正月を食べますか#ベトナム#日本語教師
日本では年が明けて半月ほどですが、ベトナムでは旧正月を祝うので、新年はあと1ヶ月ほど先です。
旧正月はベトナム語でTết(テト)と呼ばれています。日本人にとっての正月はちょっとした連休程度の扱いですが、ベトナム人にとってテトは年に一回の一大行事です。
学生・会社員に関わらず、多くの人が田舎へ帰るので、テトの前後1~2週間から学校や会社で休みをとることが増えます。田舎の家族へのお土産とか帰省の費用に使われるためなのか、一般的なベトナムの会社ではテト前にボーナスがあり、テト前はみんながうきうきした様子になります。
最近はテトが近くなり、「テトはどこへ行くの?」「テトに何をするの?」という話がとびかっているのですが、日本語を勉強しはじめたばかりの学生から「先生はベトナムでテトを食べますか?」と聞かれました。
「食べます」の意味を勘違いしているのかと思い、食べるジェスチャーをしながら「食べます?」と聞いても、学生はうんうんとうなずくので本当に「食べますか」と聞きたい様子。
もう一度「え?正月を食べますか?」と聞いたところで、学生のほうも「あれ?おかしい」と気づいたようで友達と何やら相談し始めました。
ベトナム語のやりとりを聞いてようやくわかったのが、ベトナム語の表現をそのまま日本語に当てはめて誤用してしまったようです。
学生が言いたかったのは「Ăn Tết(アン テト)」
Ăn(アン)は「食べる」の意味です。正月にいろいろ食べて過ごすことから、「Ăn Tết(アン テト)」で「正月を過ごす」という意味になるそうです。だから、学生が聞きたかったことは「ベトナムで正月を過ごしますか?(日本へ帰りませんか?)」ということでした。
「Ăn Tết(アン テト)」をそのまま訳すと「正月を食べます」になりますが、日本語の「食べる」に「過ごす」のニュアンスは含まれませんし、そのような感覚の文化背景もありません。それで、わたしには理解できない日本語が生まれてしまったわけです。
学生たちとわたしと、お互いに何が起きたのか理解できて、「なるほどー!」「おもしろいな~」となりました。
ベトナム語の単語ひとつひとつをそのまま日本語にすることで変な日本語になるというのはほかにもあります。
「Chúc ngủ ngon(チュック グー ゴン)」は「おやすみなさい」の意味で使いますが、ngủ(グー)は「寝る」、ngon(ゴン)は「おいしい」の意味なので、「おいしい寝ます」とまちがえたりします。
ほかにも、日本語としておかしいわけではないですが、使う場面に違和感を感じる例としては、 日常的な挨拶の「もうご飯を食べましたか?」があります。
いつも思うことですが、言語を学ぶことはその言葉を話す土地の文化を学ぶことです。
さらには、言語を教えることは自分の文化と他者の文化を交流させることだと言えます。そこには教師である自分にとっても発見があります。
人の役に立つ仕事だからやりがいが持てるというだけでなく、ただ自分の好奇心を刺激してくれるという点で、おもしろい仕事だなと再認識したのでした。
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今日の見出し写真は、数年前に見た旧正月のカウントダウン花火です。
ところで、日本で「旧正月」の英語を「Chinese New Year」と習いましたが、ベトナムのテトを「Chinese New Year」と言うとすぐさま「Lunar New Year」と直されました。(2回やらかした)「旧暦」も「Chinese Calendar」ではなく、「Lunar Calendar」だそうです。そこはゼッタイ。