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映画が第七芸術になる時代(1):奇術師の編集トリック
第2章はフランスのお話です。
映画といえばハリウッドという印象が強いですが、初期はヨーロッパ、特にフランス映画が世界的に人気を博していました。
さすが芸術の都パリ!
といいたいところですが、登場した当初は映画の地位は低く、縁日やサーカスの見世物にしかすぎなかったのです。奇術師メリエスが目をつけたのも、このような文脈からすると納得いきますね。
前にも登場したメリエスですが、色々と発明した重要人物なので、この章もメリエスからスタートです。
メリエスは、1897年にアトリエAという自身のスタ ジオを建て、スター・フィルムという独自のレーベルを創設しました。これが初めてのスタジオです。さらに、1900年には彼の劇場を定期的に彼の映画を上映する映画館にリノベーションしました。
メリエスのトリックの多くがフィルムの切り貼り、「編集」によるものです。急に物が現れる、急に物が消えるということが大掛かりなセットなしで実現できるのです。
例えば、この『苦労して寝床に入る』は、服を脱いでも次の瞬間にはまた服を着てしまっている男が何度も何度も服を脱ぎ直す2分弱の作品です。待ってましたとばかりに並んでいる衣紋掛には、脱いだ服がずらっと並んでいきます。
こういうトリックは童話ども相性がいいものです。1899年に作られたメリエスの『シンデレラ』では、魔法使いが急に暖炉の中から現れ、次々とシンデレラに必要なものを魔法で出していきます。
『シンデレラ』の最初の場面が終わる瞬間に注目してみて下さい。魔法使いが退場して誰もいなくなった家から、華やかな舞踏会シーンに移る瞬間です。家の光景が薄くなり、代わりに宮殿のなかの様子が浮かび上がってきます。この「フェードアウト」もメリエスの発明のひとつです。
さて次回はスター・フィルム全盛期に登場した他のフランスの映画会社について紹介します。