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「手さぐり」がさぐりあてた塩。

文・撮影/長尾謙一 

クリスマス島の塩(素材のちから第32号より)
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ジューシーな肉汁の濃厚感を引き上げる

表面はパリパリに焼き上げて北京ダックのような香ばしさを持たせ、中はやわらかくしっとりとジューシーに仕上げる。この食感のコントラストがたまらない。ひとくち食べると「クリスマス島の塩」が旨みの濃厚感をグッと引き上げているのが分かる。

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「クリスマス島の塩」のよさは使ってみてはじめて分かる。

自分のフランス料理は、人に教わるだけではなく、すべてを生真面目に一から手さぐりで身につけてきた。そんなシェフの誠実な「手さぐり」がこの塩をさぐりあてた。

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オーナーシェフ 清水 郁夫 さん

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シェ・シミズ 東京都世田谷区奥沢
学生時代にアルバイトで経験した外食店の楽しさがきっかけで料理の世界へ。フランス料理のスタートは独学だった。80年代に渡仏。帰国後、フランス料理文化センターの講師を務めながら都内のレストランで料理長として腕を磨く。2000年、ブルーノート東京の料理長に就任。トップアーティストの生演奏とフレンチを融合させお客様を楽しませた。2018年6月、奥沢に「シェ・シミズ」を開店。

26歳で料理の世界へ

私が料理の世界に入ったのは凄く遅くて26歳の時でした。サラリーマンとして勤めていたのですが、学生の時にアルバイトでやった料理の楽しさが忘れられずに、やっぱり料理がやりたいなと転職しました。本当はフランス料理をやりたかったのですが、何のツテもないのでどうしたらいいのかまったく分からず、最初はとんかつ屋からです。

フランス料理のことは誰にも聞けず、とにかく本を読んで自分で勉強しました。手に入る限られた材料で自分なりに理解しようとしましたが、フランス料理への憧れはどんどん強くなっていきます。もっともっと本物を知りたいと、悩みに悩んで探しあてたのがフランス料理文化センターの上級コースでした。私がすでに32歳の時です。もう、嬉しくて嬉しくて必死で勉強しました。乾いたスポンジが水を吸うが如くというたとえがぴったりです。そして、今度は本場の料理を経験したくてフランスへ行ったのです。

私がちょうど40歳の時にブルーノート東京の料理長をさせていただきました。ブルーノート東京は世界のトップアーティストの方たちの生演奏を聴きながらフランス料理を楽しんでいただくジャズクラブでしたから、世界レベルの音楽に負けないように料理も工夫しました。長い手さぐりの12年間でしたね。

「クリスマス島の塩」は塩味に角のないやさしい塩

フランス料理を独学でスタートし、何でも自分でやらなくてはならなかった私は、素材に対しても実際に使ってみて納得できるものだけを使います。「クリスマス島の塩」は知人から紹介されました。塩味に角のないやさしい塩ですね。私の料理にとても合っていて気に入っています。

私は〝伊達鶏のラッケ〟という料理をよくつくります。

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塩、砂糖、カルダモン、ジンジャー、胡椒などでソミュール液をつくり伊達鶏を1日漬け込み、それから1晩乾かして、2日目に90℃で30分間スチームで熱を入れてさらに乾かし、3日目にスモークを軽く15分くらいかけ、4日目に180℃で20分間オーブンで焼きます。最初はバターをのせて10分くらい焼いて、さらにハチミツ、五香粉、フェンネルなどを水に溶いて表面に塗り、あと10分くらい焼いて表面をカリカリに仕上げます。

「クリスマス島の塩」のいいところは、ソミュール液の漬け込みから4日経っても塩味が入りすぎないところです。塩味がやわらかく、90℃でスチームしたやわらかな肉はしっとりと落ち着いて伊達鶏の旨みを強く感じます。

「クリスマス島の塩」の特長はシマエビの甘さに出ている

次に「クリスマス島の塩」でエビのメニューをつくってみましょう。利尻昆布の上に殻を剥いたシマエビをのせます。その上から「クリスマス島の塩」、砂糖、玉ねぎ、ニンジン、生姜とタイム、ローリエを細かく刻んで混ぜ合わせたものをのせますが、塩味も風味も香りづけ程度にしたいので直接のせずにガーゼを一枚敷いてのせます。

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塩味と風味がほどよくシマエビに移ったところで、これを包丁の背でたたいて皿に盛ります。周りにはカリフラワーのクリームソースを添えました。カリフラワーを生クリームと牛乳で煮て、カリフラワーの青臭さが抜けたらミキサーにかけて濾したものです。レモンとオリーブオイルを上からかけて、シブレットと花穂をふります。

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塩味がまろやかな「クリスマス島の塩」の特長はシマエビの甘さに出ています。「クリスマス島の塩」のおかげでシマエビがより甘くなっていますし、この弾力あるもっちりとした食感がたまりません。

「クリスマス島の塩」にミネラルの旨みを感じる

最後に、「クリスマス島の塩」をデザートに使ってみました。牛乳に胡椒をつぶし入れ、沸騰させて香りを移してつくった胡椒風味のアイスクリーム、洋梨のコンポート、それに日本酒のジュレを盛り合わせました。

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それぞれ個性的ですが、その個性が全部合わさった時にこのデザートの本当のおいしさになります。それをまとめるのがこの日本酒のジュレです。日本酒100gに50gの水を加え「クリスマス島の塩」を3g、ちょっと多めに2%を加えます。升酒のイメージですね。普通の塩ですと口に含んだ瞬間にピリッと苦みのような塩辛さを感じますが、「クリスマス島の塩」はミネラルの旨みも持っていて、日本酒の甘みを感じさせます。このやさしい塩味が日本酒の風味をグッと引き立てていますよね。

これからも手さぐりで料理をつくっていきます

時々「あなたの料理とは?」と聞かれたりしますが、その時は決まって「まじめにつくっています。」とお答えします。アンチョビも栗の渋皮煮もどんなに手がかかるものも自分でつくって学んできました。私にとっての本質を探るためです。60歳というこれまた遅く自分の店をオープンさせたのも、まだまだ手さぐりを続けていきたいからです。


お問い合わせ:クリスマス・アイランド21株式会社

(2018年12月28日発行「素材のちから」第32号掲載記事)

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