いつか、鵠沼海岸のシンボルに。

ここは、昭和に建てられた元写真館。この場所は、鵠沼海岸で暮らす地元の人たちにとって、七五三、成人式、結婚記念の写真など、家族の記念日に訪れる特別な場所でした。

そんな場所に、2017年４月「シネコヤ」はオープンしました。

文化的で地元の人たちが集う小さなお店を作りたいと思い立ち、大好きな映画と「小屋」という小さなイメージをつなぎ合わせ「シネコヤ」と名付けました。
貸本屋（ブックカフェ）を主体とした、映画をコンセプトに選書した本やアートブック、映画雑誌、昔のパンフレットなどに囲まれたお部屋で映画も楽しめる…「映画と本とパンの店」というちょっと不思議なスタイルのお店です。
1階にはパン屋さんがあり、焼きたてのパンを食べながら、本を読んだり、映画を楽しんだり。それぞれが自分の時間を過ごせるような空間づくりをしています。

「シネコヤ」は、神奈川県藤沢市の鵠沼海岸商店街（マリンロード）の一角にあります。商店街には個人店も多く、昔ながらのお肉屋さんがつくるコロッケや、懐かしの喫茶店、有名なかき氷屋さんに、アンティークなお花屋さん…など地元の人たちはもちろん、観光客にも楽しいスポットがあります。海まで徒歩5分で行けるこの商店街。南風に乗った潮の香りがワクワクさせてくれます。

お店をオープンして、もうすぐ３年が経ちます。
最近、お客様から言われたことで、一番うれしかったこと。
「シネコヤはこの町の自慢だから」と。

いつか、鵠沼海岸のシンボル的な存在になれたらいいな、と思います。
嬉しいことに近ごろ遠方からのお客様も増えてきました。シネコヤへ初めて来た人に、常連さんがお店の過ごし方やシネコヤができた経緯などの説明をしている姿を見かけます。なんだか温かい光景だな、と嬉しくなります。この場所で新たな思い出をつくりに来る人たちと、地元の人たちとが交わって、コミュニティが自然と醸成されていくような空間を目指しています。

生まれ育った町でお店を持つことができるのは、この上ない幸せです。
まして、自分の好きなことをやらせてもらい「町の自慢」と言葉をかけてもらえることは、私を育ててくれた町に、そこに住む人たちに、ほんの少しでも恩返しができたのかな、
と思う瞬間です。
地元の人に愛された元写真館の「空間」を受け継いで、鵠沼海岸の町の中で物語をつなげていきたいと思います。

＊2020年・1月