古典鑑賞 （三） 崔敬邕墓誌銘［北魏］

月刊書道誌　太源　2024.5月号

　現在随意部参考として掲載されています、崔敬邕墓誌銘を紹介します。　

　他に有名な楷書の作品がある中、この作品が好きで、特にこればかり臨書している、という方は少ないのではないでしょうか。すみません、偏見ですね。私は、この作はじっくりと見れば見るほど味わい深く、多くの気づきがあると思っております。

　唐代の楷書に慣れた目からすると、一見、バランスに欠き、歪んでいるように見える箇所が散見されます。臨書をしていて、思ったより線が長い・短い・傾いている・太い・細い・なんでやねん。と思われることもあるかと思います。しかし、そうでありながら、絶妙にバランスを保っているところに、この作の妙があると思います。

　整った字を学び、書けることは書道においては非常に重要なことです。しかしながら、作品を制作するうえで、整った安定感のある字ばかりを並べると、動きが無く生命力の感じられない作になる恐れがあります。いかにズラし、そのうえで破綻なくまとめるか。この作に限らず、多くの古典を見て、学んでいきましょう。

更にもう一段階
　同時代の楷書と比較してみて、崔敬邕墓誌銘がどのような特徴を持つのか鑑賞してみましょう。
牛橛造像記
鄭羲下碑

　参考文献
・二玄社　中国法書選25：墓誌銘集〈上〉
・二玄社　中国法書選20：龍門二十品〈上〉
・二玄社　中国法書選22：鄭羲下碑[鄭道昭]