日本語とメタバースで世界をつなごう#1|日本語教師によるチャレンジの理由
去年、日本で公開されていた『竜とそばかすの姫』という映画をご存知でしょうか。細田守監督のアニメ映画です。
ベトナムでは公開されなくて、わたしは見れなかったんですが、小説でよみました。
メタバースってなに?と思われた方は、『竜とそばかすの姫』を見れば、「ああ、こういうバーチャルなかんじね」というイメージはできるんじゃないかと。
じゃあ、これと、日本語とが、どう関係するのか。
わたしがこれからやりたいことは、こういうことです。
バーチャル空間に、日本語を介していろんな国の人との交流できる場所を作る
今、FacebookなどのSNSを使えば、世界中の人と知り合って、写真や動画をシェアしたり、テキストでのやりとりをすることができます。
今、ZoomなどのWebミーティングサービスを使えば、世界のどこにいても話すことができます。
わたしは去年の5月からずっとリモートワーク・オンライン授業をしていて、いまだに同僚や学生と直接会うことはまったくない状態です。
仕事の会議や授業には、Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsを使いわけ、社内の連絡にはSlack、学生とのやりとにはMessenger、ベトナム人とのやりとりにはZaloなど、いろいろなツールを使います。また、教師からの情報発信や、教師と学生がちょっとした情報交換ややりとりをするために、Facebookを活用しています。
用途にあわせて、さまざまなインターネット上のサービスを使いわければ、けっこう何でもできるもんだなというのが正直な感想です。
しかし、それぞれのサービスではうまくいかないこともあります。
そのひとつが、大勢が同じ空間にいながらも、ごく少数の人間同士だけで発生する会話です。つけ加えていうなら、閉ざされた会話(ひそひそ話)や、偶然に耳に入る会話です。
たとえば、Webミーティングサービスでは、複数の人間が同時に話すことができずに、一人ずつしか発言できません。なので、大人数で集まると、一人の話を他の全員で聞くという状態になり、活発なやりとりになりにくいという特徴があります。
たとえば、「ふつうの飲み会」なら10人が集まっても、座る席の前後左右の2~4人程度で話をするのがふつうです。右隣の人との会話が盛り上がらなくて、左隣の人に話しかけることもありますよね。でも、「オンライン飲み会」ではそれができません。1人が話す間、9人は聞くだけです。せいぜい、うなずいたり笑う反応くらいしかできません。もちろん、「ここだけの話なんだけど」なんて、1人にだけ耳打ちするなんてことはできません。「ここ」は、その場に参加した10人全員です。
仕事の場面でも、同僚とのちょっとした雑談から新しいアイデアが生まれるとか、偶然ほかの人の話し声が耳に入ってきて何かを閃いたというようなことがあるんじゃないでしょうか。でも、オンラインミーティングでは、わいわいと口々に話すことや、近くの人とだけ話すことができないので、そういったことが起こりにくくなります。
学校を例にとるなら、「朝の会の校長先生の話」と「授業と授業のあいだの休み時間」がわかりやすいでしょう。
「朝の会の校長先生の話」は校長先生が全生徒に向けて一方的に話すだけなので、Webミーティングサービスで十分できます。イスに座ってられるので、貧血で倒れる生徒はいません。(わたしはほんとに全校集会中に何度か貧血を起こしました笑)
しかし、「授業と授業のあいだの休み時間」には、近くの友達と話したい人、隣のクラスに遊びにいく人、1人で音楽を聞いていたい人、仮眠をとりたい人、トイレに行く人・・・いろいろな人がいます。そして、仮眠をとろうと思っていたけど興味のある話題が聞こえてその輪に入るというようなことも起きます。
わたしが作りたいのは、そんな偶然が生む機会です。
インターネットには情報があふれていて、オンライン学習のコンテンツも多様です。パソコンか、最低でもスマホがあれば、知識だけなら、いつでも・どこでも・だれでも・タダでも手に入るようになりました。
そして、コロナパンデミックにより、それが加速したことは、ITに疎いわたしの目にも明らかです。わたしが関わる日本語教育でも、言語知識なら教師が教えずとも学習できます。
それなら、学校がある意味、人と人とが集まる意味って何だろう?そして、日本語教師であるわたしは何をすべきなんだろう?と考えるようになりました。そして、現時点までで辿り着いた答えが、空間を共にすることで発生する偶然が何かの意味を生むのではないかということ、そのような環境を作ることが日本語教師の役割ではないかということです。
オフラインでも、そのような環境を作ることはなかなか難しいです。日本語教育の話をすると、日本語使用機会を作ることも教師の役割だと思いますが、実際的な日本語の使用機会は、日本語留学していてすら少ないと言う日本語学習者がいるくらいです。ベトナムで日本語を学ぶ学習者たちは、教師以外の日本人と話したことがないということなんてよくある話です。
しかも、今までベトナムの学生たちは、望まざる状況ですべての学校活動をオンライン化されてしまいました。日本語使用機会どころか、友達とも教師とも隔てられてしまいました。もし、コロナパンデミックが落ち着いたとしても、今後同じようなことが起こらないとは言いきれません。
なら、日本語の使用機会と「偶然」をオンライン上でも再現できればいいんじゃないか?
それが、このチャレンジのスタートです。
最近、リアルでも、職場や友人に対して、「2022年はメタバースでイベントやる!」宣言をして回っています。
さて、超・文系の、何の知識も持たない日本語教師でも、できるのかどうか。
達成するためにも、noteで進捗をリポートしていきます。