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ありのままの体形を愛そう―「プラスサイズモデル」でユーチューバー、広島の沙智さん
ふくよかな体形を生かして洋服を着こなす「プラスサイズモデル」として注目される女性がいます。広島市の沙智さん(44)。「痩せていることが美しい」という価値観にとらわれず、ありのままの姿で着たい服を着る。そんなポジティブなメッセージに勇気づけられる人は多いようです。(栾暁雨)
LLから8Lサイズまでがそろう通販サイト「ゴールドジャパン」のウェブモデルをする沙智さん。あるときはゴージャスに、別のときはガーリーにと、トレンド感あふれる着こなしで、動画投稿サイト「ユーチューブ」でも人気を集める。13万8千人がチャンネル登録し、総再生回数は2500万回を超えた。
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大切にしているのは「自分のためのファッション」だ。「男受け」や他人の目をあまり気にせず、あくまでも「日々を楽しく過ごすため、気分を上げるためのもの」と言い切る。
以前は太っていることがコンプレックスだった。10年ほど前に婦人科の病気を患い、治療のホルモン剤を飲むようになって太り始めた。人の目が気になり「痩せて見える暗い色の服ばかり着ていた。気付けばクローゼットが真っ黒でした」。でも好きじゃない服を着ても全然楽しくないし、顔もくすんで見える。ダイエットにも失敗し続け、気持ちが落ち込んだ。
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転機は7年前。肺に悪性の腫瘍ができ、半分を切除。死と向き合った経験が人生観を変えた。「体形に悩んで楽しく生きられないなんて損してるな」。開き直ったら楽になった。体形を隠すのをやめ、今は白や黄色、ピンクなど好きな服に囲まれている。
すっぴんからの変身ぶりが印象的なメーク動画も共感を呼ぶ。目が離れている、唇が薄いといった悩みをオープンにし、つけまつげや明るめのリップで「盛る」。ファッション同様、「自分が満たされるかどうか」が基準だ。
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10代の2人の子どもがいるシングルマザーでもある。いまだに母親につつましさを求める空気があるのか、「ナルシシスト」「派手すぎる」といった中傷もある。でも、沙智さんは意に介さない。「自分を好きで何が悪いのって思う。自分を愛せない人は誰も愛せない」。好きな格好やメークを封印してきた女性たちからは「動画を見て解放された」との声が届く。
沙智さんは問い掛ける。「細身がいい、出産したら落ち着いた装いをしろという女性像・母親像は根強いですが、息苦しくないですか」。年齢や体形で「こうあるべきだ」と決め付けないで―。プラスサイズモデルの活動は、世間のバイアスから自由になるための自己表現でもある。
プラスサイズモデル:ぽっちゃりした体形を生かしたモデル。ファッション業界では痩せすぎのモデルを起用しない流れが広がり、体形や人種、性の多様性がキーワードになっている。国内ではタレントの渡辺直美さんの人気も追い風になり、大きいサイズを扱うアパレルが増えている。
ウエストマークでメリハリを
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スタイルアップのポイントを教えてもらった。めりはりを付けたい時に活躍するのが太めのベルト。ウエストマークすると視線が上がって足長に見える。腰にカーディガンを巻いてもいい。
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トップスの前裾だけをボトムスに入れて抜け感を出す「シャツイン」スタイルでは使える裏技も。「実際にインすると下腹が目立つので、前裾を内側に折り返して両面テープで留めるといいんですよ」
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全身のコーディネートは3色以内に抑えると統一感が出て引き締まる。小物とバッグの色を合わせるだけで「上級者見え」するという。髪形が決まらない人にお薦めなのは帽子。ベレー帽やキャップなど、形違いで持っているとコーデの幅がぐんと広がる。