話題の『青い壺』を読んで
有吉作品とは
私にとって、有吉作品とは様々な「怖さ」を教えてくれるものです。『連舞』で日舞の怖さを知り、『真砂屋お峰』で着物の怖さを、『悪女について』では女の怖さを知りました。
最近、本屋の平積みスペースの片隅で、この文庫を目にしました。なぜ今有吉佐和子?と思いましたが、ある新進作家がこの作品のファンで、帯を書いたことから売れ出したようです。NHK『100分で名著』でも折よくこの作品の回を視聴しました。
当作品の魅力
当作品は、戦後の日本の暮らしぶりを、様々な登場人物を通じてみせています。それがレトロかつ新鮮です。中には、日常に感謝しながら暮らしている人や心優しい人々が登場して、幸せな気持ちになれます。「足るを知る」幸せに気付くには、このような小説を読むなどの時空間を超えた装置が必要なのでしょう。私は去年訪れたスリランカで「すでに持っている」ことに気付き物欲がおさまりました。
次に、ストーリー展開が練られていて、エンターテインメントとして飽きません。ある夫婦が芝公園の恐らくはクレッセントに豪華ディナーに行った章の最後など、さすがです。登場人物も色々で、自分はどのタイプだろう?どうありたいだろう?この場合どうするだろう?と考えさせられます。
本当のテーマは?
NHKの番組は、当作品が注目されている理由は、日常にあるほっこりとした幸せにあると言っていました。また、タイトルの「青い壺」は有吉氏本人であるとも。
私は青い壺は有吉作品の象徴なのだと思います。最後の章に、青い壺を作った本人が、「壺を見た人が南宋時代の唐物であると主張するなら、そう思わせておこう」と決心する場面があります。ここに有吉氏の「作品は作家のものではなく、読者のものである」という覚悟を感じました。同時に作家という職業の怖さをみたようです。
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