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人文社会学を専攻する産業医 それは放送大学から始まった…

ひょんなことから放送大学で人文社会学を学び始めたのは、もう10年以上前のことです。大学院修士課程社会経営科学プログラムを修了し、その後、地元の大学でも人文社会学を専攻してます。

放送大学在学中は、産業保健や企業活動の理解に役立ちそうな授業も聴講してました。研究分野は産業保健とは直接関係ないのですが、思いがけず産業医の仕事のヒントになったりするものもあります。


放送大学との出会い

そもそも放送大学を知ったきっかけは、産業医面談のスキルアップのために臨床心理学を体系的に、でも少しだけ勉強してみたいという出来心でした。
大学案内を見ると大学院の臨床心理学プログラムは狭き門だし、そこまで臨床心理学やる覚悟もないし、とりあえず科目履修だけしてみようかな。

そんなことを考えながら他のプログラムにも目を通すうち、仕事とは全く関係ない人文社会学の分野を専攻しようと心が決まります。
・・・当初の目的どこ行った?

考えた末に、地元の学習センターに行ってストレートに相談してみました。
専攻するプログラムの単位とは別に、仕事に役立ちそうな授業科目を履修登録せずに勝手に視聴しちゃったりしてもいいんでしょうか、と。
ありがたいことに、ぜひ存分に活用して学んでくださいと激励されて、まずは修士選科生として入学しました。

臨床心理学

放送大学在学中は、当時インターネット配信されていた心理学・臨床心理学系の授業(放送教材)を片っ端から視聴しました。
臨床心理学に真っ向から取り組む余裕もなく、心理カウンセリングをするつもりも資格を取るつもりもなく、ほんのり臨床心理学をかじりたい自分にはうってつけの意義ある研修になりました。

ちなみに臨床心理学の単位は一つも取ってません。つまり、単位認定試験の勉強をしてないので「学んだ」とか「身についた」なんていえるレベルじゃないんですね。でも、試験を気にせずに何科目も聞きまくったので、まあ、門前の小僧レベルにはなったんじゃないでしょうか。

おかげで産業医面談が格段にやりやすくなったし、事業場との関係の取り方にも臨床心理の枠組みがヒントになってる気がします。

経済学

放送大学の修士全科生になって所属したゼミでは経済学分野の議論も多かったのですが、これがさっぱり理解できません。せめて基本的なことは知りたいと思って指導教員に相談したら勧められたのが、その当時、学部で開講されてた「経済学入門」でした。
履修登録はしてませんが、聞き流しただけの臨床心理学とは違ってテキスト(印刷教材)を買ってますし、何度も復習した形跡があります。

西村理「経済学入門」放送大学教育振興会、2013年。書き込みに努力の跡が…

ところで、放送大学の学習センターでは公開特別講座が開講されてます。
地元の学習センターで10年ほど前に開講されてた「日本経済の見方・考え方」、産業保健活動をする者として、企業への理解を深めるのに役立つかもしれないと思って受講してました。
基礎から丁寧に分かりやすい説明で面白い講義でしたが、債務残高とプライマリーバランスとか、マジでヤバい日本経済。

国の財政にとって、働く人の健康は死活問題なんじゃないかと気づかされました。

文化人類学

放送大学で履修登録して、Ⓐもらった授業科目です!
文化人類学といえばフィールドに出て参与観察するイメージが強いのですが、これは副題「環境問題の文化人類学」のとおり、グローバルな環境の変化と人々の日常に起こっていることを重層的に分析する壮大なアプローチ。

内堀基光・本多俊和(スチュアート ヘンリ)「人類学研究―環境問題の文化人類学―」放送大学教育振興会、2010年。たしか放送教材はフィールドロケ満載だったような。

この授業で学んだ視点は、10年以上経った今、グローバルな課題や国の政策と、現場の健康管理とをリンクさせるヒントになってる気がします。

それと、たぶん文化人類学の影響だと思うけど、ちょっと参与観察っぽく職場巡視や産業医面談してるときがあるかも。

社会的企業

放送大学の修士論文では、社会的企業を取り上げました。
社会的企業の事業目的は、社会課題への取り組みそのものです。主に、市場からも行政サービスからこぼれ落ちてしまう領域の小規模な事業で強みを発揮します。

社会的企業は、意欲と行動力がある人との取引を通じてサポートすることで、社会やコミュニティの問題が解決していくことを目指します。
一般の企業のように利潤の追求が目的ではなく、援助とも違ってすべての人に無償で手を差し伸べるわけでもないのが特徴です。
(社会的企業の定義や概念は、学派や研究者によって諸説あります)

谷本寛治『ソーシャルビジネスエンタープライズ:社会的企業の台頭』中央経済社、2006年。ムハマド・ユヌス『ソーシャル・ビジネス革命:世界の課題を解決する新たな経済システム』千葉敏生訳、早川書房、2010年。OECD『社会的企業の台頭:「新しい公共」の担い手として』連合総合生活開発研究所訳、明石書店、2010年。いずれも修士論文執筆当時の参考文献です。付箋そのまま。

まさか後年、自分が社会的企業のビジネスモデルを参照して労働衛生コンサルタント事務所を運営するなんて思ってもいませんでしたよ。

以上、ご参考まで。

※ 放送大学に関しては、最新の情報をご確認ください。

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