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茉野いおた
2019年6月21日 19:19
お店を出て、行く当てもなくエスカレーターに乗る。吹き抜けの大時計が示す時刻は、まだ2時を回ったばかりだ。エスカレーターでも貴志くんの言葉が頭を回る。「美香の気持ちが見えない」「美香はどうしたいの?」「他の人のことはいいから、美香は?」レストランフロアのひとつ下の階には書店になっていて、私は夢遊病患者のようにそこへ吸い込まれる。確かに私は昔から自分の意見を言うのが苦手だ。いつでも