影響力
図書カードが好きだ。
現金をもらうよりも、図書カードのほうがワクワクさせられる。
限られた額面で、何の本を買うか。これを悩んでいる時間は、小学生の時の遠足で「お菓子は300円までですよ」と決められた時の感覚に似たワクワク感がある。
さて、1500円分の図書カードを戴いたわたしは、何を買うべきか。
紀伊國屋で1時間ほど悩んで、又吉直樹『火花』と島本理生『ナラタージュ』の文庫本をセレクトした。あまりに普通すぎるかもしれないけれど、「みんなが良いと言っているものは、良いんだろうな」精神で決めた。好きではない作風の本を読破してしまった時の絶望感がわたしはすごく苦手なのだ。
よし、これを買おう!そう決めてレジに向かっている最中にオレンジの派手なある本のPOPが目に入った。
「椎名林檎さん絶賛!」「私が50分の円盤や90分の舞台で描きたかったすべてが入っている」
それをみた瞬間、1時間かけて選んだ愛しい本たちを元の棚に戻し、新たに惹かれたその本を抱きしめてレジに持っていき、図書カードできちんとお支払いした。
何が言いたいかというと、おすすめって人への信頼度合いを表すなあ ということ。
又吉の『火花』は、言わずと知れた芥川賞受賞作。偉い人が一生懸命吟味して選んだ名作。もちろん、すっごく売れているし、いろんな人が評価している。知っている。
島本理生『ナラタージュ』は、有村架純主演で映画化され、話題となった作品。売れているしみんな評価している。知っている。
それでもわたしは「椎名林檎さん絶賛!」この一言でそれらよりも、知らない作家の本を優先した。
芥川賞を決める偉い人たちよりも、映画化を決める配給会社の人たちよりも、世間の大きな評価よりも、わたしは椎名林檎たった一人の言葉を信頼した。(もちろんその本を評価しているのは林檎さんだけではないのだけれど)
「○○さんおすすめ」の○○になって、他者の行動に影響を与えられる人って、偉大だなあ。俗にいうインフルエンサーだ。
わたしもそんな人になりたいと思った。
そして、そんな経緯で購入した一木けいさんの『1ミリの後悔もない、はずがない』、ものすごくよかったのであとで書き残そうと思う。
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