私たちに響いてくる。そのメロディーも繊細かつ、西洋音楽とは違う独特のリズムと節回しで、簡単には歌えないというのもよくわかるが、実に心地よく、そしてリラックスできるのだ。
映画の冒頭と最後に読まれるタゴールの詩では、100年後に彼の詩を読む人へと呼びかけられる。そう、それは私たちなのだ。この時点でタゴールと対話をしているような気分になれる。詩を作りながら、今ではなく、未来に語りかけるなんて、今日原稿を書いていた大林宣彦監督のようだ。24時間配信なので、もう1度じっくり観たいと思う。
仮設の映画館『タゴール・ソングス』
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