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自宅担保に老後資金

 自宅を担保に融資を受ける「リバースモーゲージ(意味:自宅を担保にした融資制度の一種)」に注目する人が増えている。
 長寿化でリタイア後の生活が長くなるなか、自宅に住み続けながら一定の老後資金を確保できるためだ。
 商品の多様化に伴って、利用のハードルが下がった面もある。
ただし資金の使い道に制限があったり、金利変動のリスクがあったりするなど注意すべきことも多い。
自宅の価値を「現金化」
 「年金生活を控えて住宅費の負担を減らしたかった」。
 都内に住む60代前半の男性は今年3月、残っていた住宅ローン約1100万円を一括返済した。
 元手となったのはリバースモーゲージ(意味:自宅を担保にした融資制度の一種)で借り入れた資金。
 男性は今後、亡くなるまで毎月約2万7000円の利息を払う必要はあるが、完済前は月十数万円を払っていたのに比べて負担は約5分の1になった。
 リバースモーゲージ(意味:自宅を担保にした融資制度の一種)の仕組みをみてみよう。

 お金を借りるにはまず利用者が自宅を担保に差し入れ、金融機関は担保評価額の一定割合を融資限度額として決める。
 利用者は資金が必要になったとき限度額内で一定の融資を受けたり、限度額を一括で借りたりする。
 生きている間は自宅に住みながら毎月の利息のみを払い、死亡時に相続人が家を売却するなどして現金で元本を返すのが一般的だ。

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 利用する人は広がっている。
 大手の東京スター銀行の融資残高は2020年12月末時点で1271億円と、5年前に比べ約90%増となった。
 背景には老後資金への不安が根強いことがある。
 公的年金は原則として65歳から受け取ることができるが、高齢世帯では公的年金だけでは生活費を賄えず、貯蓄を取り崩す傾向があるとされる。
 一方、家計の資産の内訳をみると2019年末で住宅・土地など非金融資産が占める比率は約38%と現預金を上回っている。

 「自宅の資産価値を現金化することで、老後の資金計画を立てやすくなる」と指摘する。
市場は右肩上がりで拡大
 リバースモーゲージ(意味:自宅を担保にした融資制度の一種)を扱う金融機関が増え、商品が多様化していることも利用を後押しする。

 楽天銀行は今年1月、ネット銀行で初めて本格参入した。

 住宅金融支援機構が民間金融機関と提携する「リ・バース60」は17年に「ノンリコース型」というタイプを導入し、融資拡大に弾みがついた。

 20年度の融資実行額は約141億円と17年度の約16倍になった。

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 リバースモーゲージ(意味:自宅を担保にした融資制度の一種)は契約者が亡くなった時点で住宅価格が大幅に下がっていると、自宅を売っても元本を完済できない恐れがある。
 こうしたケースでは相続人が返済を求められることが多いが、ノンリコース型は担保の売却代金を超える返済義務がない点が特徴だ。
リ・バース60を扱う金融機関は機構に保険料を払っており、債務が残っても機構から保険金を受け取れるため負担がない。
 利用者が生前に金利を払うことを不要にした商品も増えている。
 「利息元加方式」と呼ばれ、金利は死後に元本に上乗せして支払う。

 みずほ銀行が2013年から手掛けたのに続き、東京スター銀行が2020年に70歳以上84歳以下の人を対象として参入した。
 家の相続で親の意識が変化していることも見逃せない。
 かつては自分の住む家を子どもに資産として残すことを優先するのが一般的だったが、最近は子どもが親と離れて住み、自分の家を持つことは少なくない。
 「不動産ではなく、現金を子どもに残したいという人も目立つ」と三井不動産リアルティでは話す。
 リバースモーゲージ(意味:自宅を担保にした融資制度の一種)では自宅を残さないことや売却手続きの負担がかかることをあらかじめ子どもに説明するよう助言しているという。
金利上昇なら負担増
 実際にリバースモーゲージ(意味:自宅を担保にした融資制度の一種)を利用するなら、どんな点に気を付ければいいだろうか。
 まず押さえたいのが資金の使途だ。民間金融機関が独自に展開する商品は使い道が一般に幅広く、生活に関する支出なら制限はない。
 契約時に55歳以上84歳以下を対象とする東京スター銀行の利用者調査によると、最も多い目的は生活費や旅行費用など「余裕資金」(29%)で、「住宅ローン以外の借り入れ返済」(20%)、医療・介護など「万一の備え」(16%)と続く。
 一方、リ・バース60は使途が建て替えやリフォーム、住宅ローンの借り換えなど住宅費用に限られ、借りた金額は即座に支払いに充てる必要がある。
 ただ「住宅資金をリ・バース60で賄えば、その分の現金を手元に残せるため老後資金に余裕ができる」。

 リ・バース60の細かい融資条件は金融機関によって異なるが、60歳以上の人が利用する場合、一般的な住宅は担保評価額の50~60%以下で金融機関が決める上限額まで借りられる。
 機構の調査によると利用者の年齢は21年1~3月の平均69歳で、53%が年金受給者だった。
 融資額の平均は1415万円で、毎月の金利返済は同3万円となっている。

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 金利リスクにも留意したい。
 リバースモーゲージ(意味:自宅を担保にした融資制度の一種)の金利は基本的に変動金利で、一般に年3%前後と住宅ローンより高い。
 「金利が上昇すれば、支払い負担が増える」。
 利息の返済が長期間になると、利息の支払総額も膨らむ。
 老後資金の計画は長く働いたり、ある程度の資産運用をしたりするなど幅広く考えよう。
 生活費など支出を見直すことも大切だ。
 「リバースモーゲージ(意味:自宅を担保にした融資制度の一種)を利用する必要があるかどうか慎重に考えるべきだ」と話している。

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