高校書道授業 下手な字選手権
所要時間 45分✕2コマの授業
手順
○字を指定し、上手く書くように指示する。(1文字の簡単な字でよい。5分で、など時間を区切るとよい)
○各自自分の作品を見てもらい、自分が字が上手いと思うか、下手と思うか、挙手でアンケートをとる。
ほぼ全員、下手に手を挙げることが多い。(どちらでもよい)
○書道は字が上手い人が成績が良いこと、字の上手さはちょっとやそっとでは変わらないことを憂う。
それでは可哀想。下剋上の機会をあげよう。今日は第1回下手な字選手権を開催します。と話を持っていく。
○ルール説明
1、○という字を書くこと(共通にしたほうが比較しやすい)
2、字を間違えないこと
3、出席番号、名前を書くこと
○時間がきたら、各自壁に貼ってもらう
道具類は片付けさせる
○投票のルール説明
1、これは下手だなと思ったものを3作品選び、それぞれにコメントを書いてもらう。(悪口であることが褒め言葉になる、など言っておくと、良いコメントがくることが多い)
2、これはルール違反やろ、というのがあれば選び、コメントを書く。
3、余白に感想を書く。
4、自分には投票しない。
○黒板に得票を書き入れる表を書いておく。
結果発表。
シャッフルした投票用紙を1枚ずつ読み上げる。誰の投票かは言わない。
ここで盛り上げられるかは教師の腕。
○1位〜3位くらいまでの生徒にヒーローインタビューする。
○全体に今回のねらいを話し、まとめ、解散。
授業のねらい
○書道作品を見て、あれこれ言える雰囲気作り。
多くの生徒が作品を見た時の感想は、よく分からない、である。
これは、本当に分からないのではなく、作品に対して感想を持つ、言うことに慣れていないのではと仮定した。
まずは仲間内で、気楽にアレコレ言い合う機会を持つために、相互批評の場を作った。
ただ、同じ課題に対していかに上手く書けたかを競うと、これまた感想を持つのが難しい。キレイ、整ってる、など通り一遍になる。聞いてて面白くない。どうせ上手い子は決まってるので、いつも同じ子が1位だし。
ところが下手に書く、という今まで誰もやったこと無いことをすると、作品、感想、ともにバリエーションが生まれる。笑いも起きるし、こいつ実はスゲえなみたいなクラス内の交流にもなる。(あくまで可能性。バクチ要素あり)
○字が上手い、下手、とはどういうことか、改めて考えてみる。
皆、字が上手いとか下手とか言うし、見分けることもある程度できるが、字が上手い状態というのが、どういうことかよく分からない。分からないから、上手く書くための改善が出来ないのでは、と仮定した。
大体の生徒は、下手に書くために思考し、工夫する。線を揺らしたり、太さを変えたり、、、
上手と下手が表裏一体のものであるなら、更にその逆をやれば、上手いと感じる字になるのでは?線を揺らす生徒は、もしかしたら線をスッキリ書いてある作品を、上手いと感じるのかもしれない、じゃあ今度から線をスッと書くことに意識を向けようか、なんてことになる。そんな話をする。
課題を与えて上手く書いてください、と言うよりも、下手に書いてください、と言う方が、自分で思索する程度が多いように思う。
○上手く書こうとしてる時、そのやり方であってる?
下手に書こうとする工夫は、案外多彩なものが見れる。線の角度や形を工夫するのみならず、筆の持ち方を変えたり、色々なことに挑戦する生徒が現れる。
そして最後に聞いてみる。上手く書こうとする時、同じくらい工夫すべきなのでは?
上手く書けないなーと思った時、この線はどこにどの角度でどの程度の太さで書けば、上手く見えるのか。ということまで考えてる生徒は少ない。手本を見てなんとなくの感じで書くのみである。また、筆の持ち方や角度も、基本的に変えない。それでいいのだろうか、という話をする。
授業のコツ
○いかに、生徒に柔軟に書かせるための、アドバイスを入れるかがキモ。
いきなり下手に書けと言われても、普通、書けない。えーどうやってやんのーってなる。
5分くらい試行錯誤させたら、ぐるっと教室を歩き回って、全体にチャチャを入れていく。
みんな全然上手いなー小学生より上手いやん
お店の看板にこの字があったら絶対入らんわって字にするんやで
ところで何で半紙を縦長に使ってんの?べつにええけど
みんな右利き?何で右手で書いてんの?上手く書けるから?
などなど、書道、習字って、こういう書き方をしないといけない、という先入観をほぐしてみる。
結果、人によるが、実に色々なことをしてくる。たまに、先生、コレってしてもいいですか?などと質問される。
分からーん。投票するのはみんなやし、ルール違反って思われたら違反票が入るやろ。 と、こちら側での可否は判断しない。だからあえてルールは少なくしてある。
半紙は1枚、と書いてないから、とか、筆で書けと書いてないから、とか、見ようによってはルールが無いようなものである。まあそこまで突き抜けてくるのは稀。
○どうもまだまだ固いなという場合
例を見せる。自分で書くのも良いし、積年の得票1位の作品でも良い。(毎年1位はラミネートして残してある)
デメリットについて
○実際に授業を行っているのは、高等学校ではなく、工業高等専門学校である。学習指導要領に完全に準じていないので、通常の学校でやっていいかどうかは分からない。
○筆者は高校教諭の免許を持っていない。教育上効果があるのか、書道に対して良い効果があるのかは分からない。
○面白い授業になるかどうかは、生徒頼りな部分が多い。
作例
過去実際に授業で書かれたものの一部を、以下に載せておきます。
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