短編小説「for others 私の私は誰のため」第10話
雨が降りだしたのか、しゃーっという音が窓の外から聞こえる。加穂子は「そこのタブレット、見てみて」と言った。目線はあくまで台の上だ。
私は震える手で台の縁に置いてあったタブレットをつかむ。
そこには志保に向けたLINEの画面が映し出されていて、「あなたは来月から来なくていいです。代わりに田所さんに入ってもらいます。今までおつかれさまでした」と書かれている。
「そのLINEさ、志保ちゃんに送ってくれる? 送信ボタンだけ押してくれればいい。ほら、いま私、手が離せないでしょ?」