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盆さんが作った偽貫禄のブラックニコンS2

盆さんと言うのは古い友人であって、私の70歳のときの記念パーティーにもご夫婦で来てくださった。

盆さんの写真の腕はそこそこ優秀なのであるが、それよりもこの人物を個性的にしているのはカメラの特殊メイクと言うスペシャリストの存在である。映画の撮影などで特殊メイクと言うのは非常に重要な役割であって、私はヨーロッパの映画を手伝ったことがあるが、特殊メイクの人と言うのは尊敬されていたのである。

盆さんがスタートしたユニークなカメラの特殊メイクを、彼自身が名付けて
偽貫禄と命名したのはなかなか良いネーミングだと思う。

若い頃と言うのは面白いもので、学生服とか柔道着に貫禄をつけたりすると、それが友人に対して一歩先を行っているように思われたものだった。私もそういう経験はあります。

私のエッセイの中で書いたことだが、ブラックニコンにヤスリをかけると言うタイトルのエッセイがあった。日本デザインセンターのアシスタント仲間で、自分のブラックのニコンエフにヤスリをかけて、そこに貫禄を出して周りを圧倒しようと言うアイディアだったらしいが、これは実際にカメラを使ってブラスの地金が出ているわけでは無いから、反則技と言うことになる。

それに対して盆さんのカメラの特殊メイクの場合は、オリジナルの状況は一切傷をつけなくて、いざとなれば元に戻すことができるというのが特殊メイクの凄いところだと思う。

それで最近彼が自分の今まで制作してきたカメラの特殊メイクの中の自信作と言うのがこれである。インドシナ戦争から生還したと言うストーリーのニコンカメラだ。

これほどの特殊メイクの凄いニコンではないが、ニコンのエス2のブラックペイントのモデルがかなりはげているやつをパリのカメラ屋さんで見たことがあった。

映画アマデウスがヨーロッパで封切りされた頃なので、よく覚えているが、オデオン劇場のそばのカメラ屋さんにその汚いブラックのニコンが登場して買うか買わないか迷いながら毎日撮影の途中にウインドウ越しに見たのである。

その当時の値段で日本円で80,000円位だったと思うが、結局それを手に入れる事はなかった。

今の時代なら、こういう完璧な特殊メイクのニコンが存在するわけであるから、気分としては全く損傷は無いわけだ。

しかも、下のクロームのカメラの状態にいつでも戻せると言うのだが、こういう芸術的な特殊メイクのカメラはオリジナルには戻したくないと思っています。

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