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いわゆる、天抜きについて

天ぷらそばの画像を探してトップヒットしたのは、カップめんの天ぷらそばと称する商品である。これは困ったものだ。これは天ぷらそばじゃないからな。

以前はガストロノミーの鬼であったから、取材とは言え、ミシュランレストランを何10軒もハシゴしてえらい目にあった。その反動でガストロノミーから何年も遠ざかっているから、それに関連して蕎麦屋に行くこともないので天抜きで日本酒を飲むと言う習慣から何年も離れている。考えてみれば、酒飲みが勝手に考え出した非常に不健康な。しかもお店に対して失礼なオーダーの仕方だと思う。

要するに、最初からそばを食べてしまうと、腹がいっぱいになるので、天ぷらそばのそばをカットしたものが天抜きであるが、下品な注文であるから、本当はおおっぴらにできない種類のオーダーなのである。

文芸評論家の福田和也さんとよく銀座で飲み歩いて、銀座の老舗のお蕎麦屋さんに入った時に出た話題であるが、何かのライフマガジンで天抜きのことが紹介された。そのお蕎麦屋さんの記事を見た若い人が翌日来て天抜きを注文したら、女将さんにそのオーダーは10年早いと言われたそうである。

実際にそのオーダーは多分通したと思うけれども、こういうものはスピークイージーに近いものであるから話題にしないのが社会の安全と言うものだ。

六本木ヒルズに仕事場があった十数年前の話であるが、帰りに銀座の裏通りで小さなお蕎麦屋さんがあって、そこに入って天抜きで日本酒をいっぱいやるのが習慣のようになっていた。本当は天ぷらも排除した方が良いのであるが、まさかお蕎麦屋さんでおそばのお汁だけくださいと言うオーダーは商業道徳に反する。それで天抜きを注文。

私の長い天抜きの歴史の中で、1番驚いたのは、倉敷の商店街にあるお蕎麦屋さんで、天抜きというのが、なんと印刷されたメニューの中に入っていたことだ。あれにはびっくりしました。

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