見出し画像

この一杯に生産者さんの想いを集める。

文・撮影/長尾謙一

クリスマス島の塩(素材のちから第41号より)
「素材のちから」本誌をPDFでご覧になりたい方はこちら

画像1

一つ、一つ、ものづくりには苦労があり喜びがある。それを丁寧に集め一つにした時、勝るもののないおいしさが生まれる。

画像2

〝お客様は来てくださらないもの〟と自分に言いきかせてきた

以前、飯田氏はお客様の丼にスープが少しでも残っていたら、追いかけて行って「何がいけなかったんでしょうか?」と聞いたこともあった。それほどお客様一人一人に一生懸命。失敗しながらも常に挑戦するのは、営みの厳しさを知っているからだ。

おいしいものをつくりたいという想いが、たっぷりと凝縮されています。

画像3

店主 飯田 将太 さん

画像4

らぁ麺 飯田商店 神奈川県足柄下郡湯河原町
板前を目指すも25歳で家業の事情で実家に戻り、フランチャイズチェーンのラーメン店をはじめる。売り上げが順調な中、「支那そばや」の佐野実氏がつくる味に衝撃を受け、料理人志望だった心に火がつく。寝る間もなく学び、やがて中古の製麺機を購入し、さらにラーメンづくりに熱中する。そして2010年3月、今の場所にあった古い倉庫を改装して「らぁ麺 飯田商店」をはじめる。

小麦や地鶏、鰹節、海苔、昆布、醤油、塩などの食材は自分の足で日本全国を探す。生産者を訪れ、さまざまな話を伺いながらその品質を深く知る。丁寧にとられた出汁の香りや旨みと、食材本来の魅力を組み合わせて常に新しい味をつくりだしていく。飯田商店のラーメンは日本料理に近い。

飯田商店のラーメンは私自身です

「飯田商店さんのラーメンは一言でいうと、どんなラーメンですか。」と聞かれたら「私自身です。」とお答えするでしょう。私のラーメン一杯には、今まで出会ってきた生産者さんの気持ちがたっぷりと入っています。

「おいしい豚をつくりたい。」、「味わいの濃い鶏をつくりたい。」、「小麦にもっと甘みを出したい。」、「醤油も俺達ならこうやってつくる。」という純粋な想いを集約しているのです。

生産者さんから提供いただく品質の高い食材と、皆さんとの出会いや思い出をお借りして、それを私というフィルターを通してできたものが今のラーメンですから、私の歴史が形になったものなのです。

さらに、私の体調や気の乱れは全部麺に出ます。製麺機で打っていて指先でそれを感じるのです。飯田商店のラーメンはまさに私自身なのだと思います。

画像5

麺の味わいをしっかりと楽しませることがラーメンの真骨頂

ラーメンはスープの味で食べさせる料理だと思われがちですが、しっかりと小麦の味がする麺にスープの味が入るからこそラーメンはおいしい。麺自体においしい風味があることがとても重要なのです。

スープによってそれに合う麺の味や食感は違いますから、私どもで使う麺はメニューによって石臼で小麦を挽いてブレンドしたり、小麦の配合や加水率などを変えて毎日打ち分けます。

噛むごとに立ち上がる麺の香りとスープの味とのバランスがラーメンの魅力なのです。

画像6

たくさんある日本の麺料理の中で、ラーメンを頂点にしたい。

〝塩つけ麺〟のスープは〝黒さつま鶏黒王〟と昆布、「クリスマス島の塩」だけ

私どもの〝塩つけ麺〟には白と黒の2種の麺を使い、小麦の香りと甘みの違いを楽しんでいただきます。黒い方は小麦の粒度が粗く、噛めば噛むほど麺の味が楽しめます。

白い方の麺は見た目には分かりませんが、断面が真四角の麺と超極薄の平打ち麺が混ざっています。サラサラのスープに真四角の太い麺をつけてもスープは流れ落ちてしまいますから、もう一つの超極薄の平打ち麺がスープを抱き込み、真四角の太い麺が食感を楽しませます。麺の味わいをしっかりと伝えるのが私の目的なのです。

画像7

〝塩つけ麺〟のスープには「クリスマス島の塩」を使っています。

日本でつくられる〝どこどこの塩〟といわれるものは、物語や発見感があって意外と注目しやすいのですが、「塩とクリスマスって何?」みたいな感じで気にも留めていませんでした。

でもある時、誰かに背中を押されたように買ってしまったのです。そして、シンプルなスープで割ってみたら「めっちゃおいしい!」と凄く驚きました。

画像8

私のスープに対して塩だけで成立する塩は他にもありますが、とにかくとてもクリアでバランスが素晴らしかったのです。ちょっと油断していましたね。

スープの香りが表に出てくるというか、塩味をつけているって感じではなくて、塩が一度スープの下の方にいって、そこから旨みをグッと押し上げてくれている感じでした。そこで生まれた味が凄くて、「超おいしい!」と一発で惚れ込んでしまいました。

〝塩つけ麺〟のスープは〝黒さつま鶏黒王〟と昆布、そこに「クリスマス島の塩」だけです。

このスープは見た目がお湯みたいで、「えっ、何これ、大丈夫?」みたいにしておいて、「おいしい!」という風にしたかったのです。ほんとに〝黒さつま鶏黒王〟の香り、そして深い旨みとコクがグッと上がってきます。クリスマス島の塩特有ですよね、このパワーは。

スープの他に、蕎麦つゆのような冷たいスープと麺に直接かける濃密出汁も用意します。チャーシューは〝黒さつま鶏黒王〟の幽庵焼きと〝霧島高原純粋黒豚 ※ 〟の炭火焼き、極薄のロース、有明産の海苔も添えます。
※〝TOKYO X〟の時もあり

薬味は湯河原産のダイダイ、梅鰹、おろしたての本わさびと白髪ねぎです。梅鰹とわさびは麺に直接つけて、ダイダイは麺やスープに絞ってお好みでお召し上がりいただきます。

〝塩つけ麺〟には今までのつけ麺とは違って料理の要素がかなり含まれていて、麺の風味の違い、スープの違い、チャーシューの違いやそれぞれの薬味をお客様は上手にお使いになって、味と食感の変化を楽しまれています。

日本には蕎麦やうどん、パスタなど、たくさんの麺料理がありますが、私はラーメンをその頂点にできたらいいなと思っていて、そのためにどんどん挑戦していきます。

画像9

金色に輝く透き通った〝塩つけ麺〟のスープ、この香り、コク、旨みには体験したことのない厚みがある
小麦の生産者の想いが込められた黒の麺と白の麺。〝黒さつま鶏黒王〟と昆布に「クリスマス島の塩」を加えた、シンプルで濃厚なスープがそのおいしさを表現する。

お問い合わせ:クリスマス・アイランド21株式会社

(2021年6月30日発行「素材のちから」第41号掲載記事)

「素材のちから」本誌をPDFでご覧になりたい方はこちら

いいなと思ったら応援しよう!