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目撃-ロンドン

今回は、ロンドンを旅するある日の日記。
その日は雨が降っていて、
ぶらぶらと街を歩いていた。


●何か食べたいと思って、はいりやすそうなレストランにはいった。
この旅行初めてのちゃんとしたレストラン。
いっつも荷物があるからトイレにははいれないんだけど、今日はロンドンといえばの
フィッシュアンドチップスっていうのをおいしく食べたくて、だからトイレに行ってしまった。
2つの巨大な荷物は店の外から簡単には見えないところに。
パスポートとカードは小さなバックでトイレまでもっていく。他にお客は家族連れだけだった。
でも、
トイレから帰ってきたら、荷物が全部なかった。




・・・・・・・・・・・・。
どうしよう?嘘だろ??




すると店のシェフがやって来ていった。
「おまえどこから来たんだ」




 日本です。というとシェフは、
「ここは日本じゃない。ここはロンドン。
一分でも一秒でも荷物から目を離すんじゃない。」





そして、「俺が今回は見ていたからよかったものの」といい
奥から持ってきた私の荷物を全て返してくれた。





 ・・・ありがた迷惑、と思った。
よそ者に説教を垂れたいだけだ、貴重品はちゃんと持っていったぞ。





 これでもアメリカにはずっといた。NYだっていった。
あいつは何も知らない。
お礼を何度か言ってから、待ちに待ったフィッシュアンドチップスを食べ始めた。





もう美味しくもない。これ、マジで魚とポテトだけじゃないか。。
どんどん皿の上で冷めてく料理が不味さを増していった。



外は雨で昼なのに真っ暗。
なんだか涙がでてきて堪えるのに必死だ。 




10分ほどたって、はやく出たいと思っていたところ、
お客さんが扉を開けてはいってきた。
男2人は、家族連れのお父さんの席の隣に座った。
私はただぼんやりと見ていた。
視線が妙だった。





 すると、それはおこった。





 一人の男が、家族連れのお父さんの椅子にかかったジャケットのポケットを、
後ろ手でまさぐりだしたのだ。




(ああ。。。。!)






窃盗を初めてみた。     

   


アメリカに半年以上もいたのに。
日本では今まで生きててドラマでしかみたことがないのに!
こっ、これがロンドン!ロンドン様だ!!!!





 幸い、その上着のポケットには何も入っていなかったようで。
諦めた様子でなにもオーダーせず2人が店を出ると、
またあのシェフがすたこらと自分の番になった劇の役者みたいにでてくる。






「おまえら、どこからきたんだ」
とシェフは家族連れに尋ねる。


それから私の方をみて、「お前、見たか?」と言う。
言わんこっちゃないだろって顔をした。




家族連れの男性は、「ロシアです。」と答えた。
そして私は、「見てないです。。」と答えた。






シェフはそれから、今起こったことを、語気を強めてその家族に説明し始めた。
また、説教だ。。




でも今度はもう、ただ目も耳もふさぎたかった。




06/13/●

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