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Jour de fête

今回は1949年公開のジャック・タチの『Jour de fête』。原題は祝日ですが、邦題は『のんき大将脱線の巻』。昭和な臭いがプンプンするので、あえて原題のまま行きます。ここでの祝日は、1年間でフランス国土挙げて盛り上がる7月14日の革命記念日で、この日は老若男女がおめかしして村の広場に集まって、飲んで踊って盛り上がるという日です。いまでは、おめかしこそしませんが、それぞれの市町村で花火を打ち上げ、屋台が立ち並び、ステージを建てて、一日中イベントが開催されます。そんな年に一度のお祭り前日から、この映画は始まります。

さて、この映画を語りだしたら本が一冊かけてしまうほど、いろいろと曰くつきの作品です。それをあえていつもどおり5つのポイントに絞って紹介します。

1.バスター・キートンが認めた、戦後唯一のドタバタ喜劇役者ジャック・タチ。主人公を演じるのが監督のジャック・タチです。ミュージック・ホールでくすぶっていた彼が花開いた瞬間です。キートンもびっくりの運動神経で、自転車を猛スピードでかっとばしていきます。自電車をこぎながら、電話をしている姿に違和感を抱かせないのが、彼の才能です笑

2.ドキュメンタリー的に面白い。都会ばかりを映してきたフランス映画にはめずらしい田舎映画。1943年という戦前のフランス片田舎を納めているので、資料として非常に価値が高いのです。ちなみに、キャストの大半は農村の人々です。ヤギをつれて歩くおばあさんに、かけよる子どもたち、彼らにとっては記録映画となっています。

3.フランス人のアメリカへの熱い視線。アメリカにあこがれて真似しているのは日本人だけじゃありません。フランス人だってあこがれます。巧みに編集されたアメリカの郵便事情を伝えるニュース映画を見て真似しちゃう。高飛車じゃないフランス人の素朴な憧れがユーモアたっぷりに描かれています。

4.登場人物に格上げできそうな自転車の存在感。最近は薄れてきていますが、少し前までのフランス人の自転車熱がこの映画にもばっちり出ています。昨年日本公開のサンペ原作『今さら言えない小さな秘密』でも描かれていますが、さすがツール・ド・フランスの国。颯爽と走っていく自転車へのまなざしが熱すぎます。

5.幻のカラー映画。実は、この映画はカラーで撮影されています。が、当時はカラー映画の黎明期。特許申請されたばかりのトマソン・カラーを使用しましたが、技術的な問題で現像できず。現在の映像は隣接して撮影していたサブカメラで撮られた映像を編集したものです。が、監督の娘さんが捨てられそうになったフィルムを密かに保管し、1995年にどうにか現像できて公開に至ったという、映画史的にも非常に面白い作品です。ちなみに、お祭りはくすんでいた村が彩られる唯一の日。その華やかさは譲れない!ということで、49年の公開時には監督が手でフィルム一枚一枚に着色して、、国旗やイルミネーションだけ色がついていました。(リマスター版では省いてありますね苦笑)

リマスター版の予告編


カラー版はこんな感じ

タチ作品はまた紹介します。



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