意思決定を「タイムマシン」に乗せる。
心理学、行動経済学など様々な学問において、
気づかないうちに我々の「認知」が間違ってしまう可能性が指摘されています。
その中でも今回は「現在性効果」について話してみたいと思います。
「今の100万円」と「5年後の120万円」
例えば「今もらえる100万円」と「5年後にもらえる120万円」ならあなたはどちらを選ぶでしょうか。金額的には5年後の金額の方が高いですが、人によっては前者を選ぶ場合もあると思います。私の周囲に聞いてみると50:50ぐらいでした。
あまり専門的にこれらを語ることはしませんが、人の価値判断が「価値そのもの」だけではなくて「時間」に大きく左右されるということが影響しています。
「現在性効果(immediacy effect)」がもたらす歪み
上記の例で続けると、「今もらえる100万円」と「5年後にもらえる120万円」では50:50ですが、
それぞれに15年を足して「16年後にもらえる100万円」と「20年後にもらえる120万円」では圧倒的に後者を選ぶ人が多くなります。
つまり現在と未来の比較と、未来と未来の比較では、価値判断の基準が異なっていることがわかります。
その一つの理由が「現在性効果(あるいは現在志向バイアス)」と呼ばれる心理的な働きです。
現在性効果(あるいは現在志向バイアス):今得られる目の前の利益を過度に評価・優先してしまうこと
ダイエットに取り組んでいるのに、美味しいラーメン屋を見つけたらつい入ってしまう。こんなことありませんか?僕はめちゃくちゃあります。笑
なぜ、「今(現在)」を重視してしまうのか
そこには、おそらく「時間は戻らない」という当たり前な現実があるのではないでしょうか。
時間は戻らないから「今この瞬間の決断」も戻ってこない、だからこそ確実に目の前にある喜びを取ってしまう、という人間の性があるのだと思います。
もちろん「今を生きる」という言葉があるように今を一生懸命に過ごすことも大事ですし、初期衝動のような欲求は非常に大事だと思います。
でも、それが本当に「自分に取って望ましい」ことなのか判断する方法があっても良いと思いませんか。
意思決定で後悔しないために
我々が「現在」に囚われずに意思決定を行うために何をすべきでしょうか。
冒頭の事例を振り返ると、現在と未来を比べた時と、未来と未来を比べた時では判断が変わっており、特に現在を過度に評価してしまうことがわかりました。(現在性効果)
であれば、「現在」の影響をできる限り少なくするしかありません。つまり意思決定をする際に得られる「喜び」を、少し先の「未来同士」で比較するのです。
例えば、ダイエットの話で言えば「(今ラーメンを食べた)明日の自分」と「(食べなかった)明日の自分」を比較する。
例えば、転職を考えている人は「(転職をした)未来の自分」と「(転職をしなかった)未来の自分」を比較する。
つまり、意思決定をタイムマシンに乗せて、未来の自分がどう感じるかを想像する、ということです。
そうすれば、「浮かれた今の自分」による後悔が少なくなるかもしれません。
(自分で書きながら、「いや、それが難しいんだよ」と思うのですが...)