見出し画像

消えてしま、う

 意味もなく増えてゆくポストカードと、冷蔵庫に貼りついたマグネットたちはふとした日に起こる悲しい夜に寄り添ってくれることがある。詩や小説だって同じだ。「。」で繋がれた文章が読めなくて、仕方なく詩を開いたというのに今度は一文字一文字が重たくて、手が震えてしまった。わたしは、一体どうしたというのか。
 ここに、長い文章を書くつもりはない。キーボードを叩く指の動きがぎこちなくて、必死に親の手に触れようとする赤ん坊みたいだ。決して綺麗とは言えないわたしの手。たくさん料理をして、たくさん手を繋いで、汚れた手。文章を紡ぐには向いていない手。まっすぐ、鋭く、相手を指すことのできなかった指。その手と指でわたしはこのぎこちない文章を書いています。詩のような小説のような脆く不安定な文章。明日になれば月と一緒に消えてしまえばいいのに。消えるのはわたしじゃなくて、この文章だよ。きちんと書いておかないと、わたしまで消えてしまいそうだからね。

いいなと思ったら応援しよう!