がんと免疫力について
私たちの体の中では、一日に3000個程度のがん細胞が生まれているそうです。
そして、それを排除してくれるのが、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)と呼ばれる、リンパ球の仲間です。
“免疫力を高めてがんを撃退”
健康食品の広告や書籍の広告で、そんなフレーズをよく目にします。
確かにがん治療にはチェックポイント阻害剤という薬を使った治療やCAR-T細胞療法等、いわゆる免疫療法と呼ばれるものもあります。
しかし、これらと前述の健康食品や書籍で謳われている免疫力とはまったくの別物です。
がん細胞と免疫の関係は意外と複雑です。
がん細胞は周りの免疫細胞を騙して、がんを攻撃する力を弱める仕組みを備えているのです。
その仕組みを簡単に説明します(と言っても難しく説明することは私にはできません)。
1.まず、がん細胞は特別な物質を作り出して、マクロファージという免疫細胞を自分の近くに引き寄せます。
2.引き寄せられたマクロファージは、がん細胞の影響を受けて「味方」になる、つまり寝返るわけです。
3.そして、寝返ったマクロファージは免疫システムを抑える物質を作り始めます。
4.これによって、本来がん細胞を攻撃するはずのTリンパ球の働きが止まってしまいます。
さらに、がん細胞は別の種類の免疫細胞(制御性T細胞:免疫の働きが過剰にならないように働くリンパ球)も近くに引き寄せ、他の攻撃的な免疫細胞の働きを抑えることで、自身を守らせます。
このようにして、がん細胞は自分を守るために免疫システムを巧妙に利用しています。
有効な治療法であれば標準医療に組み込まれているはずです。
藁をも掴む思いで頼りたくなる気持ちはわかります。
しかし根拠があいまいな健康食品や治療法にすがるのは百害あって一利なしなのです。