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名前を覚える#日本語教師

こんにちは。日本語教師のChuncoです。今日は『名前』について書きます。

名前を覚えるのは人間関係の基本

自分の名前を覚えていて、それを呼んでくれるということは、まことに気分のいいもので、つまらぬお世辞よりもよほど効果がある。逆に、相手の名前を忘れたり、間違えて書いたりすると、厄介なことになる。_『人を動かす』D.カーネギー

私自身が日本語教師養成講座に通い始めたとき、はじめての授業を担当していたS先生から私はたくさんのことを学びました。その一つが”名前を覚えることの効果”です。

S先生が受け持つ1週間に1回の授業、その第2回目。教室に入ると「Chuncoさん、こんにちは」と先生に声をかけられて、びっくりしました。「もう顔と名前を覚えたの?」という驚きです。その養成講座では授業の振替や、校舎変更が容易なことから、一クラスのメンバーはかなり入れ替わりがあります。クラスには20人ほどの学生。養成講座の講師はそのクラスだけを教えているわけではなく、自分も日本語教師をしていたり、他のクラスを持っていたりするので、相手にしている学生はもっとたくさんいます。しかし、先生は1回で名前と顔を覚えていたのです。

そして、名前を呼ばれたとき、驚く気持ちとともに、”先生に認識されている”という安心感を感じました。そのことから、自分が教師になったときはまず学生の名前を覚えなければならない、と強く感じました。

正しい発音で呼ぶ

人の名前は、なかなか覚えにくいものだ。発音しにくい名前だと、特にそうだ。たいていの人は、覚える努力もしないでそのまま忘れるか、ニックネームで間にあわせたりする。_『人を動かす』D.カーネギー

上の引用には続きの話として、難しい発音の名前を持つ人物が正しい発音で呼ばれて涙を流した、というエピソードが紹介されています。

これと似たようなことがありました。ある教師の話ですが、その先生はあるクラスで似ているベトナム人の名前をいつでも正しく呼び分けることができました。当の学生だけでなく、周りの学生も感動し、クラスの学生みながその先生のファンとなりました。その先生が辞めると決まったとき、自分も学校を辞めると言い出した学生がいた程です。

ベトナム人の学生にとって、日本人教師が自分たちの名前を正しく呼べることは特別なこと。たいてい日本人の発音が悪くても、これは自分の名前なのだなと慣れて容認してくれています。しかしそれに甘えてはいけないと思うのです。

私は学生の名前をカタカナで書かないで、ベトナム語表記のまま呼べるように練習しています。なぜなら、ベトナム語は日本語より母音も子音も多く、声調によっても意味が変わってしまい、それはカタカナでは表現できないからです。私もクラスに名前が似ている学生がいるときは、いまだに上手く呼び分けられなくてアイコンタクトや手で指して合図しているので申し訳ないと感じています。

日本国内の多国籍クラスであれば、様々な国の学生がいるので正しい発音を覚えることはとても大変な事だと思います。しかし、教師の努力は学生に伝わりますし、名前を正しく呼べたらきっと学生の信頼を得られるでしょう。

名前を覚える方法

もし今この文を読んで「名前が覚えられない!」と困っている方がいるなら、「大丈夫、慣れますよ」と伝えたいです。

私は日本人同士でさえ、名前を覚えることが苦手でした。聞いたばかりの名前が飛んでしまって、困ったことが何度もあります。

先の話のS先生に、一度で顔と名前を覚えているのか聞いてみたことがあります。先生は「そうだ」という答えとともに「大丈夫、慣れますよ」とおっしゃっていました。その答えを聞いたとき、私は「それは先生の物覚えがいいからでしょう?」と疑っていました。

実際、私が日本語教師になってはじめて教えたクラスの学生を、今私は全く覚えていません。正直、ベトナム人の顔がほとんど同じに見えていました。初心者のため授業をこなすことだけでもいっぱいいっぱいで名前を覚えることもできず、あっという間に担当期間が終わってしまいました。

その反省に立って、私は紙に自分のための座席表を作るようにしました。座席表には学生の名前と見た目の特徴を書きます。ときには簡単な似顔絵も。座る位置は変わることもありますが、顔をしっかり覚えれば問題ありません。これは学生が問題を解いている隙や、休み時間に手早く済ませなければなりません。そして授業後に名簿を見ながら顔を反芻します。

教える際は授業前にまた名簿と自作の座席表を照らしながら顔を思い出します。点呼をとって出席確認する際に、記憶に違いがないかすり合わせます。

座席表を大きめの付箋紙に書くのもオススメです。教案に貼っておけば、覚えられていなくてもチラチラ見ることもできます。こうすれば、学生からは名前を覚えていると認識されるので、まだ初心者で名前を覚える余裕がない人には使える手です。

私は座席表を書く方法で、今では20人くらいのクラスなら二度くらいまででだいたい覚えられるようになりました。できなかった私ができるようになったのですから、自信を持って「慣れたら覚えられるようになる」と言えます。

努力で信頼が得られる

授業が上手になるためには経験が必要ですが、名前を覚えることは努力でどうにでもできることです。日本語教師になったばかりで教え方に自信を持てない人、学生からいい評価がもらえない人には、まず名前を覚えて正しく発音できるようになってほしいです。

そのことだけで教師の良し悪しが決まるわけではありませんが、少なくとも信頼される教師になるためには必要なことだと思うからです。

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