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カップヌードル 「完全栄養食」へ変身挑む

 日清食品ホールディングスの強みは、創業家トップが前任者の仕事を踏襲しないことに尽きる。

 2代目の安藤宏基社長は「カップヌードルをぶっつぶす」と宣言し、父で創業者の百福氏と言い争った。

 3代目の安藤徳隆副社長も2代目と言い合うことを恐れない。もちろん日清食品、あるいはカップヌードルのブランド価値をさらに超えていくというベクトルが一致してのことだが。

 そんなカップヌードルも誕生から50年。3代目が中心となり、開発を進めているのが「罪悪感なきカップヌードル」だ。

 2015年に事業会社の日清食品の社長に就いた徳隆氏は「ラーメン屋の社長になったつもりはない」として「Beyond Instant Foods」を掲げた。

 ジャンクフードなどを食べ過ぎると、栄養のバランスを欠いたり体重が増えたりして、罪悪感を覚えてしまう。

 逆に健康ばかり気にしても、人生の楽しみが奪われる。

 1970年代にバラエティー番組「ヤングおー!おー!」のスポンサーになって以来、「ハッピー?」を売り物にしてきた日清食品としては見過ごすわけにはいかない。

 「食欲に寄り添った健康食」。3代目の言い回しは二律背反的だ。

 すなわち今の生活行動を変えないどころか、むしろ「インスタント食品を食べていれば大丈夫」というフードビジネスモデルにシフトすることを最大のミッションに置く。

 これまでのカップヌードルは食べ過ぎてはいけないと言われてきたが、今後は食べても食べても身体の健康と安全を守るどころか、増進さえする理想のカップヌードルを作ろうというわけだ。

 それを実現するために研究しているのが「完全栄養食」だ。

 「見た目やおいしさはそのままに、カロリーや塩分、糖質、脂質などがコントロールされ、必要な栄養素を全て満たす食」を意味する。

 すでにとんかつ定食、オムライス、パスタなど300種類のメニューでできあがっている。

 揚げる代わりに油をシャワー状に吹き付けるといった、インスタントラーメンなどで培った技術を応用。

 カレーライスなら通常は栄養素33項目のうち17項目で過不足があるが、完全栄養食では全て適正値に収める。

 グループ社員を対象にした臨床試験では、体重、内臓脂肪面積、血圧、腹囲といった数値に改善が見られたという。

 もっともカップヌードルの場合、なかなか完全栄養食でのコピーは難しく、3~5年程度かかる見通しだ。

 最終的に同社のインスタント食品を完全栄養食に切り替え、技術を外部にも提供するという。「当社のコア技術が『インテル入ってる』のようになれれば」と3代目は語る。

 飢餓の時代に誕生したインスタント食品は簡単に多くの人のおなかを満たしてきた。

 今は飽食の時代。即席では実現できない安藤家3代にわたるカップヌードル革命は「まんぷく」(朝ドラか!)から「スマート」なフードライフへの蓋を開けるだろうか。




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