政治に縁遠かった20代妻が島で立候補した夫を応援した8日間。日々の思いをスマホ日記につづりました
まさか夫が立候補するなんて―。10月3日投開票の江田島市議選に挑んだ宮下成美(なるみ)さん(33)と一緒に、選挙戦を初体験した妻綾華さんさん(29)。遠くにあった政治が突然近くにやってきて見えてきたのは「人生は、私たちがつくっていくんだって」という実感でした。「まじかけぬけた」戦いの8日間を、スマホの日記にリアルにつづっています。
初の選挙活動 手ふりふり疲れた
■1日目(告示日)
選挙活動すたーと!すんげー疲れた。緊張が、なる君も、私もすごかった。笑。街頭演説、ウグイス、全部が初めてすぎて。街頭演説はつまりまくるし、ウグイスは意識しすぎていつもの私ではないくらい。笑笑
てか、風で喉渇く、熱い、髪の毛ボサボサ、手ふりふり疲れた。だれも手を振ってくれなかった時のむなしさね。
他の候補の圧力すげー。もー「こなれ感」ってやつだよね。素人集団からしたら、圧巻。
夜中なる君は、嘔吐で起きる。大丈夫なん?疲れすぎていたわる事もできず就寝。すまん。
市内の児童福祉施設で働く夫の「なる君」は無所属で立候補。同じ施設で働く綾華さんは、「ウグイス」とも呼ばれる車上運動員として選挙戦に関わることに。
綾華さんにとって、選挙はこれまで、何となく投票に行くだけのものでしたが、今回は一変。「若い世代の声を市政に届ける」と市議を志した「なる君」たちと選挙カーに乗り、ひたすら声を張り、手を振りました。
もっと素人でいいんだ
■2日目
仲間から言われた。「プロ意識やめよう。僕らは今までの選挙のやり方とか時代を変えたくて挑戦してるんだから、マネしなくていいのよ」。たしかにー。素人感がなくなって、なんのこっちゃ。「もっと素人でいいの。『すみません…はじめてなので』。これもアリ!」とかアドバイスくれた。
月曜日の平日に入った途端の人の少なさよ。こんなにみんな市外にでちゃうんだねーやっぱり。青空に向かって選挙運動…
ふざけて参加しとるんか?と言われ、愛車も脱輪
■3日目
今日からウグイスの紹介で「嫁ですー」ゆったし、素人感ってゆーか、素人だし。自由にやってみた。
が、「ふざけて参加しとるんか?」なんて声もでてきたみたい。事務所で和気あいあいが気に入らないのかな?。応援してくれる人もたくさんいるし!。温かい声援がうれしすぎて号泣。笑。マイク通して泣く29歳。楽しく取り組め始めた気がする。
7歳と3歳の2児の母でもある綾華さんが、「なる君」から立候補の意思を告げられたのはこの春でした。それまで選挙は投票しても「何も変わんないだろうなと思ってた」。名前を連呼する選挙カーに寝かしつけたばかりの子どもを起こされた記憶もあります。それでも「いいんじゃない」と即答したそうです。
それは、こんな思いがあったから。「子どもが私たちの年齢になった時に絶望感を少しでも感じないように。親ができることをやっていく」
とはいえ、選挙戦は驚きとハプニングの連続だったそうです。仲間が子どもの発熱で急に休んだり、ぎっくり腰になったり。選挙カーに変化した愛車は4日目、泥にはまって脱輪してしまい…。未体験の日々の疲れは想像以上で、たまるばかりでした。
仲間にありがとう
■4日目
車が街宣中、泥にハマる。ほんとごめんなさい。仲間が足がずっとぬれたまま運転してくれました。しんどい体で、みんなありがと!!
ヒマラヤ山脈なみの洗濯物やっつけた
■5日目
さすがに疲れて、頭の中で情報が止まんない様子のなる君。疲れはあるものの、演説の角もとれて、いい感じです。事務所の空気も相変わらず笑い声が絶えなくて。
夜ヒマラヤ山脈なみの洗濯物やっつけました。
夜中頭痛でめまい
■6日目
少なかったけどすんごくアットホームであたたかいうちららしい講演会ができたんじゃないかって思った。どうなるかわかんないけど、最後の日まで私ららしく明るい日を走り抜けていけたらいいなって思う!若者が楽しく政治に参加する!これは、私らのモットーだからね。
夜中頭痛でめまい…。さすがに疲れがきている。子どもの寝かしつけなる君にしてもらって申し訳ない… ごめーん
愛車は選挙中に800㌔以上、島を駆けました。今はないボウリング場、定期航路が消えた港のそばも回りました。「子どもを未来へと連れて行ってあげてください」。そうマイクで声を張りながら窓から見えたのは、人口減少と過疎化にあえぐ古里の今でした。
政治の慣習にぎょっとすることも。面識のない国会議員2人からいきなり、候補者の勝利を願う「ため書き」が届きました。「新人候補の夫を知っていたのが怖い。政治の世界を見た気がします」と綾華さん。でも、子どもたちは紙を丸めてチャンバラに使ったといいます。
楽しく参加することをモットーに、スマホでつぶやきをつづり続けました。
16人中14番目で初当選
■7日目
すぐ終わった一週間!まじかけぬけた。
今日の夕日はこの一週間で一番きれいでまさにじーちゃんが祝ってくれてんだなーって思った。ありがとー。亡くなった日もこんなにきれいな夕日だったの思い出しました。
明日結果が分かるけど、明日がどーであれ、私やなる君は、こうして若者が選挙、政治に進んで参加する新しいムーブメントを起こせた事がもう大成功だったと思うんよね。
夫の「なる君」は、16人中14番目で初当選を飾りました。喜びであふれた最後の日の日記は文字が一気に増えます。そして、新たな決意も芽生えてきたそうです。
いままで政治はマイナスイメージだったけど
■8日目(投開票日)
朝はほんとに「やり切った感」「達成感」がいっぱい!。夕方、みんなで報告を今か今かと待ちました。結果を聞いた時、こんなに喜びを分かち合ったことがないほど大喜びしました。友人たちがなる君を支えてくれてここまでこれたこと、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
今まで政治に対してマイナスなイメージばかりだった自分たちがこんなにも前向きに取り組めたこと。それは本当にすごいことなんだって感じたし、そして小さな波は大きな波に変えることができるんだってことが証明される一つの事実が自分らの中にできた…そんな気がすごくしました。
これから始まる事に、思い、悩み、考え、大変な事ももちろんあると思うけど、それでも、なる君らしく。私ららしく。楽しく政治に参加するって事を忘れずに。
自分たちの人生は、私たちがつくっていくんだって。
【中国新聞デジタル】
「楽しんで選挙にさんかする」モットーだもんね【妻の日記全文】<選挙戦初日~5日目>
【みんなの政治】第1部「漂う島の1票」
<1>投票率、たそがれ時 「議員、誰がなっても一緒」
<2>「岸田さんって誰っすか? マジ知らねえ」根付かない選挙の意義