基本的なドラムパターンまとめ①

ドラムのお話2回目。今回はポピュラー音楽の基本的なドラムパターンをカタログ的にまとめてみます。よくあるタイプの記事ではありますが、できるだけ網羅的・実用的になるよう目指して整理してみたいと思います。

バスとスネアがタッグで拍を提示しているタイプ

バスドラムが奇数拍、スネアが偶数拍というふうな役割分担で拍を提示するパターンです。といっても、より目立つスネアのほうがその役割の多くを占めていて、スネアさえ定位置で鳴っていれば拍節感は概ね安定して感じられるものです。そのためバスドラムで変化を付けていくのが基本となります。

・バックビート

偶数拍をスネアで強調した、ポピュラーで最も基本となる軽快なパターンです。
バリエーションはバスドラムの入れ方でよくあるものを挙げてみました。下図ではハイハットの刻みは8分音符で統一していますが(8ビート)、もちろん4分や16分(16ビート)のこともあります。

「バリエーション1」は2分の流れを強調したパターン
「バリエーション2」は3拍目を分割して1拍目との差別化を図るとともに、4拍目を強調してメリハリをつけたパターン
「バリエーション3」「バリエーション4」はアンティシペーション
「バリエーション5」偶数拍のスネアの持ち上がる感じをとことん強調したパターンです

・ダブルタイム

バスとスネアの頻度を倍にすることで、実質テンポが倍になったように感じられるパターンです。ツービートとも呼ばれます(和製英語?)
スピード感と勢いがあって、激しいジャンルでよく使われます。

・ハーフタイム

逆にバスとスネアの頻度を半分に減らして、テンポが半分になったように感じられるパターンです。
静かなイントロや重さをもたせたい場面、BメロやDメロなどで一旦ボルテージを落ち着かせたいときなどに使います。

「バリエーション1」や「バリエーション2」のように単純に8ビートを引き延ばしたような形もいいですし、
「バリエーション3」のように隙間を埋めるように8分でバスを入れても、もっと細かく16分でもいいです。ベースのリズムに合わせることが多いです。
また「バリエーション4」のように、普通はバスを入れそうなところをスネアに替えてみても、ハーフタイムの場合は比較的違和感が少なく聴きやすいと思います

・クォータータイム(仮)

2拍目のスネアを抜いたパターンも実際の曲ではよく見かけます。
1拍目バスとその前置(弱起)である4拍目スネアのコンビネーションにより、1小節単位の非常にゆったりのびやかな流れが出来上がります。ハーフタイムのさらに半分のテンポ感なので、私は勝手にクォータータイムと呼んでいます。
バラード曲に多く見られ、特にミスチルやサザンは好んで使っている印象です。

音を足すなら2拍目裏が多いですね
「バリエーション1」は3拍目を強調して2分の流れもネストした形
「バリエーション2」「バリエーション3」はアンティシペーションでトレシーロ(3:3:2)のリズムを形成して、さりげなくノリが良い
「バリエーション4」はバスとスネアを一部交換してちょっとトリッキー。メリッサ / ポルノグラフィティのBメロから抜粋しました
「バリエーション5」はフォワード・クラーヴェのリズムを包含した形です。himawari / Mr. Childrenで使われています

・シェイクビート

8ビートの隙間に16分の弱いスネアなどを挟み込んだパターンです。8ビートと16ビートの中間のようなノリで、複雑でスタイリッシュな印象のリズムです。大人っぽさや繊細さのある曲調によくみられると思います。

・16分の位置
ここでちょっと独自理論の話になります。興味のない人は読み飛ばして下さい。
16分の挟み込む位置についてまずは考えてみます。
8分にしろ16分にしろ、「4つで1サイクル」となっているとみなしたとき、そのサイクル内の2番目には2番目のキャラクターが、4番目には4番目固有のキャラクターがあると考えます。
個人的には2番目の位置に置かれた音には躍動感、キレ、強い揺さぶりの効果があると感じられるので、強いていうならファ(Subdominant)に似ていると思い、「S」の記号を当てています。
同様に4番目には直後のオモテに引っぱられる力や滑らかさが感じられることから、シ(Leading Tone)に例えて「L」としています。
8分は大文字、16分は小文字です。
16分を挿入する位置を決める大まかな方針としては、「揺さぶり」が欲しければ「s」を、「滑らかさ」が欲しければ「l」が候補と考えるといいかと思います。

・音色の選択
シェイクで16分が置かれる位置の最定番としては、3拍目の直前と直後。特に優先順位が高いのが、直前にあたる「2拍目のl」です。
弱め(あるいはゴーストノート)のスネアで鳴らすのが基本ですが、同じ位置でもバスやハイハットにするとまたノリが変わって面白いものです。
スネアは弱く鳴らしたとしても通りがよく、拍を示す役割が強い音なので、イレギュラーな位置に現れたときにはやはり拍節感を揺さぶりをかける効果がバスに比較して大きいといえます。
ハイハットは拍節感に与える影響はほとんどなく、刻みのスピードに緩急をつける感じですね。

・バリエーション
シェイクビートのバリエーションは16分を入れる位置、鳴らす音の選択などで数限りなく考えられるのですが、できるだけ使用頻度の高いパターンに絞って挙げてみましょう。

「バリエーション1」は3拍目表のバスを鳴らさないことで16分のスネアをアンティシペーションにした形。これもド定番で、基本パターンといっていいです。有名な「アーメンブレイク」も概ねこの形です。
「バリエーション2」は3拍目直後にもスネアを入れてより滑らかなアンティシペーションに。また「4拍目のl」は次小節に滑らかに繋ぐ効果があり、これもよく音が置かれる位置です
「バリエーション3」は1拍目のバスを8分で鳴らすことで、8ビート寄りのノリであることをアピールして安定感が増しているように思います。また4拍目に対する前置(弱起)をオープンハイハットで置くことも、シェイクビートに限らずよく行われることです。
「バリエーション4」では最初に16分寄りのノリを宣言しているような恰好ですね。よりファンキーです。
「バリエーション5」はバスとスネアを入れ替え。「3拍目s」のスネアが刺激的です。
「バリエーション6」はフォワード・クラーヴェを包含したパターン。ラテン系の定番リズムを意識してリズムを組み立てるのも良い方法です。


スネア・バスのどちらか片方が拍を提示しているタイプ

バスとスネアが交代で拍を示すのではなく、どちらかだけが担当するというケースもあります。体でノッてみると、バックビートが「ダウン⇔アップ」の繰り返しなのに対して、こちらは全拍「ダウン」。全部強拍のような感じすらあります。非常にストレートで分かりやすく力強いのが魅力です。

・4分スネア(アタマ打ち)

目立つスネアで拍頭を打つと前面に出てくるイメージです。サビなどで特に力強さや勢いが欲しいときに活躍するパターンです。

バスで裏を埋めるのが基本です。よくある「基本パターン」の例では、小節前半が4分、後半が8分の流れになっていて緩急が付いている形です。
「バリエーション1」はバスによって4拍目を強調することで小節のまとまりがより感じられます
「バリエーション2」ではさらに4拍目裏のバスを早めて「s」にすることでキレのある動きをもたせています
「バリエーション3」は、生ドラムでは特にバスとスネアが同時に鳴るのは相性が良くなく避けるのが原則ですが、実際にはままあります。このようなパターンではあまり神経質にならなくても良いようです
「バリエーション4」のようにクローズドリムショットでアタマ打ちすることもイントロなどでは見かけることがあります。ドラムというよりはパーカッション感覚かもしれません

・4分バス(四つ打ち)

バスが4分をコンスタントに打ち続けるパターン。
打ち込み系の音楽で定番ですが生ドラムでもやります。基本のバックビートとあまり聴き映えが変わらないように思われるかもしれませんが、奇数拍だけバスを踏むのは2分の流れをもっているので、4分バスと聴き比べてみるとゆったりしていると感じられるはずです。

・ダンスビート(ディスコビート)

4分バスといえば裏だけハイハットを打った(裏打ち)パターンが定番中の定番です。四つ打ちといえばこちらを指すことが多いかもしれません。ダンスビート、ディスコビートと呼ばれますが、ポピュラー音楽ならかなり幅広い曲調に合う、分かりやすくノリの良いリズムパターンです。

バリエーションはいずれもシェイクビートの感覚を持ち込んだもの。曲の展開に応じてパターンを変えたり手数を増やしたりするといいでしょう。
「バリエーション6」はスネアを少しズラしてリヴァース・グラーヴェのリズムを内蔵するようにしたパターンです。

バスが刻むタイプ

・8分バス

独特の重さ、硬さ、力強い前進感などがあります。
右のようにスネアのところでバスをこともあり、またノリが大きく変わってきます。

・16分バス(ツーバス)

16ビートの金物とバスが入れ替わったような形です。メタルでおなじみの激しい疾走感のあるパターンです。
金物はオープンハイハットやライド、クラッシュなど目立つ音色で大きく打つことが多いです。
右のようにツービートでツーバスを踏むこともあり、よりスピード感があります。


といったあたりで、ここまでで半分くらいでしょうか。まだまだパターンはあるのですが、長くなったのでここで一旦区切ろうと思います。

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