見出し画像

健全な事業のキーワード Decent Work & Social Justice

Decent Work(ディーセント・ワーク)とSocial Justice(社会正義)は、国際労働機関(ILO)のSNSをフォローしてると繰り返し出てくる二大キーワードです。グローバル化時代の企業が守るべき世界共通の指針であり、ローカルな中小規模の事業場にも、どんな労働者にも当てはまります。


ディーセント・ワーク(decent work)

「ディーセント・ワーク」は日本語に訳しにくいことばです。
「働く価値ある仕事」とか「働きがいのある人間らしい仕事」と訳されてますが、伝わりきれないものがあります。
ディーセント・ワークの説明には「権利が保護され、十分な収入を生み、適切な社会保護が供与された生産的な仕事」とか「すべての人に対する尊厳、自己実現および公正な利益の分配を確保するディーセント・ワーク」という言い回しもあります。

働きがいももちろんですが、それ以前に心身を痛めない、不要な苦しみのない、中身のある仕事。産業保健的にいえば、安全に健康に快適に、安心して働けることかなと思います。

社会正義(social justice)

「社会正義」は、ILOが1919年の創設以来掲げてきた不朽のキーワード。
ILO憲章は「世界の永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立することができるから」という前文で始まり、現在もILOの最重要課題として取り組まれてます。

社会正義ということばにはいろんな意味や使いかたがあるし、なんだか仰々しい感じもするけど、ILOがいう社会正義の方向性は平和な暮らしです。
誰かを苦しめて搾取するような社会や経済の仕組みのままじゃ、世界が荒れてぐちゃぐちゃになるからダメなんだ、という感じで大きく間違ってないんじゃないかと思います。

実務の視点:働く人と地域社会を大切にすること

では、ディーセント・ワークと社会正義を、日本国内の産業医の実務レベルの視点で、どう考えて現場に落とし込むか。

弊事務所的には、「働く人と地域社会をリスペクトし、大切にすること」だと捉えてます。
例えば、そもそも大抵の人は何のために働くのかって、自分や家族が暮らしていくためですよね。心身の健康や生活習慣を損ねたり、家族に負担をかけたりするような働き方・働かせ方は、ディーセント・ワークじゃない気がするんです。

グローバル化の波は地方の中小企業にも押し寄せてますが、生き残るためなら弱い者を踏みつけたり蹴散らしたりしても仕方ないと考えるような企業や事業に、地域に愛される明るい未来があるとは思えません。
社員を大事にして、下請けも含めて地域社会をリスペクトして、ともに発展する姿勢が社会正義の実践だと思います。それがグローバル化時代を乗り越えて次世代へと続く、健全で持続可能な経営じゃないんでしょうか。
まあ、信用あっての商売ですから、企業倫理と同時に経営手腕が問われるところでもあると思います。

さて、ここで弊事務所の理念「働く人の健康と幸せのために、明るい未来の事業のために」につながりました。
この後半部分「明るい未来の事業のために」は、グローバルな指針を踏まえたうえで、社員と地域社会をリスペクトして大切にする事業の継続を、産業保健の面から後押ししたいという思いです。

「健全な事業への取り組みを目指して頑張る中小企業の未来を応援しますよ!」というのが、弊事務所の基本方針なのです。
(前半部分「働く人の健康と幸せのために」についてはこの記事に書いてます)

以上、ご参考まで。


【出典・参考文献】

厚生労働省
 ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)について

ILO『ディーセント ワーク 第87回(1999年)ILO総会事務局長報告』ILO東京支局、2000年。

仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言:2019 年6月21日 第108回ILO総会(ジュネーブ)にて採択』ILO駐日事務所、2019年。

United Nations: Sustainable Development Goals
 SDG8: Decent work and economic growth 

国立公文書館デジタルアーカイブ
国際労働機関憲章・御署名原本・昭和二十七年・条約第一号
International Labour Organization
 ILO Constitution 

菊池勇夫「社会的正義について―正義の現代的意義―」『法哲学年報』1966巻1967年、1-28頁。

深澤敦「国際労働機関(ILO)の創設」『歴史と経済』第63巻4号(第252号)2021年7月、27-36頁。

(いずれも2024年12月16日アクセス)

いいなと思ったら応援しよう!