日々アップデート#日本語教師
先日、新しい仕事の関係で国際交流基金が開催する『まるごと』(←日本語のテキスト)のシンポジウムに参加してきました。今日は『まるごと』の内容についてというより、そこで感じたことをメインに書きます。
比較的新しい種類のテキストである『まるごと』。ベトナムでは使用している教育機関が少ないので、今後の普及のためにもこれまでの使用実績について発表を聞くという内容でしたが、ただテキスト通りに授業を勧めるだけじゃなく、いかに学習者を実践的な日本語の使用につなげていくか、という工夫について話が聞けました。
わたしはこのようなアカデミックな集まりに参加するのははじめてだったのですが、それは今まで視野が狭かったことを表しているなと反省しました。
たとえば『まるごと』はコミュニケーション能力を重視していて、”教師が教えない”授業を目指しています。おそらくわたしを含めた日本語教師のほとんどが、自分自身そういった授業スタイルで学習した経験がないと思います。
学校教育での英語学習をイメージすればわかりやすいですが、日本語の授業もうっかりすると”教師が説明するばかりの授業”になってしまいます。教師自身が”教えられる”ことに慣れてしまっているので、当然に自分も”教える”授業を作ってしまうのです。
でも『まるごと』が提唱する新しい授業のスタイルはそうじゃありません。”授業”というものについて”教師は教える””学生は習う”自分の固定概念をやぶらなければならない。
ここで言いたいのは「『まるごと』の理念がすばらしいかったので、みんなで使いましょう」ということではなく、「新しい知識・方法を柔軟に取り入れる姿勢を常に持たなければならない」ということです。
対象とする学生によって、異なる学習目的を持っていて、目標とするレベル・能力も違います。教師はそれにあわせて最適な学習方法を選択しなければなりません。
もちろん学校単位・クラス単位と対象者がグループの場合は、全員にとって最適な方法を採ることは難しいです。でも「一つの方法しか知らないからそのやり方しかやらない」ことと「いろいろな方法から最善の方法を選ぶ」ことは大きく違います。
常に新しい指導方法が研究されています。学校内で授業見学や教員の勉強会をやって知識を増やすように、外には自分の実践経験だけで得られるより遥かに多くの情報があります。それを積極的に得ようとしないで、自分の経験だけに頼ってしまったのは大きな反省点でした。
教師が豊富な知識を持っていれば、学校で使うテキストが決まっていても、自分の授業でいろんな方法から使える部分だけ取り入れることもできます。日本語能力の試験合格を目指す学生に対して、自習教材・方法をアドバイスすることもできます。
もし本当に必要があれば学校の使用テキストを変更することも、マネージャーだったわたしの立場なら可能でしたし、わたしが勉強不足だとわたしに指導されている若手教師たちの成長にも影響がでます。それほどに自分が勉強することは重い責任だったのだと今更ながらに気がつきました。
これと似た話がオンライン授業に対する姿勢でした。
ベトナムでは2月初旬に旧正月が明けても授業を再開することができませんでした。実は2月末・3月初旬と何度か学校再開の予定になったのに、二転三転し、結局5月中頃まで休校が続きました。各学校は”社会的隔離が続くと見込んでオンラインに切り替えるか””学校再開を期待して休校のまま待つか”いろいろな選択肢がありました。
わたしは3月末まで日本語学校に在籍していましたが、その時点でも「Zoomって何…?使い方わからないんだけど」「授業のビデオを作るってどうやって?パソコン苦手だから無理…」という教師が少なからずいました。
学生のことを考えれば何か月も勉強できない状態が続くことは避けなければなりません。せっかく今までがんばってきたのにモチベーションをなくして、こんなところで日本語をあきらめる人がいないように学生の気持ちをつなぎとめる必要もありました。それを考えたら”自分がわからないことはやらない”という発言がいかに無責任な態度なのかわかるはずです。今このときに自ら学べない教師が学生にいったい何を教えるというのだろう。
わたしは学生にとって「先生」です。わたしはいつでも”先に立って生きていく”存在でありたいです。経験を積み重ねながらも、常に新鮮さを保つこと。アップデートすることをやめるときがきたら、それはわたしが教師じゃなくなるとき。10年後もそう言える自分であるように。
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今日の見出し写真はベトナム中部の町Da Nang(ダナン)にあるテーマパークBa Na Hills(バーナーヒルズ)です。この、巨大な手に支えられたデザインのゴールデンブリッジは2018年にできました。
2015年の年末に行ったときはなかったのに、いつのまにかできていてびっくり。
もう一枚の写真を見てわかるとおり、テーマパーク内にクレーンが立ちまくって常に何か作っている状態。アップデートし続けてるというより、いつになっても完成しないと言ったほうが正しいか?