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コシナレンダーのスナップショット25mm広角レンズが好き

小林さんからライカマウントの新しい交換レンズ出すので手伝ってくれと言われたのは1995年頃だったと思う。最初に手渡されたレンズが15ミリと25ミリだった。今考えると不思議な気がするが20世紀の最後の頃に当時ライカにつける国産レンズと言うのは50年前に作られたキャノンとかニッコールとか小村レンズしかなかった。ミノルタはあったけどあれはMマウントだったからね。

ライカエムマウントよりもスクリューマウントの方が使い勝手が良いのは当然な話であってスクリューマウントならアダプターでバイオネットのカメラにも使える。最近サードパーティーでがんばっているアルティザンなどは良いレンズを出しているがこれがエムマウントなのでスクリューマウントのライカ本体につけることができない。

一番最初にコシナレンダーが作った1連のシリーズの中で1番長く使っているのがこのレンズ25ミリのスナップショットレンズである。オリジナルの状態はこの本体の先に短いフードが付いていてそこにレンズの名前が刻印してあったのだが、そのフードが気に食わないので外して使っているから、もはやレンズブランドは不明なのである。

25ミリレンズで撮影するスナップショットというのが私が好きなのはやはり北井さんがデビュー当時使っていたキャノン25ミリにそのルートがある。写真家に話を聞いたら自分の意思と言うわけではなくて、783か何かで手に入れた最初のレンズがそのレンズであったそうだ。

こういうのは結構すごい運命的な出会いと言うものでヨセフクーデルカが35ミリのレンズを友人の美術評論家Anna Farovaがベルリンに行くと言うので依頼したら、在庫がなくてその代わりに25ミリレンズを買ってきた。
それがヨセフクーデルカの1連のジプシーのシリーズで素晴らしい作品を産んだのである。これも運命的な写真家と広角レンズの出会いである。

ウィーンにいた頃に使っていたのは今ではレア物になっているカールツアイスTopogon2.5cmであった。ところがこのレンズは周辺の描写が個体によって結構落ちるのである。キャノンの25ミリも同じ構成であるから周辺が怪しいことがある。私は画面全体に同一のシャープネスがないと使えないと言うのは写真と言うのはメタフィジカルな空間描写であると言うことがその最大の理由だ。

それでコシナレンダーの25ミリであるが周辺まで均一のシャープネスであるのが素晴らしいと思った。もっとも100年近く前に設計されたTopogonレンズと比較するということが間違っているのかもしれない。

小林さんに初めて銀座のどっかのカメラメーカーの応接室でお目にかかったときに彼はカールツアイスのBiogon2.1cmのコレクターであると言っていたが、レンズメーカーのトップの人がそのように本物のレンズ好きであると言うのは素晴らしいことだと思う。
普通は部下からそういう話が上がってくるとトップの人はそんなの売れないと言うのでつぶしてしまうわけだがその構造が逆であるというのが素晴らしい。

スナップショットエルマー35ミリというのが大昔あってこれは距離計に連動しないのである。スナップショットの場合距離計に連動する必要などは全くないから、そのスナップショットの精神がコシナレンダー25ミリに受け継がれる。

私はレンズに対するいわゆる面食いであるから、なかなかレンズ美学に関してはうるさいのであるが1時好きだったのはレンズの第一面が凹レンズであることに美学を感じていたことがあった。海外の特にドイツの製品で最初の面が凹レンズと言うのは結構あるのだけれどもそういうレンズを集めていた。

このスナップショット25ミリコシナレンダーが凄いのは第1面のガラスが完全に平面であることなのである。こういうレンズは他に私が知る限りではないな。そこがこのレンズのエロティックなポイントなのである。

もう一つのポイントはレンズの描写なのだけれども、太陽に向かって撮影したときのゴーストイメージがピンポイントとして表現されるのである。そういうレンズも他には例がないからこれもまた素晴らしい。
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