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【2022 映画感想 004】『ただ悪より救いたまえ』 変形ロードムービー:男たちの「救い」への旅

2020年製作/108分/PG12/韓国
原題:Deliver Us from Evil
配給:ツイン
監督・脚本:ホン・ウォンチャン
製作:キム・チョルヨン
出演:ファン・ジョンミン(インナム)、イ・ジョンジェ(レイ)、パク・ジョンミン(ユイ)
公式サイト:https://tadaaku.com

“ファン・ジョンミンとイ・ジョンジェ”といえば『新しき世界』ということらしいですが、私は観ていないんです。観たいのでサブスクしているいくつかの配信サービスで探したのですが見当たらず。今のところTSUTAYAでDVDを借りる以外にないようですね。プレミアム会員なので常に何かを借りている感じですが、次回はこれを借りようと思っています。

今、イ・ジョンジェさんというとNetflixオリジナルドラマの『イカゲーム』を連想される方も多いかと思いますが、私はこれも観てなくて、ドラマでいうなら『補佐官』の印象が強いです。政界のドロドロを描いたドラマで見応えがありました。

さて本作ですが、予告でナイフと日本刀の間くらいの刃物でやり合う様子が出ていたので、ざくざくとエグいシーンがあるとキツいなと思いつつ観に行きました(ホラー苦手)が、大丈夫でした。エグいのダメな人でも観られます。

インナム(ファン・ジョンミン)は、韓国国家情報院の工作員だったけれども、政府による組織解体に伴って口封じのために命を狙われる身になります。そんな状況のためやむなく恋人とも別れ、日本に潜伏して暗殺者となっていました。引退してパナマで暮らすつもりでいたけれど、最後のミッションとしてコレエダ(豊原功補)の暗殺を請け負います。このコレエダがレイ(イ・ジョンジェ)の義兄でした。

レイは在日韓国人三世で、父親から虐待されて育ち、義兄コレエダダイスケとは絶縁していました。その義兄をインナムに殺されたことから、インナムを殺しに追い回すことになります。それで“追うレイと追われるインナム”という図式ができました。

レイはコレエダとは絶縁していたのになぜそこまで? と思ったりはします。しますが、そもそも偏執的で殺しが好き、というようなキャラクターであることが劇中で示されるので、まあ別におかしくもないか、とつい思ってしまいます。何より「なぜそこまでする?」と問われて、「そんなものは忘れた」とレイが答える場面があり、それが実にハードボイルドな味を出してしまうためにこちらも妙に納得してしまうんですよね。

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ところがそれとは関係なく、インナムの別れた恋人(チェ・ヒソ)がバンコクで殺され、自分の娘かもしれない子どもが誘拐されるという事件が起こる。すぐさまバンコクへ飛び娘の救出に走るインナムとそれを追うレイ。二人の通った後に死体が転がって行く。

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国家の組織に利用され捨てられた男(私はこれが好物です)とか在日韓国人三世とか家族を殺されたとか家族が狙われてるとか詐欺とか癒着とか誘拐とか人身売買とか、それらの要素はあくまで要素で、とにかく殺し屋と“殺し好き野郎”のチェイス&アクションを堪能する映画です。そういう意味では『ジョン・ウィック』的なところがあるかも(とにかくなぎ倒していく感じが)
映像的には、随所にスローモーションが採用されているのですが、これはサム・ペキンパーへのオマージュでしょうか。そうでなくても影響は受けているということなのでしょうね。

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昨年末に観た『レイジング・ファイア』も、組織に捨てられた男が、こちらは闇落ちする話ですが、同じようにカーチェイスや銃撃戦、接近戦があってもテイストが違います。(こちらはつぶやきでしか感想書いていないのですが→⭐︎)その違いを説明するには、私はまだ鑑賞不足で、ますますアクション映画が観たくなりました。

ところでレイのファッションや登場の仕方がギリギリコメディ一歩手前なんですよね。それがイカれたレイにぴったりでした。コレエダの葬儀に着てきた真っ白なマキシ丈コートとか、武器屋のシーンの白ジャケットにラメっぽいカットソーとか、廊下で一騎討ちの時のゼブラシャツなどなど、どれも絶妙でした。イ・ジョンジェさんだから着こなせている気がします。特にトゥクトゥクでの登場シーンでは観ていて本当にニヤけてしまいました。

出色はユイを演じたパク・ジョンミンさん。腹筋の割れてないちょっとタポっとしたお腹もよかったし、観客に結末のその後を想像させるキャラクターとして余韻を残しています。

日本語のタイトルでは“誰を”悪から救って欲しいのかがわかりませんが、原題(英題)は"Deliver Us from Evil"。我々を、なんですね。
悪とはなにか、救いとはなにか、というようなことをちょっと考えてみるのもいいかもしれません。(もちろん、考えなくてもいい)





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