面談初心者だった頃の思い出 臨床心理学から学んだこと
産業医活動を始めたばかりの頃の、ひよっこ時代の話です。
当時は「医師による面接指導制度」の法制化からそれほど経ってなくて、まだ産業医面談の知見はあまり蓄積してなかったような気がします。
産業医面談ってどうやるんだ? と思いつつ、初めて実施した面談は、たしか有志が健康相談という形で練習台になることを申し出てくれたんだったと思います。ありがたいことです。
で、いきなり壁にぶち当たりました。
話を聞きながら、頭の中が完全に問診モードになってるじゃないですか。主訴や症状の経過をたどってエビデンスに基づいて鑑別診断と治療を考えてしまう。
面談した本人には好評だったので、基本的な傾聴はできてたんでしょう。
でも、自分の中では「絶対これじゃない」感でいっぱいでした。
そんなひよっこ産業医を指導してた先生いわく
「産業医面談してたら、ほとんどの人は自分自身で決めることができる印象があるね。こちらは大体話を聞くだけの感じ」
・・・意味がよく分かりませんでした。
ちょうどその頃、ラッキーなことに産業保健推進センター(現:産業保健総合支援センター)の相談員に臨床心理の専門家がいたので、面談について具体的なアドバイスを受けに行ったりしました。
そのうちに、産業医面談をするための基礎固めとして臨床心理を少し学んでみようか、なんて考えが浮かびます。
臨床心理学が生半可な学問じゃないのは分かってるので、そこまで本腰を入れるつもりはない。将来的に産業医としてやって行くための引き出しを増やしておきたい、という程度だったんですね。
そこで、臨床心理の相談員の方に聞いてみると「放送大学にも臨床心理を学ぶ手段がありますよ」とのこと。
以前の記事に書いたように放送大学では人文社会学に走りましたが、履修登録しない授業にもアクセスできて、心理学・臨床心理学の講義は視聴し放題でした。
講義(放送教材)を片っ端から聞きかじっても心理学の学術体系さえ十分に理解できなかったし、まして臨床心理の専門的なスキルが身についたわけでもありません。
それでも、問診モードに凝り固まっていた頭が耕されて、聞き取る姿勢を変える大きなヒントになりました。
心理カウンセリングと産業医面談との違いも意識できるようになりました。
面談のときに、安心して話してもらえることを心がけるようになりました。
そして気づけば、こちらが話を聞いているうちに、産業医面談を受けている本人が自分で答えを見つけていくことが結構あるんですね。
「ほとんどの人は、自分自身で決めることができる印象があるね。こちらは大体話を聞くだけの感じ」
全くその通りだなあ。
あれから十数年経って、やっと意味が分かりましたよ、先生。
以上、ご参考まで。