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定年後も働く人に再就職や継続雇用でもらえるかもしれない「給付金」や「手当」3選

対象者は「申請」が必要
定年後も働き続ける高齢者は増えています。
令和6年版高齢社会白書によると、65歳以上の就業者数は20年連続で前年を上回っています。
少子高齢化により年金受給者を支える現役世代の減少が深刻化する中で、国は高齢者の就労を促進するための支援を行っています。
そこで今回、高齢者が働くことで「給付金」や「手当」を受け取れる制度を3つご紹介します。

働く高齢者が受け取れる給付金
高齢者が働き続ける、または再就職を希望した場合に受け取れる給付金・手当には次の3つがあります。
⒈高年齢雇用継続給付
⒉高年齢求職者給付金
⒊再就職手当
いずれも雇用保険の制度となります。
「高年齢雇用継続給付」は、60歳から65歳未満の仕事を続けて賃金を得ている人が対象、「高年齢求職者給付金」は、失業して次の仕事を探している65歳以上の人が対象、「再就職手当」は失業して再就職をした65歳未満の人が対象となります。

高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付は、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の人が60歳以降も仕事をして、賃金が60歳時の75%未満であった場合に、最高で賃金の15%に相当する額が支給される制度です。
高年齢雇用継続給付には、雇用保険の基本手当を受給しないで60歳以後も務めている人が受け取れる「高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当を受給して60歳以後に再就職し、支給残日数が100日以上ある人が受け取れる「高年齢再就職給付金」の二つがあります。
支給要件と支給額は同じですが、支給期間が異なります。

高年齢雇用継続給付の概要
<支給要件>
⑴60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
⑵雇用保険の被保険者期間が通算して5年以上あること
⑶原則として60歳到達時の賃金に比べて75%未満の賃金で働いていること

<支給額>
⑴賃金の低下率61%以下:賃金の15%支給
⑵賃金の低下率61%超75%未満:賃金の0%超~15%未満支給
⑶賃金の低下率75%以上:不支給

ただし、2025年4月1日から支給額が以下のように変わります。
賃金の低下率64%以下:賃金の10%支給
賃金の低下率64%超75%未満:賃金の0%超~10%未満支給
賃金の低下率75%以上:不支給

低下率64%以下で賃金の10%に相当する額が支給額の上限となります。

<支給期間>
●高年齢雇用継続基本給付金
60歳に達した月から65歳に達する月まで
●高年齢再就職給付金
基本手当の支給残日数が
100日以上200日未満・・・1年間(最長65歳)

200日以上・・・2年間(最長65歳)

【写真全4枚】1枚目/高年齢雇用継続給付の概要、2枚目/高年齢求職者給付金について

出所:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」をもとに作成

高年齢雇用継続給付の注意点
特別支給の老齢厚生年金など、65歳になるまでの老齢年金を受給している人が高年齢雇用継続給付を受けられる場合は、在職による年金の支給停止に加えて年金の一部が支給停止されます。
支給停止される年金額は最高で賃金(標準報酬月額)の6%相当です。

高年齢雇用継続給付の支給額をシミュレーション
高年齢雇用継続給付金がいくらになるのかシミュレーションしてみましょう。
<Aさんの例・ケース1>
60歳時点の賃金:50万円
60歳以後の賃金:30万円
60歳以後の賃金が60歳時点の賃金の61%未満であるため、賃金の15%が高年齢雇用継続給付金として支給されます。
30万円×15%=4万5000円
Aさんは高年齢雇用継続給付金を4万5000円受け取ることができます。

<Aさんの例・ケース2>
次に、Aさんが64歳から特別支給の老齢厚生年金として年金を月10万円受給し、さらにその年の年間ボーナスが132万円だった場合をシミュレーションしてみましょう。
*在職老齢年金による支給停止
在職老齢年金は、総報酬月額相当額(月給とボーナスを含めた報酬の月額)と基本月額(年金の月額)の合計が50万円を超えると、超えた金額の1/2の額の年金が支給停止となります。
総報酬月額相当額は30万円+132万円÷12で41万円となります。

(41万円+10万円-50万円)×1/2=5000円

在職老齢年金によって5000円支給停止となります。

*高年齢雇用継続給付による支給停止
30万円(標準報酬月額)×6%=1万8000円

高年齢雇用継続給付によって1万8000円支給停止となります。
10万円-5000円-1万8000円=7万7000円
よって、Aさんの年金の月額は7万7000円となります。
賃金30万円+高年齢雇用継続給付金4万5000円+老齢厚生年金7万7000円=42万2000円

ケース2のAさんの月の収入(賃金+年金)は42万2000円となります。

高年齢求職者給付金
高年齢求職者給付金は、65歳以上の雇用保険の被保険者が離職して、失業の状態にあるときに支給されます。
失業の状態とは、「就職したいという積極的な意思といつでも就職ができる能力・環境があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態」をいいます。
<支給要件>
原則として、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あること
<支給額>
被保険者期間に応じた支給日数分の基本手当相当額が一括で支給されます。

被保険者であった期間
1年未満:30日分の基本手当相当額
1年以上:50日分基本手当相当額

高年齢求職者給付金の注意点
高年齢求職者給付金は、ハローワークに求職の申し込みを行った日から7日間の待期期間を経たあとに支給されます。
また、自己都合で退職した場合はさらに2か月(または3か月)の給付制限があり、それを経過したあとに支給されます。
待期期間および給付制限後に、失業の状態が確認された日が失業認定日となります。

ここで気を付けたいのが、高年齢求職者給付金の支給が受けられる期限(受給期限)は、離職日の翌日から1年という決まりがあることです。

そのため、失業認定日から受給期限の末日までの日数が支給日数に満たないときは、その日数分しか支給されません。求職申し込みの手続きが遅れると、このような事態になることがあるので、早めに手続きを行いましょう。

高年齢求職者給付金について

出所:厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」

再就職手当
再就職手当は、基本手当の受給資格がある人が安定した職に就いた場合に、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給される手当です。
早期に再就職をすると給付率が高くなります。

基本手当は65歳未満の常用労働者が失業したときに支給される手当であるため、再就職手当は65歳未満の者でないと受給できません。
65歳以上の者が失業した場合は、前項の「高年齢求職者給付金」が支給されます。
<支給要件>
基本手当の所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職したこと
1年を超えて勤務することが確実であると認められること

<支給額>
所定給付日数に対する支給残日数の割合に応じて以下の金額が一時金で支給されます。
3分の1以上・・・基本手当日額×支給残日数の60%
3分の2以上・・・基本手当日額×支給残日数の70%

再就職手当の額

出所:厚生労働省「再就職手当のご案内」

再就職手当と高年齢再就職給付金の両方を受けられる場合
65歳未満の者が一定以上の基本手当の支給日数を残して就職した場合に受けられる手当には、再就職手当のほかに、項目の1番目に紹介した「高年齢再就職給付金」もあります。
再就職手当と高年齢再就職給付金の両方を受けられる場合は、本人がいずれか一方を選択する必要があります。(併給はできません)
選択にあたっては以下の特徴を理解しておくといいでしょう。

再就職手当・高年齢再就職給付金の違い

出所:厚生労働省「第10章 高年齢雇用継続給付について」をもとに作成

最後に
今回ご紹介した3つの制度を端的に述べると、
⒈「高年齢雇用継続給付」は、60歳以降に賃金が下がった場合の生活支援
⒉「高年齢求職者給付金」は失業中の高齢者の生活保障
⒊「再就職手当」は再就職を早期に決めた人への支援金となります。

これら⒈から⒊の制度を活用して、高齢者が働き続けやすくすることは、老後の安定した生活の実現に少しでも繋がることだと思います。
ですので、申請しなければ利用できないので、申請をして頂ければと思います。

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