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自由帳2頁目「お願いされてないランキング」

誰にも依頼されてないし
どこにも需要はないのに、
勝手に何かのランキングを
頭の中でこしらえることがある。
別にコロナで暇になったからではない。
コロナの前から結構暇だ。


何年か前には
「もし今、古今亭志ん朝師匠が
一席だけ稽古つけてくれるとしたら
お願いしたい噺ランキング」
で大いに悩み時間をドブに捨てた。
一人で考えるのがもったいないので
楽屋で人に聴いてみたら
みんなそれぞれ答えが違って
楽しかった。

今年の2月頃、
脳内で盛り上がったのは
「今後その魚一種類しか
食べられないとしたら何を選ぶ?」
自分で設定したテーマで苦悶した。

何しろ子供の頃から
魚が好きだ。
沼津に生まれて良かった。
父親の趣味が釣りなので
その釣果を食べられたのも幸運だった。

そんな魚をもし今後、
一種類しか食べられないとして
何が良いか。
ひどい質問だ。
さすが私、私のことを
最もよく知っている。
苦しめ方が的確だ。

味はもちろん、
コストパフォーマンス、
調理のしやすさ、
料理のバリエーションなど
様々な角度から検討しなきゃいけない。

散々悩んだ結果、
【アジ】と【サバ】の
決勝戦となった。
惜しくも決勝を逃した
マグロの健闘も称えたい。

結果はアジの優勝。
本当に僅差だった。
アジは良いよ。アジ最高。
まず高くない。財布に優しい。
さばきにくい魚でもない。
栄養も豊富、毒とかも無い。
そして何といっても
色んな食べ方が楽しめる。
刺身にして良し、なめろうもある。
煮て良し焼いて良し、
小さいアジなら唐揚げにも出来る。
揚げて南蛮漬けにも分岐する。
揚げると言ったらアジフライも。
ちなみに私、アジフライは醤油派。
そして地元・沼津の誇り、
アジの開きが決め手となった。
魚は一種類のみ口にできる世界でも
アジとなら乗り越えられると思う。

良い戦いだった。
アジは絶対王者として
君臨することになった。
ドブの中、時間でいっぱいだ。

この死闘の後、私の中に
小さな変化が生じた。
サバを見ると
凄く申し訳ない気持ちになる。
サバの方もなんか卑屈に
なってる気がする。
「でも私は二位ですよね」
「やっぱりアジの方が美味しい?」
「都合の良い存在なんでしょ私は」
「アジだけ食べてればいいじゃん」
全然サバサバしてない。
ひどくウジウジしている。
そんなサバを見てると
こっちも悲しい気持ちになってくる。
どうして順位なんか決めたんだろう…。

逆にアジを見ると
なんか調子に乗ってる気がする。
「あ、昨日サバ食ったんだ笑
でもやっぱこっちに帰ってくるっしょ」
「俺だけ見てればいいじゃん」
「他の魚とはレヴェルが違うんだよ!」
なんだこいつ…。

多分「なんだこいつ」は
これを読んだ方から私に
向けられるべき言葉だと思うけど
それはさておき、
やっぱり順位つけるのは良くない。
真打になる前、二ッ目の頃に
若手落語家選手権とかコンクールとか
そういうので心痛めたもんだ。
もちろん鍛えられる部分はあるけど
どっちが優れてるかなんて
決められないんだ。
みんな違ってみんな良い。
それで十分だと思う。
魚たちに申し訳ないことをした。
ごめんねみんな。

人間、暇になると
ろくなことを考えない。
そして人は生きている間、
考えることを止められない。

先週玉ねぎが優勝したせいで、
最近キャベツが卑屈になった。

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