勉強が好きな先生と勉強が嫌いな先生#日本語教師

これは日本語教師に限った話じゃないでしょうが、教師をざっくり二種類に分けるとしたら『勉強が好きで教師になった人』と『勉強が嫌いで教師になった人』。まあ、私が出会った教師のみなさんの数というと、20人そこそこなもんですから、あくまで主観なんですけど。

勉強が好きな教師の強み

『勉強が好きで教師になった人』はもともとの性格が真面目でコツコツやるタイプの人で『わかりやすく正しい知識を教える』ことを重視している人が多いようです。またプラスアルファの知識を教えたり、勉強方法や参考書などをアドバイスもよくしていて、成績のいい学生からよく支持されています。また文法比較や試験対策が多くなる中級・上級の授業を得意とする人が多いです。

私は子供の頃から読書が好きで、国語や英語が得意だったので、日本語教師になったときも、勉強面では困ることがありませんでした。しかし、教師になりたての頃、私の授業は教師が説明ばかりする硬くてつまらない授業でした。説明すればするほど、学生たちが難しい顔をしていく…学生の顔を見るのが怖かったです。時間をかけて準備し、説明を工夫してもあまり効果が出ず、何がまずいのかわからなかったとき、ほかの教師の授業を見学させてもらってその理由がはっきりしました。

勉強が嫌いな教師の強み

『勉強が嫌いで教師になった人』は、『いかに楽しい授業にするか』をよく考えていて、だいたいが元気で明るく声の大きい人が多いです。そんな教師の話を聞くと、そろって「自分は勉強が嫌いだったが面白い先生がいて影響を受けたので自分もそうなりたい」と言っています。日本語教育のためには教師自身が勉強を続けなければならないのですが、文法比較に頭を悩ませていたり、語彙の意味があまり正しく認識できてない場合があります。

このように書くと、勉強が好きじゃない人は教師になれないのか、ということになりそうですが、そうとも言えないのです。

私が自分の方法につまずいて、勉強嫌いなある教師の授業を見学させてもらったときのこと。授業前、その人は教案がまとまらず参考書片手に頭を抱えていました。ところが、いざ授業となるとシンプルに要点がまとめられ雰囲気も明るく学生たちが真剣に授業を聞いているのです。教師自信が難しいことを頑張って理解した結果、小難しい説明を捨ててわかりやすくそぎ落とされた授業になっていました。

初級の教え方はシンプルに

特に、初級クラスを日本人が直接法(日本語だけを使って感覚的に日本語を教える方法)で教える場合、この強みが発揮されます。直接法で教える場合は長々と文法用語を使って説明しても学生に伝わらず、使う場面がイメージしやすい例をたくさん挙げることで学生が自ずと理解できるようにしたほうがいいからです。

勉強が好きな教師は、つい学生に知識を与えたくて複雑な説明をしがちになります。そこをぐっと抑え、まずはシンプルに。そして学生が疑問を持ったり、理解がよくできた場面には説明を追加すると幅広い学生が満足してくれる授業になります。

教師の個性

学校というのは多くの学生を数人の教師で分担して教えます。私の勤める学校ではチームティーチングを採用しているので、あるクラスを自分が教えるのは1週間に1回だけです。

それにはいろいろな理由があるのですが、一つには一人の教師が教えると偏りが大きくなるというのがあります。その偏りというのも多くの要素が含まれますが、例えば知識の深さ(教師の知識が浅かったら学生の理解も下がる)、学生との相性(嫌いな教師に教わり続けたらモチベーションが下がる)、話し方や発音(多くの日本人の話し方や発音に慣れたほうがいい)などです。

だから、同じ学校で働く教師には勉強が好きな人も嫌いな人もいた方がバランスがよくなります。

勉強嫌いの教師が自分で勉強するのにつまづいてしまっても、勉強が好きな教師に質問できます。反対に、勉強が好きな教師が真面目すぎるなら、勉強が嫌いな教師のゲーム感覚な授業や学生との接し方を参考すればいいのです。

私は先の勉強嫌いな教師があまりにいつでもトンチンカンなことを言っているので、正直「なぜこの人は日本語が下手なのに日本語教師になったのだろう」と思っていました。

しかし「勉強が好きで得意」なことと「学生にとっていい教え方ができる」というのはまったく別物でした。

今、目指すのは『勉強が好きな人にはとことん知識欲を満たしてあげられて、勉強が嫌いな人にはわかる喜びを知ってもらえる教師』です。

これから日本語教師を目指そうという人がいたら、どんな教師を目指すのかをまずは考えてみてください。





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Chunco
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