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レム睡眠行動障害で、悪を倒すべく拳をふるう。



私は、寝相がわるい。

どれぐらい悪いかって、まさに病的。



壁やベッドをなぐる蹴る。ドーンと音がするぐらい。
そして寝言のレベルを超えて、叫ぶし奇声を発しまくる。

毎日のように家族から「今日も暴れてたよ(笑)」って報告うけてる。
覚えのないキズやアザは、日常茶飯事朝飯前。
悪役にヒザ蹴り喰らわそうとして、壁を蹴った痛みで目が覚めたり。



田舎でよかった。隣の家が近かったら、苦情か通報されるレベル。


どうやら夢のなかと連動して、身体が動いているらしい。

怒る夢をみた日がとくにヤバい。
夢のなかの私と一緒に、現実の私もみえない敵を、けちょんけちょんに罵倒する。フルボリュームでヤンキーみたいなこと口走ってる。

とはいえ寝相が悪い人なんてよくいるし、あんまり気にしていなかった。寝言が多いのも子どもの頃からネタにされたりしてたし。

ただ、これはヤバいと自覚せざるをえない事があった。

ネコを殴ってしまったのだ。



我が家には4匹のネコがいる。
ネコたちはみんな、私の極悪寝相を熟知している。

だからふだんはピッタリよりそって何時間でも甘えているけど、私が眠りについた瞬間、自発的にソーシャルディスタンスをとってくださる。

2年まえ、そのうちの1匹がガンの手術をした。

結構大きな手術だった。
恐怖の病院から退院しても、傷口保護のためキライな洋服を脱がせてもらえないし、傷が痛んでうまく歩けない。
心も身体も相当辛かったんだろう。一日中、私のベッドの枕元から離れなくなった。


動きづらい身体をゆっくり引きずり食事とトイレを済ませると、わざわざ階段をのぼって何度も何度もロフトベッドまで戻ってくる。
寝るときはいつも、私の手足の届かない絶妙な距離感を保てるかしこい子なのに。

意地でも一緒にいたいと、言われているようだった。

もちろん、めちゃくちゃ気を付けていた。
彼女の体調も心配だし、様子をみながら、ベッドで熟睡しないよう気を張っていた。

でもその状態は、2ヶ月ほどつづく。
こちら側も疲弊してある日、深い眠りに落ちてしまった。

「やってしまった」という感覚で、目が覚める。

夢と一緒に、思いきり拳をふりあげていた。


血の気がひく。
ネコは驚いた顔をしていた。


さいわい傷がひらくなどの、外傷はとくに見当たらなかった。
もうすっかり元気になったその子は、あの一件を気にする様子もなく、かわらず今も甘えてくる。大事に至らなくてほんとうに良かった。


ここでやっと、自分が普通じゃないと気づく。怖い。これはおかしい。

自制できないから、きっと相手が新生児だとしても同じことになる。二度と起こってはいけない。ハタからみたら虐待だ。


焦っていろいろ調べて、主治医にも相談した。

おそらくレム睡眠行動障害だろう。

詳しい検査はできていないけど、オレキシン受容体拮抗薬というものが処方されるようになった。

飲んで寝れば、ある程度動きが制限される。
完全にはなくならないけど、副作用も大きいのでこれ以上薬を強くしたくない。
あの事件以外は、家族に笑われるぐらいでとりあえず他に支障はないから、諦めて頓服薬にして様子をみてる。


暴れている自覚もある。
基本的に明晰夢だし「あ、これ現実でもやっちゃうな」って気付いているのに、抑えられない。自分の身体を自分で制御できないって怖い。

もしこれを読んで、自分や周りに似た症状のひとがいたら、少し気をつけてみてほしい。
症状の奥に、違う病気が隠れている場合もあるみたい。



あぁ、平和な夢がみたい。

幸せな夢なんて贅沢は言わないから、どうか平穏なストーリーをください。


悪を倒すヒーローモノだけは絶対ダメ。






#睡眠記録

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鈴熊 まい
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