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小説『非色』(有吉佐和子著)を読んで

友人の勧めで読みました。これは学生の読むべき本リスト加えるべき、という話になりました📚アメリカの人種差別の話なのですが、真に迫っていて大変面白いです。纏まりが無いですが、感想を走り書きします。

■ニューヨークでの移民差別を扱う映画について
私は今までに以下の映画から、プエルトリコ系移民を中心に、ニューヨークで移民が最底辺の暮らしをしているのを垣間見たことがある。
・ウェストサイドストーリー
・ワシントンハイツ(途中まで)
しかし前知識がなく、プエルトリコ系移民がどうしてそんなに差別されるのかピンと来ずにいたけど、非色を読んでたら分かってきた。以下の記述からも分かる通り、プエルトリコ系はとにかく貧しいイメージがあったそう。あとすぐナイフを出すとかいう危険なイメージもあったみたいですね。現代ではどうなんだろう。
「プエルトリコというのは、なんでもキューバの隣のハイチやドミニカのもう一つ隣にある島の名前であるらしい。(中略) 小さな島に二百万からの人間が犇めきその人口密度は日本以上だと言うから、ハリケーンの吹きまくる住みにくい国で日本よりもっと苦しい生活があるのだろう。(中略) 彼らは貧乏神に取り憑かれた生活から脱出し、あるいは放り出されて、何かいいことがあるのではないかとニューヨークにやってくるようになった。」(『非色』p.205)

■ニューヨークの人種ごとの住み分けについて
友人曰く、「NY行こうとして地球の歩き方見てた時、なんでこんなに人種でエリア分けしてるのかな、と全然ピンとこなかった。ハーレム、チャイナタウンはなんとなく分かっても、イタリア系エリアはチープとか?書いてあってなぜこんなに分かれているか疑問に思った。差別のレイヤー(階級?)があるんだね…ニューヨークにはJewishやAmishもいるね。人種のサラダボウルだね」とのこと。

■戦争花嫁について
以前BSで特集をやっていた気がする。あまり聞いたことのない言葉だけど、『非色』を読んで人生で初めて、米軍と結婚した日本人女性たちの人生に思いを馳せた。

■主人公が逞しい
笑子(えみこ)は直情的すぎるが、嘘がなくて良い。意外とお人好しなところも。逞しい人が主人公な小説って読み進め易い。お嬢さん気質の麗子さんというのが友人として出てくるのだが、この人の物語だったら哀しい(ネタバレになるので詳しく言わないが)。最後も笑子は「私はニグロだ」と決然と述べて終わるのが良い。いいもの読んだなーって思えるエンディングである。生命力のある人って見ていると気持ちがいい。
※言葉遣いがポリティカルコレクトネスに則っていないものの、時代背景を鑑み、原文のまま使用しているそうです。ちなみにこの小説は言葉遣いの問題から、廃刊になっていたとのこと。数年前に復刊したらしいです。

■長女も逞しい
長女メアリイは、働きに出ている母親の代わりに下の兄弟(次女、三女、長男)の子守りをする。その姿が立派すぎる。しかし無理させ過ぎて、後々精神的に脆くなったりしないか少しだけ心配。あとだらしない叔父のシモンを叱責する姿が厳し過ぎてちょっと心配。ESTJかな。
ただこの一家の子供たちは小説内ではまだ幼く(年長のメアリイが小学生くらい)、全員がこれから思春期を迎える。思春期って一番子どもの心が感じやすい時期じゃないだろうか?貧しさや差別について、どう感じるようになるのだろう。

■タイトル『非色』について(差別とは)
非色の意味は2つあると思った。
・白人と黒人以外の人種について語るという意味(プエルトリコ、ユダヤ、イタリア、日本)(後書きにあるように、本作では日本人についての差別は記載が少なかった。戦争花嫁はメインテーマだったが、例えば日本人男性が差別受けてる描写は無かった)
・差別の根源は肌の色ではなく、財力&教養のあるなしがその人の置かれる立場を作るという意味
この点は後日もう少し掘り下げたいです。

■黒人夫トムの無気力について
笑子の夫トムは根はいい人で、米軍として日本駐在していた時には、笑子の目から見て自信を持って輝いていた。その様子から見ても、勉強すれば能力もある程度までありそう。なのに米軍の役務を解かれて帰ったニューヨークではすっかり黒人差別の前に打ちのめされてしまって、無気力に生活しているのを見るのが辛かった。他に職が見つからず、看護師として夜勤で働くこととなった。
 
長くなってしまったので…総括はまた後日書きたいと思います。

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