【読書】 習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!
出版情報
タイトル:習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!
著者:遠藤 誉
出版社 : ビジネス社
発売日 : 2023/7/3
単行本(ソフトカバー) : 288ページ
死体の上に寝た少女
戦争の悲惨さ
戦争は悲惨だ。
この言葉は戦後生まれの私にとっては、どうしても、どこか遠い出来事のような感覚が否めない。
だが、本書の著者 遠藤誉は違う。
齢7歳にして、ガッツリ国共内戦に巻き込まれた。日本軍が去った満州で、共産党軍と国民党軍が激烈に、強かに、そして市民・民衆の命を軽んじながら戦ったのだ。著者のいた長春は当初国民党軍が占領したため、共産党軍は都市封鎖を行った。長春はたちまち飢え、文字通り餓鬼の都市となった。この長春包囲戦による餓死者は15万人とも20万人とも言われている。
一縷の望みを賭けて著者たち家族は密かに検問を突破し、「卡子《チャーズ》」と呼ばれる国民党軍と共産党軍の間の空白地帯に出た。そこが地獄の始まりだった。餓死、病死、戦闘死の死屍累々。
を著者は体験した。
著者は数日間飢えに苦しみ、結局、父親が技術者で工場経営者だったためかろうじて一家に共産党軍側に出る許可がおりる。
死体の上になけなしの財産である布団を敷いて寝る。想像できるだろうか?
それが著者の人生の原点だ。そして、
という。
この使命感から、著者はさまざまな著作を著している。本書もそのうちの一つなのだ。
大地の哲理「兵不血刃」
これは中国戦国時代の儒学者 荀子の言葉だという。
「兵不血刃」。刃に血塗らずして勝利を収める。日本風に言えば、「戦わずして勝つ」というところか。
だが日本で「戦わずして勝つ」と言えば、まったく戦闘行為がなく、負傷者も、死者もいない、ということを想像する。すごくスマートな勝ち方。
だが、中国は、違う。一般市民・民衆を巻き込む兵糧攻め。何人死のうが、どれだけ苦しもうがかまわない。自らの将兵の血が流れるのでなければ。それが「兵不血刃」なのである。
著者によれば長春包囲戦は「兵不血刃」に基づくものだという。そして習近平の台湾攻略、世界戦略(=一帯一路)も「兵不血刃」に基づいていると。習近平は戦闘行為は望まない。だがシーレーンなどを押さえるとしたら?日本、台湾の政界に徐々に、そしてバンバンと浸透工作を行なっているとしたら?いつの間にか、中国の移民だらけになっていたり、土地が買収されているとしたら?そう、もう、すでに始まっているのである。
元祖リケジョから国際情勢専門家へ
著者の経歴をこうして記すのは、遠藤の中国や国際情勢の分析の深さと細やかな解像度の背景にあるものを、この記事の読者の方と共有したかったからだ。
遠藤は中国で初等教育を受け、1952年に日本に帰国。理系大学院(東京都立大)での研究を経て、学究生活に入る。1983年(著者42歳)の時に、『不条理のかなた』という自伝作品で女性ヒューマン・ドキュメンタリー大賞を受賞する。この辺りの経緯は著者自身のブログ記事に詳しい。その後、『卡子(チャーズ)』を上梓。何度復刻しても絶版になってしまうとのことで、現在は『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』が最新版のようだ。
著者は、淡々と公平に事実を積み重ねて結論に至っている。習近平の危うさに警告を発すると同時に、米CIAの所業にもメスを入れている。
私たちは、彼女の著作から、その精神から学ぶことがたくさんあるはずだ。
以下、本書の概略を示しながら、私の感想などを述べていく。
本書とは異なる順番で内容を紹介していくので、気になる方は離脱してください。また、本書は簡潔にまとまっていて読みやすい。なので、できれば、ぜひ直接本書『習近平が狙う「米一極から多極化へ」』にあたってください。当然のことではあるが、私の要約や感想などより、本書はずっと内容も濃く解像度もはるかに高い。何より情報が満載で、グローバルサウス、チャイナ、そして米国を見る時の解像度が少なからず上がるのでは、と思います。
キッシーがキーウにいったワケ
私はこの電撃訪問について、どうやって?については回答を聞いた覚えがあるけれど、どうして?についてはわからなかった。
本書では、それは中ウ接近の防止にであったという。元々中国とウクライナは親密な関係にあった。中国の航空母艦の技術はウクライナ由来であることは有名だ。経済的にも密接であったし、そもそもウクライナは汚職大国だった。
それが露によるウクライナ侵攻で一変した。西側諸国がこぞってウクライナ支援に回った。その後の状況はご存知の通りだ。
キッシーがキーウに電撃訪問した当日、習近平はモスクワを訪問し、プーチンと3日間の会談を予定していた。習近平は露に軍事的支援はしない。「ウ東部で酷い目に遭っている同胞を助ける」という戦闘行為に中国はヒヤヒヤだ。そんなことを言ったら、ウイグルは?モンゴルは?チベットは?他国に付け入る隙を与えてしまう。だから「戦冷経熱」。経済支援を大いにしましょう、と。そのため、露は西側の経済制裁を何のその、GDPは成長し、経済的には絶好調だ。
キッシーがキーウに電撃訪問した当日、習近平はウ・ゼレンスキーとウエブ対談を予定していた。内容は停戦や和平に関するものだったかもしれない。だが、キッシーの訪問で、それは潰され、和平は遠のいた。その代わり、キッシーがウクライナと共同発表したのは、ウクライナへの支援とウクライナが台湾有事に言及したことだ。ウクライナが台湾有事に言及!?そう、遠い地の出来事に今まで中国寄りだったウクライナが日米寄りの言及をする。中ウ対談を邪魔した上、これほど中国を刺激することはあるだろうか?
遠藤によれば、これは中国刺激し、台湾有事を呼び込む米軍産複合体の手口ではないか、という。キッシーの行動が米戦略の手駒になっている、というわけだ。
その後もキッシーは米議会で演説し、ウクライナに多大な経済援助をする、米政府のパートナーであり続ける(ポチであり続ける)と述べている。良いのだろうか?
アメリカ脳へとすっかり洗脳されている日本
BRICS にグローバルサウス。どこかでこの言葉を見かけない日はないといって良いほど、一般的だ。そしてG7の合計GDPを抜いたとも。GDPが下がりっぱなしの日本に比べて、勢いのある国々であり地域である。人口は全人類の85%を占める。
だが私たちは、本当の意味でグローバルサウスの国々が何を考えているのか、どうしたいのか、知っていると言えるだろうか?
彼らには下記のような共通認識がある、と遠藤はいう。
上記のこと=アメリカの横暴が骨身に染みているグローバルサウスの国々は、西側諸国のロシア制裁に加担しなかった。ロシア侵略に対して制裁しよう、とならなかった。
日本はロシア制裁にも加担をし、ウクライナに多額の援助をし、今後の支援も約束している(させられている)。
つまり、日本ではアメリカ様のものの見方のみがマスコミに溢れ、私たち自身もそこに疑問を抱かない。それがアメリカ脳であり、洗脳の完成形だ。私たちはもう、グローバルサウスの国々のものの見方ができなくなってしまっている。
グローバルサウスの国々はそんなアメリカに嫌気がさし、「「脱米」と「脱米ドル」の大きな波を加速化させている」p9。
そして、そこに「兵不血刃」中国がグローバルサウスの人々、つまり「「85%」の人類を味方に付けて、「地殻変動」の大きなうねりを「非米陣営」で巻き起こしている」そして「中国は相手国の政治体制に関する内政干渉をすることなく、和睦によって経済繁栄をもたらす」という自国の売り込みに成功し、リーダーシップを取ろうとしている!p9
遠藤は細かくデータを上げながら、そして図なども適宜用いながら、本書によって私たち日本人が脱アメリカ脳、脱洗脳にいたることを企図しているのである。
著者はもちろん中国の覇権による世界新秩序には反対だ。
自国民が何十万と飢えても歯牙にも掛けないのが、「兵不血刃」の中国共産党なのである。
著者は対米、対中自立を私たちに問うている。
CIAそして、後継のNEDが何をしてきたか?
軍産複合体。昔は死の商人(=武器商人)などといったものだ。その軍産複合体の一翼を担うCIAとその後継であるNED。何をしてきたのだろうか?
世界情勢に疎い私は、「アラブの春」という言葉は知っていても「激しい内紛」や「治安は悪化」や「凄惨な混乱の極み」は知らなかった。
著者は続ける。
NEDには政府から資金が出ているので、それがどのように使われたか、Web上で追えるようになっている。著者がまとめた表がある。
今まで、不勉強だったので、恥ずかしながら、私が聞いたことがあるのは「雨傘運動」や「マイダン革命」ぐらいだ。だが、あの香港雨傘運動が米国団体NEDから資金提供されてきたとは!そして、コロナ騒動中の大陸内での白紙デモ。反ゼロコロナ政策に立ち上がった大学生などが白い紙を持って黙って佇んでいた(実際にはシュプレヒコールもあったようだ)。あの白紙デモもNEDが資金提供元だという。NEDのさまざまな活動についても詳細が述べられている。
「民主化」という美名のもと、上記のように資金提供などの工作活動を行っているのだが、米国は朝鮮戦争以降も、戦争を起こし続けてきた。写真が小さくて申し訳ないのだが、どれだけたくさんの戦争を起こし、犠牲者を出してきたか、その概要をつかんで欲しい。詳細が知りたい方はぜひ、本書をお読みください。
そして下記のようにNEDを告発する。
台湾への工作
みんな大好き台湾の李登輝総統(在任期間1988-2000)。「25歳(1945)までは日本人だった」と言い「難しいことは日本語で考える」という。日本の台湾統治時代を肯定的に捉える親日家であり知日家だ。そして本省人の初めての総統(大陸から人々は外省人)。その李登輝総統がアメリカの支援を受けてきたとしたら?総統就任前の1985年から支援を受けてきた、と著者はいうp192。国民党に在籍しながら、民進党を育てた。大陸を向いている国民党とは違う、台湾に根ざした政治、つまり民主志向、独立志向の政治を行なってきた。
李登輝はそうは言わなかったと思うし、民進党のトップたちもそうはっきり言わないが、米国NEDの狙いは台湾独立を焚き付けることだ。
国民党はそれまで228事件に代表される弾圧による独裁体制を築いてきた。台湾はそれまで日本が統治しており民度が高く、国民党軍の外省人たちは台湾をよく知らない、田舎者の野蛮人にも見えていた側面があったのではないか?民度が高く裕福なものを劣位なものが支配する。それが弾圧につながったのではないかと、歴史政治素人ながら思ってしまう(間違っていたら訂正します)。だからそこから抜け出すために、李登輝は国民党に入り実力をつけ、蒋経国から党を任された途端、民主、自由路線へと舵を切っていった。経緯や内情をよく知らないまま書くが、米国や米NEDの支援を受け、民主独立路線を開拓していくことが台湾の人々の幸せにつながる、と思った上でのことだったのではないか?と、やや李登輝を(著者から??)庇いたくなってしまう。
だが著者によれば、米NEDのレールに乗って仕舞えば、行き着く先は、紛争と戦争だ。
台湾民意は、大陸との関係では「現状維持」を望んでいる。中国共産党(=習近平)は「兵不血刃」。台湾問題については平和裡の統一を望んでいるという。(もちろん「使える」軍隊にするために徹底的に腐敗を洗い出し、沈没する事態に遭遇しながらも原潜の訓練を行なっているらしいのだが)。
だから台湾独立を唱えれば、中国共産党を刺激することになる。
習近平が目指す多極化=脱米国
平和の使者 中国
2023年3月。習近平が3期目の国家主席に就任したその日に、イラン・サウジが和解したことが電撃発表された。著者によれば、「それは習近平3期目スタートの祝砲だった」p65という。
中国国営メディアはこれを次のように伝えた。
いや、ウイグルやチベットで何をしているか、モンゴルで何をしてきたか、どの口がいうとるんじゃ!日本に対しても反日教育なんぞし続けて、日本の子どもの命をなんだと思ってるんだ!!…と、言いたくなる…。が中国が中東に和平をもたらしたことは事実なのだ…。
イランとサウジは同じイスラム教でも、一方はシーア派、もう一方はスンニー派。イランはペルシャと呼ばれた2000年前から地域の覇者だという自負があり(比べるとサウジは新興国)、一方でイランは米国に経済制裁され貧乏国家(サウジは言わずと知れたオイルダラー天国)。一人当たりのGDPで3.6倍ほどの開きがある(それぞれの国のwiki内データでの比較)。そのほかにもさまざまな場面で相違があるようだ(シリア内戦でどちらにつくか、などYouTube動画)。この両国を結びつけ、和解にこぎつけた意義は大きい。
しかし、この和平もイスラエル-パレスチナ戦争が長引き拡大の様相を帯びるにつけ、和平を享受するどころではなくなってきている。
ん?米国がイスラエルに加担することで平和が遠のいている??
習近平の狙いは、平和の使者 中国だ。
そして、それが実際に功を奏している!
何度でもいう。ウイグルやチベット、モンゴルでの所業、反日教育。地下鉄事故を地下鉄ごと埋めるお国柄の人が平和??ちゃんちゃらおかしい…。
ほかにも中国はさまざまな場面で国際関係を取り持つものとして、その力を発揮し、グローバルサウスをまとめる動きをしている…。
習近平の理論的背景:荀子の哲理「兵不血刃」
遠藤の調査分析によると、習近平は荀子の哲学を重要視しており、その中に「兵不血刃」がある。
荀子の哲学は性悪説に基づき、礼を重んじるという(wiki)。習近平には「もしここで道徳の欠如を招いた「腐敗」撲滅に取り組まなければ、中国共産党による一等支配体制は終わりを告げ、社会主義体制は中国大陸から消え去ることになっただろう」という思いがあると、遠藤はいうp157。
一方日本のほとんどの中国研究者は「習近平の権力基盤が弱いので、政敵を倒すために腐敗撲滅運動を利用した」と分析しているがそれは浅いと遠藤は指摘するp157。
そして遠藤の分析によると、それは、
と展開され、
だと結論づけられる、とのこと。
正直なところ、私には➡︎の連なっているところから、論理的展開についていけないし、この結論も、どこからどのように出てきたものなのか、理解が追いつかない。だが長年の中国ウオッチャーである遠藤は上のように結論づけている。
何度もいうように私の視点から見れば、中共が「相手国を尊重し」だの「相手国の政府の転覆などをもくろんではならない」などとは、ちゃんちゃらおかしい。フィリピンのなりすまし中国人市長は?沖縄への浸透工作は?サウジやイランなど自分側陣営への擦り寄りに見えてしまう。
だが、ここで、私たちが心しておくことは、露プーチンにしても、中共習近平にしても、核となる哲学がはっきりとあり、それを持っていることを、露は米独立系メディアのインタビューに応える形ではっきりさせ、中はインターネットの揺らぎの中で、たまたまだけど、はっきり見つけることができた、ということだp154-p164。そういう哲学を持っている相手と対峙する、私たちの哲学。日本人はそうした哲学を一人一人が持っているだろうか?政治家や官僚、大企業経営者にあるようには見えない現状を深く危惧してしまう。
米国が焚きつける日台中戦争
現在の台湾総督は民進党の頼清徳。その前は女性の蔡英文(民進党)、その前は馬英九(国民党)だ。
それぞれの党の違いは、下記が一番正確だろう。
国民党は親中派と言われているが、中共に飲み込まれることを望んでいるというよりは、遠藤の書きっぷりでは経済的な利益のために中国との関係を親密にしたい、そのためには中共とも仲良くしたい、というスタンスのようである。民進党は党是としては「台湾は主権独立国家」であるが、民意を考慮すると、「このままの台湾でいたい」に寄り添う形をとっている(ここで寄り添うとは統一に関してははっきりさせず、中国ともある程度(以上の??)経済交流したいということ)。
国民党 馬英九総統のときに、中台が分断して66年ぶりに習近平との首脳会談を行った。馬英九は選挙を控えていて実績を見せつけたかった。だが、そこで習近平に「同じ民族として私たちを引き裂くことはできない」と統一を匂わされてしまう(馬英九はもちろん『中華民国』という言葉を使って中共に飲み込まれるわけではない、というメッセージをアピールした)。大陸と統一される、ということは言論の自由などがなくなってしまう、ということ。それを危惧した若者たちが「ひまわり革命」(ひまわり学生運動)を起こす。この「ひまわり革命」の背後には米NEDがいて、統一を阻止する民意を作り出した、という。
米国の台中関係への思惑
対する習近平の思惑
つまり、なんとしても平和裏の台中統一を阻止したい米国と、米国からの圧力や挑発に耐えている中国。遠藤は現状をこのように分析している。
そしてそのコマのひとつとして日本がある、というわけだ。
2027年侵攻を煽る米国
米CIAのウイリアム・バーンズ長官は、2023年2月下記の通り発言している。そしてこうした発言はその後ますます激しくなっているという。
そして「日本はその真っただ中にいて、「操られていること」に気づかない」と著者は警鐘を鳴らす。
そして政治家を含めた日本の人々が薄らぼんやりとしている間に日本は着々と米国、そして米軍の中に取り込まれていく。
また、以前、台湾有事になれば、米軍は日本の基地から戦闘機をいったんすべて退却させる、と聞いた。残念ながらニュース記事などでソースを確認できなかった。
自衛隊が矢面に立たされる可能性が高いのではないだろうか?
自衛隊は残念ながら「警察予備隊」の格上げ組織であり、軍隊ではない。軍隊であればネガリスト(してはいけないリストがある)で行動が制限されるが、警察はポジリスト(していいことのリストがある)で行動できることが決まってくる。つまり、このままでは軍隊として機能できないのである。
自衛隊員のみなさんには気の毒すぎる現実である。
日本弱体化を克服せよ
遠藤は次のようにいう。
だが、米国は終戦後、日本軍の強さを恐れるあまり、「日本人の精神構造解体」p278を行った。それがいわゆる「民主、人権、自由、平等…」などの「普遍的価値観」で、それを娯楽の中に潜ませていったp278-p279。
そして、「天皇陛下がマッカーサーに会いにいったことによって、これは天皇陛下の意思決定だと解釈してGHQの指示に従ったものと思う」p281。
もちろん天皇陛下の影響もあったと思うが、何しろ日本人は疲弊していた。疲弊して、楽になれるものにすがりつきたかったのではないかと思う。どこかが何か違うけれど、日本古来の伝統や考え方とも、まったく不整合というわけでもない、「民主、人権、自由、平等…」などの「普遍的価値観」に…。
だが今上天皇の即位の儀式で「憲法を遵守し」と述べられたことに、違和感を覚えた。あえて言えば悔しい思いをした。本当に日本人が作った例えば大日本帝国憲法であれば、こんな思いはしなかっただろう。
日本弱体化であるアメリカ脳への洗脳。それはもう終わりにする時期がきている、と遠藤はいう。そのために「自分がアメリカ脳になっている」と気づくことから始めよう、と。
おわりに
そのほか、著者は「強い中国は日本が育てた」というp176。また、1992年の全人代(中国の国会)で、尖閣・南シナ海の領有権を定めた「領海法」を採決し制定した。尖閣諸島は日本の国土なのに。中国は「それは中国の領土である」と制定したのに、日本はいかなる抗議もしていないそうだ。現場のジャーナリストは在中日本大使館などに連絡して「抗議すべきではないか」と迫っても、冷ややかな対応だったというp197-p198。
著者は叫ぶ。
米国は米国で「一つの中国」原則を作り上げ、台中関係を複雑にした。
つまり米国も日本も、中国を大国に育て上げ、挙げ句の果てにあたふたしている、というわけだ。
もう、育ってしまったものは、しょうがないのだが。
そして日本人には見えていない「世界の平和を破壊する民主主義国家と普遍的価値観」の実態。「それはアメリカが「民主」の名を掲げながら全世界にばら撒いてきた「戦争」と、そこに持っていくための「カラー革命」がもたらした紛争と混乱」にグローバルサウスの人々は嫌気がさしているということ。
そして日本の選択は?現状を見て?
著者はデータを提示し分かち合い、読者と一緒に考えよう、という姿勢だ。本書は私のザルのような読書感想の一千倍も一万倍も緻密で読む甲斐がある。ご関心のある方はぜひ本書に当たってほしい。日本からは見えない世界の動きが、データの積み重ねと冷静な分析によって、静かに、そして激しく何かを刺激する。
さあ、どうする??私たち???
少し引っかかったことをあえて書くとしたら、著者 遠藤が習近平を持ち上げているように感じたこと。習近平は単なる権力闘争をしているのではなく、哲学を持ってことにあたっている、と。もちろん、それは私が習近平さげの情報にばかり接してきたせいもあるだろう。遠藤は習近平の危険さや本気度を理解してほしいがために、そういう表現を使っているのだ、ということも理解しているつもりである。私がアメリカ脳だから引っかかるのだろうか?
習近平の健康問題と軍部との対立の情報が多く上がってきているようだ。
実際のところはどうなのだろう?習近平が健康問題を抱えていても、それでも習近平を完全に否定しさるようなことになっていないのは、一定の支持する勢力がいる、ということなのだろうか?それは習近平がうちに抱える哲学に共感しているのか?
繰り返しになるが、私たちはもはや米にも頼れず、かといって中共という選択肢も、ない。
どうする??
引用内、引用外に関わらず、太字、並字の区別は、本稿作者がつけました。
文中数字については、引用内、引用外に関わらず、漢数字、ローマ数字は、その時々で読みやすいと判断した方を本稿作者の判断で使用しています。
おまけ:さらに見識を広げたり知識を深めたい方のために
ちょっと検索して気持ちに引っかかったものを載せてみます。
私もまだ読んでいない本もありますが、もしお役に立つようであればご参考までに。
遠藤誉の本
楊海英
内モンゴル出身で日本に帰化した大学教授。下記は読んでいないが、素晴らしい本をたくさん出版している。