夫・妻、旦那・嫁…配偶者の呼び方は?広島などの読者300人が回答
第三者との会話の中で、配偶者が出てくるとき、どう呼んでいますか。夫や妻、主人、家内…それとも? 中国新聞のLINEに登録している読者に聞いたところ、300件以上の意見が寄せられました。TPOで使い分ける人が多い一方、「男性優位」の呼び方に違和感があるという声も目立ちます。3月8日は性の平等や多様性の推進を目指す「国際女性デー」。皆さんがしっくりくる呼び方、考えてみませんか。(栾暁雨)
TPOで呼称使い分ける人が多数
回答者のうち女性は約200人。半数以上が、相手との関係性やTPOで配偶者への呼称を使い分けると答えた。
広島市南区の40代会社員女性は、職場では夫、友人には旦那、目上の人の前では主人と呼ぶ。「礼儀のようなもの。敬語を使うのと同じ感覚です」。佐伯区の主婦(42)も「ママ友の前で夫と呼ぶのは気取った感じで恥ずかしい」ので旦那と呼び、少しフォーマルな場では夫や主人を使う。
話す内容で呼び方を変えるという人も。普段は主人と呼ぶ福山市の主婦(45)は、友人に夫の愚痴や失敗談を話すときは、「旦那がさー」になる。「カジュアルな響きで会話のテンポが良くなる気がします」と記した。旦那を使う場合は「気軽さ」、主人を使う場合は「丁寧さや無難さ」を理由にする人が多いようだ。
「妻」は対等なニュアンス
夫、妻と呼ぶ理由は「正式名称だから」(福山市・81歳男性)、「役所の書類にある続柄の表現が最もふさわしいと思う」(福山市・39歳女性)。尾道市の40代女性は「他は男尊女卑や夫婦間の主従関係を感じるものばかり。こだわって夫と呼びたい」とつづる。
共働きの三次市の看護師女性(52)も「唯一、対等なニュアンスなので『夫』一択。お笑い芸人がよく使う旦那とか嫁の言葉が嫌い」で、嫁と呼ぶ夫には「妻」に改めてもらったそうだ。
同じような声は多かった。広島市安芸区の男性(65)は「嫁は本来、息子の妻を指す言葉。旦那に至ってはパトロンかと言いたくなる」。福山市の公務員男性(31)も「『嫁のくせに』となじる際に使われることが多い言葉。男性の家系に入るのが当たり前という時代の名残」を感じるという。
「嫁と呼ぶのは配偶者を大切にしていないように聞こえる」というのは廿日市市の非常勤講師女性(58)。「照れ隠しや謙譲の美徳なのかもしれないけど、人前で身内を謙遜するのをそろそろやめては?」と問い掛けた。
広島市西区の歯科衛生士女性(51)は「旦那」を使うが、この機会に意味を調べてみたところ、昭和時代に発行された辞書では「婦人が貞操を与える代償として経済的援助を与える男」という意味のことが記されていたそう。「ぞっとした。本当の意味を知りつつ、今後は時代に合う言葉のチョイスを心掛けたい」という。
時代とともに呼び方を変えた人もいる。広島市佐伯区の女性(58)は結婚26年目。「新婚時代は旦那と呼ぶのが一種のはやりだったが、40代からは年齢に合う『主人』に。今はそれも従属的に思えて、夫と呼びます」
10年前までは「主人」、今は「夫」と呼ぶ岩国市の女性(62)は、「当時も別に家庭内のヒエラルキーということではなく、対外的に夫を立てた『いい妻』というイメージが生きやすかったのかも」と振り返る。
男性の方が呼び方多様
男性からの回答で多かったのは妻、嫁、家内。ほかにも女房、かみさん、奥さん、うちの、など女性以上に多様だった。
広島市東区の男性(63)は「かみさん」を愛用。昔、テレビシリーズ「刑事コロンボ」(吹き替え版)でコロンボが「うちのかみさん」と呼ぶのを聞き「言葉の柔らかい雰囲気がいい」と感じた。尾道市の男性(47)も「かみさんの語源が相手を敬う言葉と知ってから気に入っています」
竹原市の男性は、妻の名前に「さん」を付ける。「女性は結婚すると名字が変わってしまうので、個人を尊重した呼び方にしたい」とつづった。
性別にとらわれない呼称を求める声も目立った。呉市の会社員(32)も「パートナーもいいけど、格好付けてると思われそうで。しっくりくる言葉がない」と悩む。広島市西区の団体職員女性(46)は「法律婚以外の関係でも使える呼び方が必要」と願う。
夫婦イーブンの関係を表す言葉として「連れ合い」を使うのは尾道市の公務員男性(59)。「男女どちらでも使えるし、一緒に人生を歩んでいる感がある」という。三次市の教員女性(58)も事実婚の夫は「連れ合い」。「本当はライフパートナーと呼びたいけど長いので、今のところはこれが一番しっくりきます」
若い世代は「夫」と「妻」
未婚の若い世代にも夫、妻が支持された。広島市の男子学生(21)は、「対等で依存しない関係に思える。主人や旦那という呼び方は大黒柱の役割を担わされる気がして…」。東区の女子学生(21)は「相方」を希望。「ユーモアがあって好感が持てる」という。
一方で、「使い慣れた呼び方がある人は好きにさせて」(庄原市・60代男性)との声も。廿日市市の50代女性は「『主人』や『嫁』も差別的な意味合いは風化している。平等意識が行きすぎると言葉狩りになって息苦しい」と寄せた。
他人の配偶者、どう呼べば?
意外に多かったのが、他人の配偶者の呼び方に悩む声だ。世羅町の主婦(74)は「あなたの夫、あなたの妻」とは言いにくく結局、ご主人、奥さん、と言ってしまうという。「言葉の持つ意味は大切。正しい呼び方を知りたい」
尾道市の自営業女性(39)も、「人の配偶者をジェンダー的に適切に表現できる言葉がない」ので、次善策として「夫さん」「妻さん」と呼んでいる。
確かに言われてみれば、対等な関係を表現するちょうどいい言葉が見当たらない。あったとしてもパッと出てくるほど浸透してはいない。
推しは「ご伴侶さま」
そんな中、「ご伴侶さま」を推す若者も。性にまつわるモヤモヤを読み解く漫画をSNSで発信する「パレットーク」編集部(東京)の伊藤まりさん(28)だ。1月にインスタグラムに投稿したところ6千を超える「いいね」がついた。「同世代はジェンダー平等に関心がある人が多く、呼び方問題にも敏感」なのだそう。
「ご伴侶さま」も自身の問題意識から、友人とあれこれ考えて生まれた言葉だ。性別を限定せず、人生を共に歩むという「適度な重み」もある点が気に入っている。最近は周囲でも使う人が徐々に増えつつあるそうだ。